４話 完璧
女神様からもらった収納スキルは、回復スキル同様に破格な性能をしていて、そこそこ離れた距離の大量の物でも、指定さえすれば一度に収納出来る。
だから地下牢の石壁と、その先の土を収納したいと考えれば、地下牢から地上へと通じるトンネルが一瞬で出来、楽々脱出が可能……といきそうだが、そうはうまくいかない。
周りを固めてないそのトンネルでは、崩落の危険もあるだろうし、この城に連れて来られた時の記憶だと、確か城にはお堀や池があったはずだから、そこにトンネルが繋がれば大惨事だ。
だから楽々脱出とはいかないだろうが、別の作戦を実行した。
牢屋の外の警備兵が居る辺りと、この牢屋の一部の地下の土を、収納スキルを使って収納し、一気に深さ１メートル位の地盤沈下を起こす。
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そのどさくさに紛れて、穴に落下した警備兵から、俺とエルフさん用の服を収納スキルで奪う。
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その警備兵の服を着て、『牢屋から二人逃げた』とエルフさんに騒いでもらう。
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脱走者を探す警備兵のふりをして城の外へと出て、街の人混みに紛れる。（今ココ）
「こ……ここまで来れば、だ……大丈夫のはず」
城の中を移動しながら、何ヵ所か地盤沈下を追加発生させると、それが功を奏し城の中は予想以上の大騒ぎとなって、全く怪しまれることなく城を出ることが出来、今はちょっと街中の建物の影に身を隠し休憩中。
ずっと走ってきたから、ヘロヘロだ。
「無事に城の外に出られましたね。有り難うございました」
淡緑色の瞳と長い髪。
少し幼さもあるけど綺麗な顔。
スラッとした身体に腕と脚。
その顔や身体に反して大きな胸。
街の灯りと月に照らされながら、目深に被っていた警備兵の帽子をとり、お辞儀をしたエルフさんのその姿に、改めて見惚れてしまう。
「完璧です」
「え？」
「あっと……、完璧な脱出だったなって」
「そうですね。それでこれからどうしますか？」
今は夜だから、この暗さに紛れて早く帝都からは脱出したいんだが、城の外なんて全く分からないんだよな。
「帝都から急いで出たいですけど、外の知識が無いんですよね」
「あっ、そうですよね。検問所を通らないと、帝都からは出られないことになっています、でも帝都は広いので抜け道が有って、そこを通れば大丈夫です」
「なるほど」
「それで……」
「？」
「そう言えば、まだ名前を知らないなって」
「ああ、急いでいたから。俺は……エイジ」
こちらの世界では、男の名前はまるで囚人番号のように数字が並んでいるだけだ。
そんな名前なんかを名乗る気にはならないから、前世の名前を名乗っておく。
「エイジさんですか？」
「今考えた名前ですけど」
「そうですか、そうですね。良い名前だと思います。私はアイリです。それでエイジさん」
「ん？」
「行く先は決まっているのですか？」
「どれだけ遠くても良いので、男の扱いが酷くない国があれば、そこへ行きたいかなと」
「……残念ですけど、全ての国が帝国の支配下です」
うわーい！
マジかよ。
