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10話 ドレスとレザースーツ

「目が、目が! 何かベトベトして開けられませんわ!」


 突然目の前に現れた女性は、大騒ぎしながら顔を押さえて転がり回っているが、痛がっている様子も特にないし、良い感じに目潰しになってるから放っておこう。


 それより、こんな人が入って来ない森の奥の、それも茂みの中で身を潜めていた理由を、急いで探らないといけない。



 先ず他に人は……これだけ騒いでても他に誰も出て来ないから、声が届く範囲に人はいなさそうかな。


 でもだからって、安心はできない。


 こんな森の中に入ってくるのに赤いドレスを着ていて、口調が「ですわ」の金髪ドリルヘアーとか、まるで義妹の策略で家を追い出された貴族の令嬢とか、暗殺者に襲われ逃げてきた貴族の令嬢が、厄介事を運んで来ましたよって言っているようなものだ。



「どうなってるんですの? 困りましたわ!」


 ……うーん、いつまでも五月蝿いな。

 追手とか近付いてきていたら、どうするんだよ。


 仕方ない。

 これ以上騒がれても面倒だし、深い穴を作って落としておくか。


 ――― ドスンッ ―――


「ぐふっ!? せ、背中が! 何ですの? 今度は何が起きたんですの!?」


「ちょっと深い穴に落ちてもらっただけだよ。ただ、暴れると周りが崩れるから、静かにしていてね。それで? お姉さんは誰かな?」


「誰ですの?」


「訊いたのは俺だけど。まあ、いいや。俺はお姉さんに、ガッツリ覗かれていた男だよ」


「の、覗いてなんかいませんわ!」


「それじゃあ、茂みの中で何をしていたの?」


「…………」


「正直に言わないと、埋めるけど?」


「おっ、おトイレですわ」


「トイレ? それで茂みの中に?」


「そうですわ。茂みの中に入ったら近付いてくる人影が見えたので、じっとしていたんですわ」


 そうだとしても、そこから覗いていたんだろ?

 そうじゃなかったら、上手い具合に目に当たる事なんてなかったんだから。


 そうツッコミたいけど、その問答はいいや。



「それで? お姉さんの他に誰かいるの?」


「いませんわ。私一人ですわ。ですから、ここから出して欲しいですわ」


「一人? 一人でこんな所まで? 誰かから逃げてきたとか?」


「どうして分かりますの?」


 どうしてって、異世界ものの小説とか漫画とか読んでたから?


 まあ、そうじゃなくても分かるだろうが、言ってる事は嘘じゃなさそうだな。


 それなら、さっさとお引き取り願おうか。


 先ずはあまり収納したくないけど、顔にへばり付いている物を収納してと。


「あら? 目が開きますわ!」


 次は森の中で動きやすい靴と服と、水と食料とバック、そして片手剣を護身用に渡して。


「あら? どこからこんな物が?」


 後は森の中を歩いて出来ただろう傷を治し、消耗しているだろう体力を回復させてっと。


「あらあら? 傷が消えて、元気が出てきましたわよ!?」


「餞別だよ。その代わり、ここの事は誰にも……」


 ――― ガサッ ―――


 ん?


 別の方向の茂みから音が聞こえ振りかえると、そこにはこちらの様子をうかがうように立っている、褐色の肌を黒いレザースーツで覆った黒髪の女の人の姿が見える。


「声がするから来てみれば、男の子だったのね。ねえ、君? 赤いドレスを着た人を見なかった?」


 金髪ドリルヘアーを追ってきたわけか。

 くそう、面倒が次から次へと。


「赤いドレスの女性ですか?」


「そうそう。もし良い情報をくれたら、君の事は見逃してあげるわよ」


「見逃すって?」


「ん~? とぼけるの? 君は何処からか逃げてきたハグレ男で、そこの建物にでも住んでるんじゃないの?」


 ハグレ男……。

 その呼び名は知らなかったが、そんな名前が有るってことは、今までに逃げた男もいたってことだよな。


「ばれましたか。でも本当に見逃してくれるんですか?」


「さっきも言ったでしょ、情報次第よ」


 ふむ、金髪ドリルヘアーを引き渡せば、万事上手くいくってわけだな。


 それなら迷うことはない。


「探してるその人なら、この穴の中にいますよ」


 金髪ドリルヘアーが抗議の表情で睨むのは気にせず、褐色のお姉さんに分かるよう、足元の穴を指差してやった。




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