新たなる力
「灰じぃさんが・・・剣聖ミロク様?」
メリッサから灰じぃが剣聖ミロクであると告げられたスズネたち。
剣士についての情報に疎いメンバーたちはピンときていない様子であったのだが、ミリアとファイングの二人だけは突如として現れた世界最強の剣士を前に驚きを隠せないでいた。
「師匠が何故ここに?」
「な〜にグリーンアイランドで龍族の異変を見守っておったんじゃが、それも無事に解決されたのでな。久しぶりに人里でも見ようかと思っただけじゃ」
「師匠!?現場にいたんですか?」
グリーンアイランドで魔族による大事件が起こされようとしていたとは聞いたが、まさかその現場に自身の師であるミロクがいたという事実にメリッサは驚いたのだった。
「見守っていたって…。師匠なら魔族の一人くらいなんとでも出来たでしょ」
「ワシはグリーンアイランドに四天龍の一角である“緑龍ラフネリアス”がいると知り、あの状態の島で龍族が暴走しないかを危惧しておっただけじゃからな」
「そ…そんな、ミロク様はラフネリアスを見殺しにするつもりだったんですか?」
セロフトによる三年にも及ぶ攻撃を受け続け、少しずつ弱体化していっていたラフネリアス。
その事実を知りながらあえて放置し続けたミロクに対し、怒りの気持ちは無いが理解することが出来ないスズネは胸の内にある率直な疑問をぶつける。
「ホッホッホッ。その通り、見殺しにするつもりじゃったよ」
「どうして・・・」
「すまないなお嬢さん。でもな、命というものはいずれ尽きるものなんじゃよ。そしてそこに早い遅いもなければ、良い悪いもない。形はどうであれそこまで生きたことがその命の運命であり役割なんじゃ」
ミロクが口にした言葉の本質を理解することは今のスズネたちには難しかった。
それでも目の前の偉大な剣士が何を言いたいのかはなんとなく分かった気がした。
それでも救える命が目の前にあるのなら出来る限りのことをしたい ────── 。
スズネはそう思った。
そして、それを察したようにミロクが話を続ける。
「さっき我が弟子よりも問われたが、ワシが先の出来事に参戦しなかったのは、この世界の流れに干渉するつもりがないからじゃ。お主らがどう考えておるのかは分からんが、ワシはヒト族が“善”であり魔族が“悪”であるとは思うとらん。そして、それは逆もまた然りじゃ」
ヒト族は魔族の力を恐れ、魔族もまた千年前の戦いに敗れた他種族の力を恐れている。
その恐れは誰もが持ち合わせているものではあるが、それは相手によるものではなく自分自身の心の内にあるものだとミロクは言う。
だからこそ、どちらが“善”でどちらが“悪”ということは決してないというのだ。
そして、それ故に自身がどちらかの側につくということはしないのだと ──────── 。
「アッハッハッ、さすがは師匠。その考えは昔から変わりませんね。しかし、我々も黙ってただただ殴られているわけにはいかないんですよ」
「それでは何も解決はせんよ。じゃがまぁ〜やれるだけやってみろ」
「無論そのつもりです」
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ミロクとの話を終えメリッサたちはいよいよ今回の本題へと入る。
一連の騒動に関してファイングから報告され、スズネの身に起きたことについてはミリアから報告がなされた。
そして、報告を受けたメリッサとリタは魔族によるヒト族への攻勢の準備が着々と進められているということに頭を悩ませつつも、命を落とした冒険者たちを思い心を痛めたのであった。
「一人の魔族にAランクを含む十五名もの冒険者が殺られるとは ───── 」
「ホント…まさかだよね。しかも、“モノリス”のナルセナといえばかなりの手練れだよ」
「付け加えて報告しますと、そのセロフトと名乗った魔族曰く自身はあくまでも先遣隊でありただの使いっ走りなのだと」
十五名もの冒険者を葬った者がただの使いっ走り。
それが事実がどうかは分からない。
それでもAランクの実力者を含めてたった一人に敗れたというのは事実である。
その衝撃は冒険者ギルドのトップに君臨する二人にとって凄まじいものであった。
そして、スズネの件に関しては ─────── 。
ギルドマスターであるメリッサですら聞いたこともないらしく、ましてや龍族と契約をしたなど信じることすら難しいように思えた。
「龍族との契約・・・。師匠は何かご存知ですか?」
「・・・。いや、すまん。ワシにも分からんな」
「そうですか」
こうしてメリッサとリタへの報告を終えたスズネたちは、まだ話があるというミロクとファイングを残し、今回のクエスト報酬を受け取るために受付へと場所を移した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「みんな今回はお疲れ様。まさか魔族が現れるなんて。でも、みんなが無事に戻って来られてよかったわ」
「マリさん…ありがとうございます」
受付でマリから労いの言葉を受けるも素直に喜ぶことが出来ないスズネたち。
そして、スズネたちの冒険者カードが更新される。
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冒険者ランク C
氏名:スズネ Lv.33 魔法師 / 召喚師
召喚獣:クロノ Lv.1
ラフネリアス(緑龍) Lv.580
所属パーティ:宿り木 (リーダー) Dランク
Cランククエスト達成回数 38/100
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冒険者ランク C
氏名:ミリア Lv.42 剣士
武具:炎帝の剣 Lv.22
所属パーティ:宿り木 Dランク
Cランククエスト達成回数 38/100
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冒険者ランク C
氏名:ラーニャ Lv.37 魔法師
召喚獣:ルドラ (グリフォン) Lv.320
所属パーティ:宿り木 Dランク
Cランククエスト達成回数 38/100
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冒険者ランク C
氏名:シャムロム Lv.46 大盾使い
武具:白月の大盾 Lv.350
所属パーティ:宿り木 Dランク
Cランククエスト達成回数 38/100
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冒険者ランク C
氏名:セスリー Lv.65 射手
武具:覇穹 Lv.189
所属パーティ:宿り木 Dランク
Cランククエスト達成回数 38/100
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「新しいジョブが増えてる!」
「え!?どれどれ、見せてよスズネ」
「ウチも見たいっす」
「「「召…喚…師…?」」」
「って、なんすかね?」
「まぁ〜普通に考えたら魔獣とかを召喚出来るってことじゃないの?」
「ゴメンね。私も長く冒険者ギルドで仕事してるけど、調教師は見たことあるけど召喚師は見たことも聞いたこともないわ」
マリの言葉から推測するに、同じ魔獣を使役するジョブとはいっても調教師と召喚師では全くの別物であるようだ。
そして、その言葉にますますよく分からなくなるスズネたちなのであった。
「やっぱりラフネリアスと契約したからなのかな?」
「そう考えるのが妥当でしょうね。っていうかラフネリアスのレベル高っ!?」
スズネの冒険者カードに新しく追加された『召喚師』というジョブ。
クロノとは別にラフネリアスと新たに契約したことで発現した力であることは間違いなさそうではあるが、その実態は謎であると言わざるを得なかった。
「お師匠様なら何か知っておるかもしれんぞ」
その時、悩めるスズネに対しラーニャが声を掛ける。
それは自身の師である大魔法師マーリンであれば召喚師について何か知っているかもしれないということであった。
「確かに!三百年以上生きているマーリン様なら何か知ってるかもしれないわね」
「三百年も生きてるんすか!?」
「そ…それは本当にヒト族なのですか?エルフ族を超えるほどの長命ですよ」
「ワッハッハッハッハッ。わっちのお師匠様じゃからな」
「理由になってないわよ」
「アハハハハ。ありがとねラーニャちゃん。今度マーリン様の所へ行ってみるね」
ラーニャからの提案を受けスズネは後日マーリンの元へ話を聞きに行くことに。
そして、ミリアとマクスウェルもまたあることを考えていたのだった ──────── 。
最後までお読み頂きありがとうございます。
新たにスズネに発現した『召喚師』というジョブ。
この力は今後彼女にどのような運命を歩ませるのか。
今後のスズネたちの冒険と活躍にご期待ください!
次回『志願』
お楽しみに♪♪
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