11話 嫌
穴の中を指差すと、足元からは『酷いですわ』『嫌ですわ』『殺されてしまいますわ』なんて声が聞こえ始めた。
だが仕方ない。
俺にはこうするしかないんだから。
「確かに声が聞こえるわね。でもどうして穴に落ちてるの?」
金髪ドリルの声に、レザースーツのお姉さんも俺の言った事が嘘ではないと分かったようだが、穴のネタばらしは出来ないんだよね。
「掘っておいた穴に、この人が落ちてしまったみたいで」
「とんだお間抜けさんね。探す手間は省けたけど、穴から出さないといけないわね。ちょっと手伝ってくれるかしら」
「嫌だよ」
「……なんですって?」
「嫌だと言った。この金髪ドリルには、早々にここから立ち去って欲しかったが、アンタには渡せないかな」
「どういうことかしら?」
「俺の前から去った後に、この金髪ドリルの身に何か起きても、そこまでは責任を持てない。でも目の前にいる時に悪い事が起こりそうなら、それは排除するってことさ」
褐色のお姉さんは護衛で、逃げだしたお嬢様を探しているとかいう可能性も考えられた。
それなら理由次第で引き渡しても良いだろうが、二人に話を聞いたところで、逃げる方と追う方で都合のいい嘘を言われたら、俺には判断出来ない。
それにどのみち近付かれたら、穴の存在もバレる。
だからお互いの反応で情報を得ようと、金髪ドリルの存在を明かしたんだが、思ったより結果は早く出た。
家臣がお嬢様を、『間抜け』や『そいつ』とか言わないはず。
まあ、このドリルはポンコツっぽいから、もしかしたら言われてるかもしれないが。
「くだらない正義感で、死にたいのかしら?」
「死にたくはないよ」
「!? 何をしたの?」
「へえ、分かるんだ」
「分かるわよ。腰に付けていた短剣や投げナイフ……その重さが一瞬で無くなったのよ? 武器をどこへやったの?」
「優位に立ったからといって、手の内を明かすのは負けフラグだからな。言わないよ」
「クスクスクス。不思議な術で武器を奪っただけで優位とか、私も甘く見られたものね」
甘く見てるか……残念だが甘くは見てないんだよ。
多くの異世界転生小説を参考にして、暇すぎる赤ちゃん時代に戦闘向けの技を考えたが、地下牢からの脱出の時とは違って、果たして人を相手にした初めての実戦で、どこまで上手くやれるか……。




