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16話 熟練の技

 必死に逃げようとするユノに向かって、優に百を越える蔓や木の枝が襲い掛かったが、それらはユノを傷付けることはなかった。

 何重にも巻き付き、身体の自由を奪っただけだ。


 アイリさんがそうしたのは、あんな事をされたけど同胞は傷付けたくないとか、思うところがあったのだろう。


 だが、グルグル巻きのロープから抜け出したように、また逃げたりしないだろうな?


 今は襲ってくる蔓等に必死で抵抗したせいか、バッテリー切れの玩具のようにピクリとも動かなくなっているが、逃げるチャンスをうかがう為の演技ってこともある。


 ここは一つ試してみるか。



「アイリさん、蔓とかを少し動かして、ユノの胸の部分だけ見えるように出来ます?」


「胸……ですか?」


 あんなエロい事をされていた後だ。

 ユノを拘束した後も、顔を赤くしたまま目を合わせようとしなかったアイリさんが、くるりとこちらへ顔を向け睨んでくる。


「あー、変な意味で言っているじゃないんですよ。ユノが動けない今、ちょっと試してみたい事が有るんです」


「何をですか?」


「それは……」


 意識を失っている演技かもしれないユノや、状況についていけず口をパクパクさせている金髪ドリルに聞こえないよう、アイリさんに小声で耳打ちした。




 ◆◆◆




 実は収納スキル、収納する時より、収納していた物を出して、狙いどおりの場所に置く方が難しい。


 例えるなら、テーブルの上にある生卵を、素早く手で掴んで取るより、掴んでいる卵を割れないように、素早くテーブルの上に置く方が難しい……って感じだが、このスキルを持っていない人には、分からない感覚かもね。


 だがそんな収納スキルは今、赤ちゃん時代からのたゆまぬ努力によって、自分でいうのもなんだけど、かなり上手く扱えるようになっている。


 メイドさん達のブラやガーターベルトを収納し、気付かれないよう直ぐ元通りに履かせる事を、日課のトレーニングにしていた位にはね。


 だからその熟練の技術をもってすれば、こんな事も出来るかもしれない。


「実はさっきユノが力が出ないって騒いでいたのは、俺がユノの刻印一式を収納したからなんです。それで、その収納した刻印を、俺とユノの間に逆向きに付けてみようかなと」


「そんな事が出来るのですか?」


「うーん、多分かと。収納出来たから、出すことも出来るはずですし。それでもし刻印を付けられたら【逃げるな】【人に危害を加えるな】とか、ユノに命令出来ますから、試してみる価値はあると思うんですよ」


「確かにそれが出来れば、良いと思いますけど、大丈夫でしょうか?」


「大丈夫です。駄目なら直ぐ収納しちゃいますし」


 ユノの言動からは、刻印を打った方がリスクを負う術とは、ちょっと想像出来ない。

 万が一そうだったとしても、一回収納出来たものが、収納出来なくなる事なんてないし、俺には解呪もあるんだからね。



 

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