24話 降りかかる火の粉
馬車を飛び出してから、家臣さん達に待機するように伝えながら車列の先頭まで辿り着き、先駆けを務めているモーデル親衛騎士団長にも絶対待機の念押しをし、街道の先へと走り出した。
元の身体だったら、Vーマッスルでも使わない限り、こんなに早く車列の先頭まで辿り着くことは出来なかった。
本当にエルフの身体っていうのは、規格外だよな。
だが、そんなエルフの身体でも、Vーマッスル発動後の反動だけは今のところ解決していないから、Vーマッスルは切り札に取っておくしか……。
《ねえ、ヤル気マンマンで走ってるけどさ》
魂が同居した一か月前は、トイレに行けば『匂いを嗅ぐな、変態!』『音を聞くな、スケベ!』。
風呂に行けば『今変なところ触った!』とか、何かする度にギャーギャー文句を言っていたユノも、毎日の事で慣れてしまったのか、それとも諦めたのか、この頃は本当に必要な時か、俺が一人の時に暇つぶしで話し掛けてくるだけになった。
そんなユノが、この状況で話し掛けてきたのは、まあ暇つぶしじゃないだろうが……。
《別にヤル気マンマンじゃないぞ。降りかかる火の粉はってやつだ。それで何? 何かあった?》
《何かあったっていうか、あの集団をよく見た方が良いわよって、伝えようとしたのよ》
《よく見ろ?》
《そうよ。ヤル気マンマンじゃないって言うのなら、なおの事しっかり見た方が良いわよ》
どういうこと……ん?
《あれ? あれは衛兵? 騎士や魔法使いの姿は見えないぞ? おまけに後方にいるのは……民間人?》
《そうね。それになんか旗振ってるわよ。ここですよーって、こっちに報せるみたいに》
確かにそうだな。
弓や魔法の射程は把握してないが、ここまで近付いても攻撃が飛んでこないし……まさか、待ち伏せの部隊じゃないのか?
◆◆◆
集団に近付けば近付く程、待ち伏せしている雰囲気じゃないのが感じられるが、警戒を解くには情報が少なすぎる。
だからいつでも地盤沈下で無力化出来るように、集団の足元に狙いを定めたまま、ゆっくりと旗を振っている方へ近付いてきたが、この集団……人数は多いが、民間人が九割以上を占めている感じだ。
そしてそれが原因かは分からないが、マスカレードマスクを付けたメイド姿の俺に、好奇の視線を飛ばしてはくるが、攻撃を飛ばしてくる様子はない。
うーん、一体なんだこの集団は?
そんな状況に、ちょっと様子を見ようと立ち止まると、中央から衛兵ぽい人が数人前へと歩み出てきたが、その人の言葉に俺の頭は更に混乱した。
「どちらの家の方かは分かりませんが、助けて下さい。帝都……帝都が襲われました」




