35話 最後かもしれない
アイリさんが指を鳴らした直後に失われた視界と意識は、どれくらいの時間が経った後かは分からないが、再びクリアになった。
しかし視界を失う前に見ていたアイリさんの姿はなく、今見えるのはアイリさんの神殿の部屋に似た石壁の部屋と、ベッドに倒れているユノの姿だけだ。
ここがどこか、どうしてこうなっているのか、アイリさんが何をしたのか、分からないことだらけだが、今は苦しそうに息をし、倒れたままのユノのことが先だと、彼女を抱え起こす。
「おいっ! ユノ! おいー!」
「……五月蝿いわね」
「良かった、意識はあるのか。大丈夫か?」
「大丈夫……って言いたいけど、大丈夫じゃないわ。力がどんどん抜けていってる」
「力が?」
「そう、アイリが指を鳴らして……それで気を失って……そしたらこの有り様よ。でも……どうしてアンタがここにいるのよ?」
「どうしてって、俺も同じように意識を失って、気付いたらここだったんだけど、お前はここに心当たりがあるのか?」
「ここ……アンタと私が融合した後、私がずっといる場所よ」
◆◆◆
ユノが付け加えてくれた説明によると、ここは自分の神殿の自分の部屋そっくりな場所らしい。
やはり魂は一番落ち着く場所が良いから、慣れ親しんだ場所が心の中に出来るのかもしれない。
まあ、そうじゃないかもしれないが、どちらにせよ俺は元の身体に戻ったわけじゃなく、まだ合体状態のままだ。
つまりこの身体は、魂のような状態ってことで……これは非常にヤバい!
ユノのこの症状が進めば、ユノが消滅してしまうかもしれない。
そしてそれは、俺の消滅へと続くかも……。
───ゴゴゴッ───
なっ? 何の音……お? おお?
大きな石が擦れるような音がし始め、何事かと壁を見ていると、壁に出入口が出来た。
そしてその向こうを覗くと、そこには凄く見覚えのある景色が。
「何の音だったの?」
「壁に出入口が出来てさ、その向こう側に俺の昔暮らしてた部屋が出現したんだよ」
「へえ……アンタの」
「そう、俺がこの世界に来る前のな」
「……もしかしてさ、向こうに行ったら、アンタと私……分離して元に戻れるんじゃない? 行けば? アンタ助かるかもよ?」
うん……それは俺も思ったさ。
そして俺が元の身体に戻り、速攻でユノをオカズにエロいことを想像すれば、ユノの力が回復する可能性が有るかも……ともね。
しかし、今の俺は気を失っているのだから、戻ったところで果たしてそれが出来るか分からない。
そしてもっと最悪の事態を考えると、あの部屋の出現した理由が、ユノが消滅寸前で色々と崩壊が始まっただけとしたら……。
「よし!」
「ちょっ…何すんのよ? 抱きつかないでよ!」
「もう時間が無いかもしれないから、頼む!」
「頼むって……きゃあ!?」
本当に力がないのだろう。
レザースーツを脱がす俺に、ユノは全く抵抗出来ないどころか、裸になった身体を手で隠すことも出来ない。
「な! 何で胸触るのよ!」
「消滅するかもしれないだろ? それなら」
「こんな時に……気でも……狂ったの?」




