22話 必要な物と者
V‐マッスルを発動して森の中を走り回っては、その反動でぶっ倒れるという砂金集め兼訓練を、一日に何回と繰り返す一ヶ月が昨日で終わった。
この世界の物価はイマイチ理解してないけど、目標を達成するだけの金を稼ぐことは出来たはずだ。
だから今日、予定通り里を出て、予定していた時間に、里から一番近い街へとやって来た。
砂金を売りに来ていたこの街には、帝都へ向かう為に必要なモノが手配してあるからな。
「リーン様、馬車を購入してありますから、あれで帝都に向かいます。新しい物を作る時間が無く中古品ですが、新品同様に改修してあります」
「……」
二頭立ての馬車を手で指し示すが、リーンからは返事がない。
それどころか、馬車とは違う方を凝視しているが、それも仕方ない。
リーンの視線の先には、サジタリウス家の大旗がたなびき、その下にはサジタリウス家の紋章を付けた騎士や魔法使いだけでなく、文官のような人達までズラリと並んでいるのだから。
「これは、どういうことですの?」
「お久しぶりです、リーンお嬢様。いえ、今はご当主様ですね」
リーンの問いに、他の騎士より少し凝った造形の鎧を装備した、二十代後半くらいの女性騎士が、一歩前へ出て頭を下げた。
「モーデル親衛騎士団長? これは一体どういうことですの?」
「今はサジタリウス家の家臣ではない私達ですが、今日この時間、リーン様が皇帝戦争の為に出発されるという事を知り、同行させていただこうと待っていたのです」
「どうして知っていますの?」
「こちらの張り紙で知りました。どうぞ」
*****************
【サジタリウス家 旧家臣の方へ!】
○月○日正午。
サジタリウス家当主、リーン・ド・リル・サジタリウス様が、皇帝戦争の為にこの街から帝都へ向け出発されます。
しかしリーン様には、皇帝戦争で戦闘を担当する者と、他一名のメイドしか同行出来る者がおりません。
そこで、以下のとおり人を募ります。
・年齢
不問
・資格
以前サジタリウス家に仕えていた方で、皇帝に一泡吹かせたい気持ちがあり、リーン様と自分の命を、その武力や知力で守れる方。
・待遇
三食と宿泊先の提供のみとなります。
報酬はありません。
*****************
「これは、まさか」
リーンと目が合ったが、うん、そのまさかだ。
これは俺がやった。
サジタリウス家の領地であったこの街が、今は皇帝直轄地にされているように、サジタリウス家には領地と呼べるような土地はない。
そして領地が無ければ家臣も養えないから、当然家臣もいない。
そうなると三人だけで帝都ってことになるが、それは少し無謀だ。
いくらアイリさんがいても、リーンの警護をいつも出来るわけじゃない。
だから、集めさせてもらった。
俺が優勝した後、皇帝となったリーンを支えてもらう為にもな。




