21話 大さじ一杯
旅支度と言っても、今着ているドレス一枚しか服を持っていないリーンは、直ぐに荷物をまとめ終わった。
さて、それじゃあ帝都に向けて出発……と言いたいところだが、帝都に向かうまでに、やらなければならない事があるから、一旦里に戻ることになる。
「リーン様、それでは里に戻りましょう。帝都への出発は、一か月後位ですから」
「直ぐに向かわないのは、森に籠って修行をするからですの?」
修業ね。
確かに、戻る理由の一つはそれだ。
城の狭い部屋では出来なかった事が、この広い森ならいくらでも出来るから。
だが、もう一つ森に籠る理由がある。
それはある意味、スキルの訓練より重要な事だ。
「修行もしますけど、森の中で遠征費用を稼ぐのです」
自分の遠征費用は、リーンもなんとか捻出しているだろうが、あの家の状況から察して、ギリギリ位しかお金は持っていないだろう。
それで俺はというと、城からパクった剣等を逃げる途中で売った分があるから、アイリさんと自分の分くらいの遠征費用は賄えるが、それじゃあ足りない。
帝都に喧嘩しに行くようなものなんだから、なめられないようにしないとな。
「ということで、これを集めます」
掌に数十粒の塊を出しリーンに差し出すと、彼女はチョイチョイと触って確認し始める。
「この金色の粒は何ですの?」
「砂金……つまり金ですね」
「え!? これ金ですの? でも、こんな物、どうやって集めるんですの?」
「収納スキルは、そこに有るとイメージ出来れば、見えなくても収納出来ますからね」
「そうなんですの?」
そうなんだよね。
だから服の下で見えない下着でも、そこに有るとイメージ出来たから、収納が可能だった。
「それで試しに里からここまでの間に、地下を目標にして『砂金を収納』ってスキルを発動してみたら、これだけですけど集まりました」
「これだけって言われてましても、これで一体いくらになりますの……」
リーンは絶句しているが、大さじ一杯位だからな。
目標には全然足りない。
だから後一か月、V‐マッスルの訓練を兼ねて山を駆けずり回り、金目の物を集めまくるさ。




