32話 警備日誌
地下に着地して直ぐ見付けたモノ、それは帝都を覆っている木の幹の根元だ。
皇帝には根が張っていたが、木がそこから生えた感じではなかったから、何処か別の場所から生えていると思ってはいたが、まさかこの場所とはね。
しかし俺が牢にぶちこまれた時、こんな幹の根元は無かったし、小さな木すら無かった。
その状態から、ここまでの成長……この変化なら何か形跡が残っているんじゃないか?
神様が生やした本物っていうなら、形跡がないかもしれないが、この木が偽物だったり、もしくは本物だったとしても、例えば元の世界樹の枝を使ったり挿し木したりとか、誰かが意図的に生やしたりしたのなら、形跡が残っていたり、誰かが何かを目撃した可能性はあると思うんだ。
《これは……》
都合の良いことにここは地下牢。
投獄されている人がいなくても、常時警備兵が詰めている場所だから、こうなった状況を見た人がいないかと探したが、ここに人は見当たらなかった。
変化にいち早く気付き階上に逃げ、そこで捕まってしまったのかもしれない。
しかしだからといって、階上に行くのはリスクが高い。
そこで机の上に置かれていた警備日誌を手に取り、俺が居なくなった当日のページから、急ぎ確認し始めたのだが、俺が居なくなった翌日に書かれた日誌に、気になることを見付けた。
《えっと、アンタが地盤沈下させた所は、翌日には修復が完了したのね。それで……気付いたらその場所に木の芽が一つ生えてるのを、その日の夜勤警備の人間が見付けた?》
《……》
《どうしたの?》
《ああ、いや。続きを確認しよう》
《そう? それで……抜こうとしたけど、妙に頑丈で抜けず、ハサミで切ろうとしても切れなかった》
《……》
《? ちゃんと読んでる?》
《あぁ》
《それで……その翌日は、皇帝戦争の準備で、忙しくなったことしか書いてないわね。四日目も……五日目も。それで……最新の日付のページまで、木の芽については、何も書いてないわね。たぶん大したことないからと、そのまま放っておいたか、忘れたのね》
《そう……だな》
《さっきからどうしたのよ?》
《いや、俺達が居なくなった翌日、俺が空けた穴に生えてきたって、ここまでタイムリーでピンポイントなことだとは、予想してなかったからさ》
《そうね。偶然とは》
《ちょっと思えないな》




