昇級試験
グリーンアイランドの事件から一年後。
スズネたちは当初予定していた三ヶ月という修行期間を大幅に延ばしていた。
いったい何故そのような事態になってしまったのか ──────── 。
その理由はミリアとマクスウェルにあった。
グリーンアイランドから戻った二人は運命的な出会いを果たす。
それは世界に数多くいる剣士を名乗る者たちの頂点に立つ男。
世界最強の剣士と謳われる“剣聖ミロク”との出会いであった。
そんな世界中が認める大剣豪に運良く剣の指導を受けさせてもらえることとなった二人なのだが・・・。
なんとミロクは指導を開始してから半年の間二人に対して剣に触れることの一切を禁止し、さらにクエストへの参加も禁止したのだった。
それによりスズネたちは予定を変更せざるを得なかったのである。
そして指導が開始されてから半年後、ようやく剣を使った修練が開始されたものの、基本的な型の素振りと瞑想という二つのメニューをただひたすらに繰り返すだけなのであった。
そこからさらに半年後 ──────── 。
やっとミロクからミリアとマクスウェルのクエスト参加が認められる。
その間の宿り木はというと、前衛二人を欠くこととなったため討伐クエストを受けることを諦め、素材集めや薬草採取、モアの街の人たちの手伝いなどの低ランククエストを受けていたのだった。
そして、そのような期間を経て久しぶりにフルメンバーでクエストに臨めることを喜び心躍らせるスズネなのであった。
「本当に久しぶりだよね。みんなでクエスト受けられるの」
「あんのクソジジイ〜。冒険者に対して一年半もクエストを禁止するなんてマジでふざけてるわ」
「まぁまぁ落ち着いてください。ミロク様にも何かしらの意図があるんでしょうから」
「はぁ?いったいどんな意図があって剣士から剣を取り上げるってのよ。素振り、瞑想、たまにアンタとの打ち込み。一年半の間でやったことがこの三つだけなのよ!!」
いったいこの一年半の間に何があったのか ──────── 。
ミリアによるミロクへの愚痴が止まらない。
そして、荒れ狂うミリアを前にマクスウェルはそこにもミロクの意図があるのだと宥めるのだが、火に油を注ぐ結果となる。
そんな二人のやり取りを笑って見守るスズネたちなのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
いよいよ始まる討伐クエスト。
ミリアとマクスウェルにとっては一年半ぶりのクエスト。
そして、スズネたちもその間討伐クエストを受けていなかったため宿り木にとっても久しぶりの討伐である。
今回の討伐対象は ──────── 小鬼の群れ。
どうやら武装小鬼に率いられた群れのようで、近隣の村人が薬草採取に訪れたところを襲撃されたらしい、
そのため今回のクエストクリア条件は小鬼の群れの殲滅である。
「うおりゃぁぁぁぁぁ」
ザンッ!ズバァン!!ズババババァン!!!
これまでの鬱憤を晴らすかのように次々と小鬼を斬り伏せていくミリア。
最強を目指す彼女にとって、この一年半は周囲の者たちが考える以上に耐え難いものだったのだろう。
その間に溜めに溜めたストレスを嬉々として発散していく。
「す…凄いっすね…」
「ほ…本当にブランクがあるのでしょうか」
「わっちらの出番が無いのじゃ」
一見すると八つ当たりをして格下の魔物たちを薙ぎ倒しているようにも見えるのだが、ミリアのそれは最小限の動きと最短距離での剣捌きによって一切無駄の無いものとなっていた。
そして、そんな快進撃を見せるミリアの隣で負けじと凄まじい勢いで小鬼を斬って倒すマクスウェルの姿が。
ザンッ!ザンッ!ザンッ!ザザンッ!!!
「マクスウェル!アンタ出された課題忘れてないでしょうね」
「もちろんです。全ての敵を一撃で倒すこと。そして、一匹たりとも打ち損じることのないように」
競うように小鬼を倒していく二人。
どうやら師匠であるミロクから今回の討伐クエストに参加するにあたり課題が出されているようだ。
二人の必死な様子からして失敗した場合には何やらキツいペナルティが課せられているみたいだ。
そして、それを阻止するために二人は懸命に目の前の敵を一撃で仕留めていく。
「ダメだわ。コイツら弱過ぎ!マクスウェル、討伐数で勝負よ。負けた方は明日の打ち込み稽古中ずっと受け手よ!」
「いいですね。明日は一日僕の剣を受けてもらいますよ」
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小鬼の群れと遭遇してから三十分後 ────── 討伐完了。
結果的に六体の武装小鬼と五十体を超える小鬼のほとんどをミリアとマクスウェルの二人で討伐してしまった。
あっという間の出来事にスズネたちは唖然としてしまう。
今回のクエストは一応Cランクのクエストに設定してはあるものの、数も多いためBランクパーティであっても苦戦するのではないかと考えられていた。
しかし、結果は圧倒的であった。
しかも三十分もの間敵を斬り続けていたミリアもマクスウェルも息ひとつ乱していない。
むしろ修練前の準備運動くらいにしか思っていないような涼しい顔をしている。
「はぁ〜物足りないわ」
「確かに手応えのない奴らでしたね」
この一年半で明らかに強くなったミリアとマクスウェルの実力に驚愕するスズネたち。
今回のクエストについては、受付のマリからも十分に気をつけて臨むようにと念押しされていたため全員が長期戦を予想していた。
それがこの有り様である。
「わっちも強力な魔法を見せたかったのじゃ!」
「ウチらも強くなったんすけどね・・・」
「こ…今回は出番無しでしたね」
「ま…まぁ〜無事にクエストもクリアしたことだしギルドに戻ろっか」
こうして気合い十分で臨んだ久々の討伐クエストをあっさりと終えた宿り木。
その後も各自修練を積みながらクエストをこなしていくという生活が続くのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
一年後 ──────── 。
冒険者ギルドモア支部 〜 Bランク昇級試験会場 〜
Bランクへの昇級を目指し試験に臨むスズネたち。
二年半にも及ぶ修練の成果を発揮し試験官であるBランク冒険者たちを一蹴するスズネたち。
そして、最後の大トリとしてミリアが昇級試験に臨む。
「冒険者パーティ“星の雫”のリーダーでBランク冒険者のモリンソンだ。試験は俺に一撃入れられれば合格だ。ここから先のランクはこれまでとは比べ物にならない魔物や魔獣と戦わなければならないからな。半端な実力じゃ合格はさせられないぜ」
「はい、はい。御託はいいからさっさと始めてくれる?こっちは最強目指してんのよ」
「フンッ、生意気な嬢ちゃんだ。口先だけじゃないことを願うよ。いつでもかかって来な!!」
───────── シュンッ。
「へっ?」
「おっそ」
ガンッ!!!!!
圧倒的な実力差を見せつけて合格するミリア。
それでも本人曰くまだまだ全然ダメらしい。
それは師であるミロクからこれまでにたったの一本すら取ることが出来ておらず、しかもミロクはその実力の片鱗すらも見せてはいないのだという。
そんな日々を過ごしているミリアからすると今回の昇級試験は物足りないものであった。
まぁ〜何はともあれ無事に全員揃ってBランクへと昇級したスズネたち。
パーティランクもBランクとなり、今後受けられるクエストの幅も広がった。
そして、最後にマリから更新された冒険者カードが渡される。
「みんな、Bランクへの昇級おめでとう!聞いた話だとかなり余裕だったらしいわね」
「マリさん、ありがとうございます。なんとか合格出来て良かったです」
「またまた〜謙遜しちゃって」
「マリさ〜〜〜ん。もう全然ダメ!もっと強い人と戦りたかった〜」
「うふふふふ。ミリアは相変わらずね。それじゃ、冒険者カードの更新も済んだし返しておくわね」
こうして無事にBランクとなったスズネたちは、さらなる冒険に向けて確かな一歩を踏み出したのであった。
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冒険者ランク B
氏名:スズネ Lv.48 魔法師 / 召喚師
召喚獣:クロノ Lv.1
ラフネリアス(緑龍) Lv.580
所属パーティ:宿り木 (リーダー) Bランク
Bランククエスト達成回数 0/50
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冒険者ランク B
氏名:ミリア Lv.60 剣士
武具:炎帝の剣 Lv.25
所属パーティ:宿り木 Bランク
Bランククエスト達成回数 0/50
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冒険者ランク B
氏名:ラーニャ Lv.56 魔法師
召喚獣:ルドラ (グリフォン) Lv.320
所属パーティ:宿り木 Bランク
Bランククエスト達成回数 0/50
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冒険者ランク B
氏名:シャムロム Lv.63 大盾使い
武具:白月の大盾 Lv.350
所属パーティ:宿り木 Bランク
Bランククエスト達成回数 0/50
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冒険者ランク B
氏名:セスリー Lv.70 射手
武具:覇穹 Lv.189
所属パーティ:宿り木 Bランク
Bランククエスト達成回数 0/50
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最後までお読み頂きありがとうございます。
無事にBランクへと昇級を果たしたスズネたち。
これによって合同クエストなど積極的に参加出来るようになりました。
そして、ミロクの修行によって力を付け始めたミリアとマクスウェル。
この先二人はどこまで強くなるのか楽しみですね!
そして!そして!次回から新章開始です!!
次回『火種』
お楽しみに♪♪
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