最強の座
ミリア&マクスウェル対魔人の戦いが始まった。
二人の剣撃に対して長く伸ばした両手の爪を剣のようにして応戦する魔人。
ミリアの炎を纏った力強く重い攻撃とマクスウェルによる剣速の早く鋭い攻撃という異なる剣撃を驚異的な動体視力で捌いていく。
そして、魔人に休む間を与えないように攻撃を続ける二人が押しているかと思われたが、突如魔人の両脇から一本ずつ新たな腕が生えたのだった。
「はぁ?そんなのアリ?反則でしょ!!」
「無駄口叩かないでください。来ますよ」
これによって戦局が大きく変わる。
器用に四本の腕で攻撃を繰り出す魔人を前に劣勢を強いられるミリアとマクスウェル。
そんな二人を援護すべくセスリーが矢を放つが、以前にその攻撃によって両眼を潰されている魔人は予期していたかのように矢を躱した。
そして、ミリアとマクスウェルに疲れが見えた一瞬の隙を突いてセスリーに襲い掛かる。
ドンッ!!
!?
瞬く間に距離を縮めて目の前に現れた魔人に驚き怯えた表情を見せるセスリー。
そして、魔人による凶刃がセスリーを襲う。
「キャッ!!」
─────── ザンッ。
虚を突かれたセスリーは魔人の攻撃を回避しきれず血を流してその場に崩れ落ちる。
「お主…よくも!!苛烈なる業火を以って、敵を討ち倒せ ───── 火球」
セスリーが倒れたことに激昂したラーニャが力任せに魔法を放つが、魔人も黒炎弾を放ちこれを相殺する。
そして、ラーニャが続けて魔法を放とうとしたのだが、次の狙いをラーニャに定めた魔人の強烈なタックルを受けて弾き飛ばされ気を失ってしまった。
あっという間に三人がやられてしまい混乱を見せるスズネたち。
「スズネさん、急いでセスリーの治療を」
マクスウェルから指示を受け、スズネは急いで傷を負ったセスリーの回復へと向かう。
そして、疲れが残る中で再び魔人との戦闘に入るミリアとマクスウェルであったが、疲労の色が隠せない二人に先程までの切れ味はなかった。
その光景に高笑いをし、ご満悦な表情を見せたメイニエルはザザにさっさと片付けるようにと促す。
ここから魔人による猛攻を受けつつも、何とかそれに耐えながら少ない隙を見つけては反撃に出る二人。
しかし、魔人を討つための決定的なモノを見出せないまま時間だけが過ぎていったのだった。
ここで意識を取り戻したシャムロムが同じく意識の戻ったラーニャを肩で支えながらスズネの元へ合流した。
「あっ!二人とも無事だったんだね。良かった〜」
「スズネ、セスリーの容体はどうっすか?」
「うん、もう大丈夫そう。出血も止まったし、呼吸と脈も安定したからね。それじゃ、次は二人を回復するよ」
そう言ってセスリーの傷を癒したスズネが続けてラーニャとシャムロムに回復魔法をかけようとしたのだが、二人はこれを拒否する。
「待つのじゃスズネ、わっちらは大丈夫じゃ。それよりも ───── 」
「そうっす、ウチらは大丈夫っす。スズネの魔力も残り少ないんすから、今はウチらよりもミリアとマクスウェルを回復させるっすよ」
二人の言葉を受け入れたスズネは急いでミリアたちに回復魔法をかける。
「サンキュー、スズネ」
「助かります。これで、まだ戦えます」
全快とまではいかなくとも傷が癒え体力も回復した二人は、今が攻め時だと感じ最大出力で魔人へと斬り掛かった。
そして、ほぼ同時に相対する二本の腕を斬り落とすと、そのまま前後へ分かれて魔人の胴体へ斬撃の雨を浴びせる。
二人の気迫のこもった猛攻を受けて苦しそうな表情を浮かべた魔人は、耐えきれずに両膝をつき蹲ってしまう。
ここでミリアとマクスウェルはこのチャンスを逃すまいと渾身の一撃を放つ。
「唸れ、炎帝の剣!!」
ミリアの声に応じるように剣が纏っていた炎がより一層大きくなり激しさを増す。
そして、空高く飛び上がると空中で前方に一回転し、その遠心力によって威力を増した斬撃を打ち込む。
それと同じくマクスウェルも両手に持つ剣を頭上高くに構え、上段より一気に振り下ろす。
「くらえ!! ───── 火輪」
「終わりです ───── 兜割り」
二人による強力な攻撃を受け、綺麗に真っ二つにされた魔人は力無く崩れ落ちたのだった。
「おい!何をしている。さっさと立て、ザザ。お前みたいな役立たずのために一体どれだけの時間と労力を費やしてきたと思ってるんだ。この能無しめ、私が立てと言ったら立て!!」
全く動かなくなった魔人。
慌てた様子を見せながら罵詈雑言を浴びせるメイニエル。
こうして魔人との戦闘を終え、疲れ切った様子を見せるミリアとマクスウェルであったが、気力を振り絞り立ち上がるとメイニエルの元へと歩き始めた。
「来るな・・・来るなーーーーー」
大声で叫ぶメイニエルの言葉などに聞く耳を持つはずもなくズンズンと歩を進める二人。
そして、そんな二人の姿に怯えながら後退りしたのち、腰を抜かしたように尻餅をついたメイニエルの前にミリアとマクスウェルが立つ。
「もう逃げられませんよ。大人しく投降してください」
「ったく、手間取らせんじゃないわよ」
やっと終わった ───── と誰もが思ったその瞬間に、追い詰められていたメイニエルが頬を緩ませニヤリと笑みを浮かべたのだった。
「クックックックックッ」
「何がおかしいんですか」
「追い詰められて気でも触れたんじゃない?」
メイニエルが浮かべた笑みの意味が分からず、不思議がる二人に大きな影がかかる。
??? ───── 。
それに気づいた二人が後ろを振り抜くと ───── なんと、そこに先程討ち取った魔人の姿があったのだった。
「ウ…ソ…でしょ・・・」
バン!! ─────── ドーーーン 。
魔人による横殴りの強烈な張り手をくらい吹き飛ばされた二人。
直撃を受けたマクスウェルは息を切らしながらも懸命に戦う意思を見せるが、全身が痺れている上に足がガクガクと震えており、もはや立ち上がることも難しそうであった。
そして、ミリアもまた吹き飛ばされた際にマクスウェルを受け止めたまま壁にぶつかり肩を痛めていた。
万策尽きた・・・。
パーティ全員が肩で息をしており、誰の目から見てもスズネたちが満身創痍なことがひと目で分かるほどであった。
そして、そのことは相対するメイニエルにも十分に伝わっていた。
「ここまでのようだな。まぁ〜新人冒険者にしてはよくやった方だろう。王都にいた兵士たちに比べると随分と健闘したものだ」
自身の創り出した魔人の強さに確信を得てご満悦なメイニエルであったが、ここで最大のミスを犯す。
スズネたちを蹴散らした魔人の力を過信し、欲を出してしまったのだ。
「こんなガキどもに王都の兵士や聖騎士をいくら片付けたところで何の意味もない。そろそろ聖騎士団を率いる十二の剣辺りでも ───── と言いたいところだが、ちょうど目の前に良い相手がいるじゃないか」
メイニエルの言葉が意味する相手とは ───── もちろんクロノのことである。
長い魔族の歴史において歴代最強と云われる魔王クロノを討ったとなれば、魔人の実力も自身の秀逸さも証明されることとなる。
今のメイニエルにとって、これほどまでにうまい話はない。
「おい、魔王クロノ。貴様もこんなガキどもの子守りには飽き飽きしていた頃なんじゃないか?今ここで貴様と私が創り上げた魔人ザザとで本当の最強を決めようじゃないか」
「あ?別に俺は俺の目的のためにこいつらと行動してるだけだ。お前ごときにとやかく言われる筋合いなどない」
「ハッハッハッ、どうやら魔王クロノは子供好きなようだ。まぁ〜いい、貴様の都合など知ったことか、私の願いを叶えるために死ぬがいい」
そう言うと、メイニエルはザザにスズネたちへの追撃を止めさせたのだった。
「はぁ〜・・・。ちょっと頑丈な玩具を手に入れたくらいでよくそこまで粋がれるもんだな、おっさん」
「減らず口はその辺にしておけ。無数の力と無限の再生能力を持つ我が魔人こそが最強なのだ」
「まぁ〜何でもいいけどよ。そろそろ腹も減ってきたしな。おいスズネ、こいつ片付けちまうけど良いよな?」
「えっ!?あっ…うん。でも、ザザ君は ───── 」
スズネの問い掛けに対してクロノが答えることはなかった。
そして、その時にクロノが見せた表情からスズネたちはザザを元の姿に戻すことが叶わぬことなのだと悟ったのだった。
そんなスズネたちの悲しげな様子に嬉しそうな表情を見せるメイニエル。
「だから、最初から無理だと教えてやっただろう?これだから頭の悪いやつは嫌いなんだ」
「おい、何でもいいからさっさとやろうぜ。この魔王クロノが直々にお前の頭の悪さを教えてやるよ」
「フンッ、貴様の最強の座も今日で終わりだ。八つ裂きにしてやれ、ザザ!!」
こうして魔人ザザと魔王クロノによる“最強”を賭けた戦いの幕が開ける ─────── 。
最後までお読み頂きありがとうございます。
この度『魔王召喚 〜召喚されし歴代最強〜』のPV数が2000を突破致しました。
これも全て毎週更新している作品を読んで頂いている読者の皆様のおかげであり、感謝の言葉しか出て来ません。
ここからまた3000、4000、5000と皆様に読んで頂けるように面白い作品にしていきたいと思います。
今後とも応援のほど宜しくお願い致します。
次回『魔人vs魔王』
お楽しみに♪♪
少しでも“面白い”、“続きが読みたい”と思って頂けたら、
『ブックマーク』
『☆☆☆☆☆』評価
『感想』
を頂けたら幸いです。
読者の皆様の評価・ご意見・ご感想がモチベーションにも繋がりますので、何卒応援よろしくお願い致します!!




