5話 良かったら
この世界全て帝国が支配しているとアイリさんに教えられ、どこに逃げようかと考えたが……詰んだ。
帝国のシステムでは、皇城に一度全て集められた男の赤ちゃんは、皇帝の相手が出来る年齢まで育てられるが、皇帝が飽きた場合や好みでない場合には、オークションにかけられ、それを貴族や金持ちが落札する。
そして貴族や金持ちが飽きた男は、またオークションにかけられ、今度は少し裕福な人が落札し……と、使い古された男は何度もオークションを経て、一般市民の元へと供給される。
しかしここは男女比1対999の世界。
需要に対して、男の数が圧倒的に少ない。
その為、ある程度のところで、男は複数の女性から共同所有されることになる。
例えば一人の男を、村で共同所有とかね。
だからもし、追手が来る可能性が低い僻地の村に逃げたとしても、そんな所では若い男に需要が有り過ぎるから。
『ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。通報されたくなかったら、ワシも抱くのじゃ』
長老のような女性も含め、あらゆる女性達の相手をさせられる未来しかないだろう。
「……戻ろうかな」
「え? 戻る? 城にですか? せっかく逃げられたのに、どうしてですか?」
「逃げる所が無いし、逃げた方が過酷な未来になりそうだから」
「……あ、あの」
「ん?」
「それでしたら、もし……本当にもし良かったらなのですけど、私の里に来ませんか?」
な?
なんですと?
私の里ってことは、エルフの里だよな。
そこに俺が?
「行って良いんです?」
「はい、もし良かったらですけど」
「行く、行きます」
「え? 良いんですか?」
「喜んで行きますけど?」