3話 変
俺の一点を見詰めるエルフさんを見詰める俺、そんな状況が何秒続いただろうか。
恥ずかしそうにエルフさんが顔を両手で覆うと、『お見苦しい所をお見せしました』と謝るように、俺のナニもゆっくりと頭を下げていった。
だからといって、ここは息子にだけ謝らせておくわけにはいかないだろう。
「すみませんでした」
「あ、あの、いえ、こちらこそ、すみません、見ちゃいました。でも...その...それは、どうしてそんなことに?」
「え?」
変な事を訊くんだな。
目の前に裸のエルフさんがいるんだ、元気になるのは当然だけど......。
もしかしてエルフさん、男の生理現象を知らない?
いや、流石にそれはないか。
だとしたら、皇帝の部屋に向かう時にすれ違った女性たち同様、俺を淫乱童貞ビッチじゃないかと?
「あー、これは違うんですよ。スキルを連続して使ったから、身体にその反動が来たのかなあ、ハハハハハ......」
「そうですか、スキルのせいですか。そうですか......」
さっきは淫乱童貞ビッチと思われても、何ともなかった。
でも、このエルフさんにそう思われるのは何か嫌で、思わずそんな誰も信じないような嘘が出てしまったが、エルフさんからは疑っている様子が微塵も感じられない。
信じたのも驚きだけど、どうしてそんな悲しそうな顔をするんだ?
エルフさんの裸を見て興奮したからですっていうのが、まさかの正解だった?
いやいや、そんなこと……あっ、もしかして?
この世界って、美醜逆転世界とか?
だから私のような醜い姿じゃ興奮しませんよねって、悲しがってるとか?
うーん、気になる。
凄く気にはなるけど、もし美醜逆転世界なら、エルフさんに悪いから、訊くのは流石に出来ない。
それに今は、それを確認するより、逃げる事を優先しないと。
いつ罰や処分を与えに、警備兵が戻って来るか分からないから。
「あの、それよりも、エルフさんも逃げるんですよね?」
「あ、はい。一緒に行きたいです。でも扉の向こうには、警備兵が沢山いますよ?」
「知ってます。でもそれはむしろ好都合なので。じゃあ先ずは......はい、これ」
話題は変わったが未だ微妙な空気は漂う中、いつか使う時がくるかもと、十年以上に渡ってコツコツ収集し、収納スキルの収納スペースに保管しておいた下着や靴から、エルフさんのサイズに合いそうな物を取り出し渡していく。
「あの、これは? 一体どこから?」
「スキルで保管していた古着ですけど、除菌はキチンとしてあるから安心して下さい」
「スキルで保管? それにジョキン?」
「除菌っていうのは、スキルで綺麗にしてあるってことで......それはまた後で説明します。先ずは着て下さい。着たら逃げる作戦を説明します」
「は、はい。分かりました」