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魔王召喚

スズネが石版に両手をかざすと魔法陣の周りにバチバチと電気のようなものが走る。

そして、さっきまで雲ひとつない晴天だった空が一気に赤紫色の曇天へと変わり始め、それと同時に薄暗い紫色の煙が魔法陣の中を覆い尽くしていく。


あまりの状況の変化に会場中から動揺の声が漏れ始める。



「なんだ?なんだ?」

「何だか気味が悪いわね」

「悪魔とか出てくるんじゃね?」


「皆の者、落ち着くんじゃ!!」



ヴォルディモア校長の一言で会場が静まり返った次の瞬間・・・


バリバリバリバリ ──────


魔法陣の中に雷が落ちる。

さらに落ちた雷の勢いによって魔法陣の中を覆い尽くしていた煙が吹き飛ばされ、中から一人の男が姿を現した。


パッと見た感じだと20代前半くらいに見えるその男は、何かの骨を繋ぎ合わせて作られた椅子に腰を掛け、全てのものを見下すような視線を会場に向ける。



「なんだお前らは?頭が高い。全員跪け」



男が言葉を発すると同時に会場中の空気が一気に重くなり、全員が何か目に見えないものに押し潰されるかのように膝と両手を地面につけ頭を下げる体勢を半ば強制的にとらされる。

そんな中でただ一人必死に圧力に耐えその場に立つ者がいた。

ヴォルディモア校長である。



「お主はいったい何者じゃ?」


「あ?なんだお前は、どこから湧いで出た」



ヴォルディモアの問い掛けに対し不機嫌さを一切隠すつもりのないその男は、さらに圧力を強めその場にいる全ての者たちを威圧した。



「知らんようなら教えてやろう。俺の名はクロノ、魔族を統べる王である!!」



!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?



会場中の空気が凍りつく・・・


誰もが状況を整理できておらず、ただただ恐怖に震えている。


それもそのはず。

1000年前に勇者が魔王を討伐して以降、魔族が侵攻してくることなど一度も無く、魔族はガルディア王国の南にある精霊の森を越え、さらに南に位置する魔族領で静かに暮らしていると思われていたからである。

ただその凶暴性と圧倒的な力は1000年経った今でも語り継がれていたのであった。



「おぬしが魔王クロノか・・・」


「なんだジジイ、この俺を知っているのか?」


「近年魔族の力が強大になってきておって、その活動も以前と比べてかなり活発化してきていると王国及び冒険者ギルドから連絡があってのう。その要因が、これまでに類を見ない程の圧倒的な力を持ち、歴代最強と言われるクロノという新たな魔王の存在だと・・・」


「ほう、まさか人族にまでも知られていたとはな。まぁ〜他のやつらについては知らん。興味も無いし、好きにさせているだけだからな」



クロノという名の魔王は、時折退屈そうな素振りを見せつつヴォルディモアとの会話を続ける。

しかし、その間にも会場を覆う強大な圧力は少しずつそして確実にその重圧を増していく。



「ヤバい・・・押し潰される・・・」


「もう・・・ダメ・・・」



会場中の人間が凄まじい殺気による恐怖と重くのしかかる重圧に苦悶の表情を浮かべながら声を漏らす。

そんな状況でさえ、魔王は気にも止める様子はない。



「まさか、これほどであったとはのう・・・」


「そろそろこの状況にも飽きてきたな・・・お前ら全員死んどくか?」



凍てつくような魔王の殺気がさらに強まり、恐怖に震える500人余りの人間全員に等しく突き刺さる。



「待つんじゃ!!」


「あ?この俺に指図するんじゃねぇよジジイ。お前から殺すぞ」



そう言うと、ヴォルディモア校長の周りだけさらに圧力が増し、さすがに耐えかね片膝をつく。



「さぁ〜茶番は終わりだ!!お前ら全員、美しくあかに染まれ」



会場中の人間が自らの命を諦めかけたその時、一人の少女が魔王の前に現れたのだった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



えっ!?口づけって何?

どこにすればいいの?

そんなの初めてだし、やり方も分かんないし、そもそもどんな魔獣が出てくるかも分かんないのに、ぶっつけ本番って何なのよー!!



「あ〜もうやだよ〜〜〜」



バリバリバリバリ ──────



ざわざわ・・・


ざわざわ・・・



あーーーもう、うるさいうるさいうるさい。

こっちはさっきみさいな失敗をしないように集中してるんだから、ちょっと静かにしててよ〜。


会場が今どういった状況になっているのか・・・

そんな事もつゆ知らず、スズネは完全にテンパっていた。


落ち着け〜

落ち着け〜

落ち着け〜


他の人はどうしてたっけ?

なんか自然な感じでサラッとしてたような気がする。

そうよ、私が変に考え過ぎちゃってただけだよね。

魔獣が出てきたら、サッと近づいて行っ・・・

えっ!?もう召喚されちゃってる!!

また恥をかかないように急がきゃーーー



タッタッタッタッタッ ───── 。



はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

目の前まできたのはいいけど、この魔獣なんで人型なの?

しかも椅子に座ってるし、なんか怒ってるっぽいし。

きっと待たせ過ぎたんだーーー。



「口づけ・・・口づけ・・・」


「ん?なんだお前は」



もう迷ってなんかいられない!!

いっけーーーーーーー。


次の瞬間、二人の唇が重なる ───── 。


唐突のことに目を見開く魔王。

余りの衝撃に空いた口が塞がらないヴォルディモア校長。

突如として重苦しい重圧から解放された会場の人々は眼前に映る光景に唖然としている。



─── スズネの召喚魔法契約が完了しました ───



「ふぅ〜これで無事に契約完了っと」



ただ一人、スズネだけは無事に契約を完了させたことにホッとし、安堵の表情を浮かべる。



「あっ!!この度あなたと生涯のパートナーになりましたスズネと申します。これから宜しくお願いしますね」



満面の笑顔を見せるスズネであったが、顔を真っ赤にした目の前の男に頭を鷲掴みにされる。



「オ・マ・エ・・・いったいなんのマネだ?」



あれ?

なんか完全に怒らせちゃってない?



「あ・・あ・・あの・・・すみません、すみません。そりゃ〜いきなり呼び出されて、その上キ・・キ・・キスまでされたら驚きますし、困りますよね。でも安心してください。契約は無事に完了しました!!」


「あっはっはっはっは。そうかそうか、無事に完了したのか」


「あはははは。そうなんですよ〜緊張しましたけど、なんとかなりました」



そんな仲睦まじい穏やかな空気が流れたのは・・・ほんの一瞬だけであった。



「お前・・・よっぽど死にたいらしいな」



えっ!?えっ!?なんでそうなるの〜〜〜。



「お前もろとも全員消し炭にしてやる」



そう言って魔王が右手を空へ翳すと、上空に巨大な魔法陣が描かれ、超巨大な炎の玉が現れる。

落ちればモアの街全てが吹き飛ぶことは明白であった。



「この俺を怒らせたことを後悔するがいい ────── 死ね 」



そして、魔王クロノが空へ翳した右手を振り下ろそうとしたその瞬間 ───── 。



「ダメーーーーーーーーーー!!!!!」



スズネの悲痛な叫びと共に、魔王は凄まじい頭痛に襲われる。


ビキビキビキビキッ ─────



「グッ・・・」



そして一瞬の内に魔法陣と超巨大な炎の玉は消え去り、曇天だった空も嘘のように快晴へと姿を変えた。

そんな中、魔王はあまりの激痛に顔を歪めるのであった。



最後までお読み頂きありがとうございます。

いよいよ魔王クロノが登場しました!!

スズネの契約はどうなってしまうのでしょうか。


次回『天使と悪魔』

お楽しみに♪♪


少しでも“面白い”や“続きが読みたい”と思って頂けたら、

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読者の皆様の評価・ご意見・ご感想がモチベーションにも繋がりますので、何卒応援よろしくお願い致します!!


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