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クリスマス


 もう冬休みに入る。


文化祭以来、蒼空くんとはなかなかタイミングが合わず一緒にお揃いの服を買いに行くことも出来ずに終業式になった。


もうすぐクリスマスなのに蒼空くんと会えてない。

最後に会ったのは私のバドの試合だ。

蒼空くん、クリスマスの予定空いてるかな?

デートに誘ったら来てくれるかな?


「おい、何そんな暗い顔しんだ?リア充のくせに」

(さとる)の方こそモテ期終わったの?いつもならとっくに新しい彼女出来てるじゃん」

「違うよ。もうそうやって好きでもない子と付き合うのやめただけだ」

「え、なんで?付き合えば好きになるかもって言ってたじゃん」


首を傾げると惺はわざとらしく溜め息をついた。

人の顔見て溜め息つくとか失礼だな~。

ホームルームが終わって帰る用意をした。

今日は部活がないからもう帰れる。


「葵、一緒に帰らないか?」

「え、まあ、別にいいけど。颯と翔と真夏も一緒だけどいいよね?」

「……ああ」


5人で学校を出て家に向かった。

皆同じ中学出身で惺に至っては小学校も一緒だから家が近い。

真夏と途中で別れて4人で帰った。


「そういや葵って蒼空兄とデートとかすんの?」

「颯こそ誰かとデートしたりしないの?」

「ねえな。で、デートすんの?」

「約束はまだだけどね」


スマホのメッセージ画面を見た。

最後のメッセージがもう3日前。

こんなものなのかな?私はちょっと少なく感じちゃうけど、蒼空くんは忙しいだろうから寂しいなんて言ったら迷惑だよね。

スマホの画面を見て頬を膨らませるとパシャッと写真の音がした。


「葵、変な顔すんなよ」

「その変な顔を撮るな!」

「うわ、怒った!怖っ!」

「スマホ貸して!あんたに弱みなんて絶対握らせたない!」


手を伸ばして惺のスマホを取ろうとジャンプした。

こいつ、無駄に身長高いんだけど。


「おい、近えよ。スマホ渡すから離れろ」

「さっさとそうすればいいんだよ」


写真を消して惺にスマホを返した。

てか、ちょっと近付くだけで顔赤くなるとかどうしたの?

もしかして熱?


「なんで見てくるんだよ」

「風邪引いた?」

「引いてねえけど」

「そ、ならいいけど。」


家に帰って蒼空くんにメッセージを送った。

多分、まだ学校かバイト中だろうけど。

冬休みの宿題してたら蒼空くん褒めてくれるかな?

……めんどくさいからやっぱやめよう。


寝転がって漫画を読んでいるといつの間にか夕方になっていた。

漫画を閉じて本棚に片付けるとスマホの着信音が鳴った。


「もしもーし」

『葵?』

「蒼空くん!?急にどうしたの?」

『23日の夜までバイトだからイブには帰れると思う』


クリスマスには会えるんだ。良かった。


「そうなんだ」

『服、買いに行くのいつにする?成人式まで実家にいるから葵の空いてるときでいいよ』

「じゃあ25日がいい。24日はイルミネーション行きたい」

『分かった』


もう少し話したい。なにか、話す内容。えっと、


「今日はバイトなかったの?」

『いや、今休憩中』

「そっか。バイト頑張ってね」

『ああ』

「じゃあね」


スマホを抱きしめてビーズクッションに座った。

久しぶりに声聞いた。

蒼空くんのバイトしてるところ見てみたいな。

今度行ってみようかな。


「蒼空くん、帰ってきて。早く会いたいな」

『早く帰れるように頑張る』

「え、蒼空くん!?通話切れてなかったの!?」

『ああ。時間取れなくて悪い』

「会ってないと寂しいけど、蒼空くんと会えたらその100倍嬉しいから全然いいよ」


それから数分話しているとスマホの向こうで蒼空くんが呼ばれた。

休憩が終わったらしい。

名残惜しいけど今度こそ通話を切ってリビングにおりた。



クリスマスイブ。

朝の9時過ぎに蒼空くんがうちにチャイムを鳴らしに来た。

私は走って玄関から出て蒼空くんに抱きついた。


「おかえり!」

「ただいま」

「会いたかった!」

「……」

「蒼空くんは?」

「……会いたかったよ、」


蒼空くんは真っ赤な顔を背けた。

可愛い。ノリで言ったのに真面目に答えてくれる蒼空くん好き。

イルミネーション行くまでいっぱい話したいことあるんだよね。


蒼空くんの家に行ってたくさんお喋りをした。

最近知ったんだけど、咲久姉と真白兄SNSで活動してるらしい。

しかもめちゃくちゃ人気だし。

他にもうちの部であった面白いこととか、嫌だけどテストの点数とか色々話しているとあっという間に外は暗くなった。


「じゃあ、そろそろ行くか」

「うん!」

「母さん、車借りる」

「気を付けてね」

「ああ」


やった!蒼空くんの運転してる姿見れる!

イルミネーションよりこっちの方が断然嬉しい!


助手席に座ってシートベルトをすると、蒼空くんが膝掛けを渡してくれた。

咲久姉も莉久姉も寒がりだから慣れてるんだろうな。


しばらく車に乗っていると最近イルミネーションを始めた大きめの公園に着いた。

ここあんまり有名じゃないけど友達がおすすめしてたし来てみたかったんだよね。

けど、蒼空くんには言ってなかったんだけどな。

蒼空くんも来てみかったのかな?


車を降りてすぐそこにあるハートのオブジェの列に目線を送った。

ここで写真撮りたいんだよね。


「写真、撮るか?」

「いいの!?蒼空くん、こういうの嫌がると思った」

「まあ、好んで撮ろうとは言わないけど。葵とならいいかなって」

「そ、か。」


蒼空くんから特別扱いされるとか、私幸せすぎる。

私とならいいって、蒼空くん可愛い。

今すぐ抱きしめたい!けど、蒼空くん人前でベタベタするの好きじゃなさそうだし今日はやめとこ。


「次だね」

「そうだな」

「ポーズどうする?」

「ピース、とか?」

「蒼空くんのピースか。アリだね。絶対いい。それで行こ」


順番が来て、次の人に写真を撮ってもらった。

もちろんピースで。

蒼空くん、ほんっとうに写真で笑うの下手なんだよね。

こういうところガチで好き。

写真じゃあんまり笑わないのに、時々私に笑いかけてくれるのがヤバい。

好きすぎる。


「クリスマスツリー見に行くか?」

「うん」


蒼空くんの手を握って頷いた。

去年は蒼空くんとクリスマスデートなんて考えもしなかったな。

告白したけど、どうせすぐに幼馴染みの妹に戻っちゃうって思ってたし。

だから、蒼空くんから付き合ってって言われたときは本当に驚いた。


イルミネーションの写真をいっぱい撮ってまだ6時半だけど寒いから帰ることになった。


信号待ちをしてるとき、私はふと思ったことを口に出してしまった。


「キスしたい」

「……急にどうした」

「思ったから」

「あと2年だな」

「私のファーストキス、そのうち誰かに取られるかもよ。これでもモテるし」

「好きでもない奴と唇当たっただけはキスじゃないだろ。俺は気にしない。けど、もしされたら言えよ」


蒼空くんのバカ。

唇当たったなんて思えるわけないじゃん。

初めては何でも特別なのに。

まあでも、もし蒼空くん以外からキスされそうになったら合気道の技でもかけて全力で拒否するけどね。


蒼空くんの家に帰って皆でピザを食べていると、幼馴染みでお兄ちゃんと莉久姉と同級生の紫輝兄(しきにい)が隣に座った。


「葵、不機嫌だね。どうしたの?」

「紫輝兄~!実はね、」


小さい声で紫輝兄に蒼空くんと帰りに話した内容を話した。


「その言い分だとさ、俺がたまたま葵にキスしちゃってもそれはファーストキスにカウントされないってことだよね?そんなことしたら蒼空、絶対怒るくせにカウントしないんだ」

「紫輝兄、ムカつくからイタズラに付き合ってくれる?」

「当たり前じゃん」


紫輝兄は笑って頷いた。

やっぱ私の味方はいつも紫輝兄だ。

4年もオーストラリアに水泳留学行ってたけど、帰ってきたらいつもイタズラに付き合ってくれる。


「じゃあ、私にキスするフリして」

「いいよ。蒼空がどれくらいの距離で止めにくるか楽しみだね」

「うん」


紫輝兄は笑って私の方を向いて顔を近付けた。

すると、蒼空くんがさりげなく私の隣に座って肩を寄せた。

思ってたより早い!え、まだ全然距離あったしキスするかどうかも分かんないくらいだったよね!?


「紫輝、クリスマスだからってふざけすぎだ」

「ほら、やっぱ怒った。めっちゃ気にするじゃん」

「葵、変なこと紫輝に話すなよ」

「変なことじゃないもん。ムカついたから相談してただけだよ。ね、紫輝兄」

「そうそう」


私がウインクをすると紫輝兄もウインクを返した。

てか、紫輝兄が私にキスするわけないのに。

自分では気付いてないみたいだけど、紫輝兄はコーチの娘さんのソフィアのことが好きだろうし。

ま、鈍感な蒼空くんが気付くわけないけど。


「蒼空くん、私が他の人とキスしても気にしないんじゃなかったの」

「俺が言ったのは唇が当たっただけなら気にしないって言っただけだ」

「当たってすらないけど」

「嫉妬した。葵と付き合ってからどんどん子供っぽくなってく。嫉妬なんてしないと思ってた」


蒼空くんは真っ赤な顔を下に向けて膝を抱えた。

てか、嫉妬しない人間とかいるのかな?

それに、嫉妬するってことは私のこと好きってことだよね。

普通に嬉しいんだけど。

私は微笑んで蒼空くんの肩に寄りかかった。

恋愛に慣れてなくて、それどころか鈍感で、でも誰よりも優しい蒼空くんが大好きだよ。



翌朝、蒼空くんと久々のデートなので早起きをして髪を巻いてみた。

蒼空くんってどんな髪型好きか分からないから色んな髪型試してるんだよね。

クリスマスだしネイルもしてみよう。

まあ、明日は部活だからネイルシールだけど。


「お兄ちゃん、変じゃない?」

「似合ってる。大人っぽく見える」

「ありがと」


玄関の鏡でもう一度髪型と服装を確認して家を出ると、ちょうど蒼空くんがチャイムを鳴らそうとしているところだった。


「お、おはよ」

「おはよう。寒いな。早く車乗れよ」

「うん」



アウトレットに送ってもらって車を降りた。

思ってたよりカップル多いな。

カップルが出掛けるのはイブだけだと思ってた。


「蒼空くん、まずはあのお店からね」

「そんな靴で走ったら転ぶぞ」

「転んだらそのまま華麗にバク転でもするから安心して」

「スカートめくれるから絶対にやめろよ」

「ウソに決まってるし」


蒼空くんの手を引いて近くのお店に入った。

あれ?なんか下着ばっかだ。

あ、もしかしてランジュリーショップに入っちゃった感じ?

慌てて蒼空くんの方を見ようとすると恥ずかしかったのか私の背中にくっついた。

よし、イタズラしちゃお。


「蒼空くん、これ可愛くない?」

「知らん」

「え~、じゃあ、試着してみて似合ってたら買ってくれる?」

「ふざけるなら帰るぞ」

「ごめんごめん。入るお店間違えちゃった。でもホント可愛いのばっかだよ。私も買おうかな」


手に取って見てみると私には手が出せない値段だった。

お、大人の下着だ!


「出直します……」

「ああ。早くここから立ち去りたい」


蒼空くんは私の背中を押して外に出た。

買い物の前にどっと疲れたようだったのでカフェで休憩した。


「蒼空くん、ブラックコーヒー?1口ちょうだい」

「熱いから火傷しないようにな」

「子供扱いしないで、って苦っ!」


私は慌てて自分のココアを飲んだ。

すご。あんな苦いの飲むなんて蒼空くん大人だ。

私一生飲めない気がする。

蒼空くんは可笑しそうに笑って残りのコーヒーを飲んだ。


「早く服買いに行こ」

「だな」


蒼空くんの手を引いて私のよく行ってるお店に行った。

ここ、メンズの服も結構置いてあるんだよね。

蒼空くんに似合いそうな大人っぽい服もあるし。


「このシャツ蒼空くん絶対に似合う」

「そう、なのか?」

「蒼空くんの服ってさ、咲久姉とか一緒に住んでる従兄弟さんが選んでるんだっけ?」

「ああ」

「じゃあ、やっぱりこれ合わせやすいからいいと思う」


蒼空くんに渡して、私も自分のサイズのシャツを手に取った。

あとはアウターも欲しいな。

着回しやすくてどんな服にも似合いそうなアウターの方が蒼空くんはいいよね?


「あ、これ!いいじゃん!蒼空くんどう?」

「似合うと思うぞ」

「違うよ。蒼空くんが気に入ったかどうか訊いたの」

「え、ああ、そうか。暖かそうだし気に入った」

「良かった。じゃあこれとさっきのシャツね。」


私のサイズのシャツとアウターを持ってレジに向かうと蒼空くんが一緒にレジに並べてお財布を取り出した。

え、なに?2人分払おうとしてるの?


「蒼空くん、このお店学割効くからお小遣いで払えるよ」

「俺も学割効くし。それに、約束果たすの遅くなったからそのお詫び」

「さっきカフェでも払ってくれたじゃん。せめて割り勘」

「無理。これでお願いします」


蒼空くんは勝手にお会計を払ってしまった。

やっぱり、奢られるのは私が高校生の子供だからかな。

もう少し大人扱いっていうか、同い年の子と同じ扱いしてほしいのに。


「蒼空くん、どうしたら子供扱いしなくなるの?今日、頑張って大人っぽくしてみたのに」

「子供扱いなんてしてないけど」

「してるじゃん。私がお小遣いしか貰えないから今日は色々奢ってくれるんでしょ?」

「いや、それは、……カッコつけたかったから」


驚いて蒼空くんの方を見ると顔が真っ赤になっていた。

蒼空くんでもカッコつけたりするんだ。

既にカッコいいのに、カッコつけてさらにカッコよくなったらモテて大変そうだな。

てか、モテられると私が嫌だし。


「付き合うの初めてだから従兄弟とかにどうしたらいいか訊いたらこれ読めって漫画とか貸されて。けど、真白じゃないから壁ドンとかできるわけないし、出来ることっていったらこれくらいしかないと思って」


そりゃ、普通に壁ドン出来るのは知り合いだと真白兄くらいだよ。

それに、実際されて喜ぶ子は少ないと思うけど。

まあ、蒼空くんになら壁ドンされてもいいかな。


「まあ、子供扱いじゃなくて女の子扱いなら嫌じゃないよ」

「良かった」


蒼空くんはホッとしたようにため息をついた。


「あ、そうだ。蒼空くん、1ヶ月門限守ったよ。ご褒美くれる約束だよね?」

「そうだな。何かほしい物あるのか?」

「ハグしてほしい」

「……そんなことでいいのか?」

「私にとって蒼空くんとのハグは“そんなこと”じゃないもん。まあ、蒼空くんが人前は嫌っていうなら別の考えるけど」


蒼空くんに背を向けて歩き出すと蒼空くんは後ろから私を抱きしめた。

自分で言ったけど、ドキドキしてるのが伝わるのは結構恥ずかしいかも。


「もう、大丈夫。これ以上は心臓がもたない」

「そ、うか。……他に見たい店とかあるか?」

「あ、部活用のスポーツウェアが小さくなったから買い替えようと思ってたの」


いつものスポーツ用品店に向かった。

学校から近くて、バドの備品も割りと揃っているのでうちのバド部の人たちは結構通っている店だ。

てか、うちの学校の運動部は割りと通ってるかも。


「いらっしゃいませ。おお、葵ちゃん、今日は一段と可愛い格好してるね」

「格好だけですか?」

「いや、そういう意味じゃ、」

「冗談です。あ、蒼空くん。この人うちのOBの」

石垣(いしがき)だろ?」


え、石垣さんってもう21歳だから蒼空くんと同い年じゃないよね。

あ、そっか。そういえば石垣さんって出席日数足りなくて1回留年してるから蒼空くんより2個年上なんだった。


「小鳥遊、」

「あれ?もしかしてあんま仲良くない感じ?」

「仲良くないっていうか、こいつ、姉貴にフラれてるから気まずいだけ」

「それだけじゃねえよ!お前、その後できた俺の好きな子、全員お前のこと好きになったこと覚えてねえのかよ!」

「そうだったか?」


蒼空くん、無意識でモテるタイプだからなぁ。

まあ、蒼空くんは昔から文武両道で対応が大人っぽいのに負けず嫌いな男の子の1面もあるから好きになっちゃうよね。

それに優しいし。なんでもかんでも許すんじゃなくて人のために怒ったり注意できるとか優しさの極みでしょ。


「まあ、小鳥遊はモテても調子乗らないタイプだったから嫌いになれなかったけど」

「そうか」

「……あ、そういえば大塚も来てたぞ。しかも、美人を連れて」

「え、惺、数日前まで彼女いないって言ってたのに?彼女出来るの早っ!」


てか、好きでもない子と付き合うのやめたって言ってたし好きな子と付き合えたのかな?

会ったらおめでとうって言っとこ。


スポーツウェアが売っているコーナーに行くとちょうど惺もいた。私たちには気付いていないみたい。

それにしても、ホントに美人。

年上かな?色気ヤバ~。

蒼空くんもあんな感じで大人っぽい人がタイプだったりするのかな?

こっそり蒼空くんの方に視線を向けると蒼空くんと目が合った。


「ん?どうした?」

「いや、別に」


蒼空くんから目を逸らしてTシャツを手に取った。

何個かカゴに入れてお会計に行った。

これはお父さんとお母さんからお金を貰ってるので自分で払った。

お店を出るタイミングでまた惺と美人な彼女さんと被った。


「あ、葵。偶然だな」

「そうだね。そっちもデート?」

「違えよ。姉ちゃんに連れ回されてるだけ」

「え、お姉さん!?めっちゃ美人!」

「どうも~。惺の姉の瑠璃子(るりこ)で~す」

「長谷川葵です」


そういえば、お姉さんとお兄さんいるって言ってたな。

お兄さんは中学で会ったことあるけどお姉さんに会うのは初めて。


「隣のイケメンは葵ちゃんの彼氏?」

「はい」

「蒼空くんが答えるとこじゃないと思うんだけど」

「別にいいだろ。誰が答えても」

「まあ、それはそうだけど」


珍しいな。蒼空くんって人の会話に割り込むほどお喋り好きじゃないのに。


「デートの邪魔してごめんね」

「気にしないでください。()()()()とお姉さんに会ったのに無視するのも失礼ですから。な、葵」

「え、あ、うん」

「そろそろ失礼します。大塚くん、これからも()()()()()葵と仲良くしてくれると嬉しい」

「……はい」


蒼空くんは微笑んで私の手を引いてその場を立ち去った。

なんか、蒼空くんが変。

もしかして、惺に嫉妬してるのかな?

けど、惺に嫉妬したところでって感じだけどね。


「あいつ葵のこと絶対好きだろ。もしかしてもう告白されたか?」

「されてないけど。てか、違うよ。惺が私のこと好きなわけないじゃん。他に好きな子いるみたいだよ」

「そうか。なら、いいけど」



しばらくお店をまわって車に戻った。

あ、そうだ。蒼空くんにクリスマスプレゼント渡し忘れてた。


「蒼空くん、メリークリスマス」

「ハンドクリーム?」

「うん。料理する人におすすめって書いてあったから。口に入っても大丈夫だし、無香料らしい」

「ありがとう。助かる。俺からはこれにしたんだけど」


蒼空くんは少し気まずそうに頬を書いた。

手元を見るとクリスマスツリー風に緑色のクリームが絞られていてアラザンなどでデコレーションされていた。


「カップケーキだ!」

「なんか形に残るものの方が良かったよな。そこまで気が回らなくて、悪い」

「めっちゃ嬉しい。蒼空くんを好きになったきっかけだし。ありがとう、蒼空くん」

「どういたしまして」


カップケーキの写真を撮って1口食べてみた。

やっぱ、専門学校に行ってるだけあって美味しい。

まあ、専門は料理みたいだけど。

美味しくてすぐに完食してしまうと、蒼空くんは嬉しそうに笑っていた。


「美味しかった」

「葵の顔見てたから分かった」

「そんなに顔に出てた!?」

「ああ。そういえば、俺が料理を好きになったきっかけも葵の誕生日に作ったカップケーキだったって思い出した」


じゃあ、私がワガママじゃなかったら、蒼空くんは料理の道に進んでなかったかもなんだ。

いや、自惚れすぎかな。

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