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召喚の儀

イェーニル大戦より1000年後、ここはガルディア王国にある中間都市のひとつモア。

この街に住む一人の少女によって、世界を巻き込む運命の歯車が動き出す ─────




「スズネ〜。そろそろ急がないと時間だよ」


「はーーーい。よし、準備完了っと!!」



今日、私は卒業式を迎える。

小さい頃に両親を亡くした私を引き取り、ここまで育ててくれたのはおばあちゃんだ。

昔は結構名の知れた冒険者だったみたいだけれど、私を引き取る際に引退したらしい。

今はここモアの街で一番の薬師として有名になってはいるけど、私だって素材集めとかして何とかおばあちゃんの力になりたい!!

今日はその夢への第一歩となる日なのだ。



「おはよう、スズネ。昨日はちゃんと眠れたかい?」


「おばあちゃん、おはよう。もうバッチリだよ!!」


「それにしても本当に悪いね。せっかくの卒業式だってのに見に行ってやれなくて」



街一番の薬師なだけあって、祖母ロザリーへの依頼や注文は絶えない。

今日も本当は孫の晴れ姿を見に行く予定であったが、急な依頼により断念せざるを得なくなってしまったのだ。



「いいって、いいって。お客さんからの依頼なんだからしょうがないよ。それよりも、いよいよ卒業したら私もおばあちゃんの仕事の手伝いが出来るね」


「おやおや、まだそんなこと言ってるのかい。一度きりの人生なんだ。あんたは自分の人生を思う存分生きればいいんだよ」


「へへっ、私がそうしたいんだよ」



快晴の空に燦々と輝く太陽、春の爽やかな風と共に温かな光が窓から差し込んでくる。



「はぁ〜今日も良い天気だなぁ〜」


「スズネ!あんたそろそろ出なくていいのかい?」


「えっ!ヤバっ!?もう行かなくちゃ」



ヤバいヤバい、こんな大事な日に遅刻とか洒落にならないよー。

荷物はOK!制服もOK!腕章もOK!

そして、最後に棚の上に置いてある写真の二人に手を合わせる。



「お父さん、お母さん、行ってきます」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



いや〜ホントに良い天気だ。

まさに卒業式日和〜って感じで心が躍り出しそうな気分。

学校までの道すがら意気揚々と歩いていると後ろから声がする。



「スーズーネーーー」



真っ赤な髪を後ろでギュとまとめぴょんぴょんと跳ねさせながら、端正な顔立ちの美少女が駆け寄ってくる。

幼馴染のミリアだ。



「おはよう、ミリア。朝から元気だねー」


「おはよう。あんたこそサラッサラの黒髪にふんわりしたボブカット。いつもの事ながら、堪りませんな〜」


「朝から何おじさんみたいなこと言ってんの。今日は大事な卒業式なんだからしっかりしてよね」


「はっはっはー、何を今更。首席卒業のアタシに恐いものなんてないわ!!」



ミリアはいつも明るく、よく落ち込んだりする私を励まし元気付けてくれる。

物事はハッキリと言うタイプであり、剣術・体術に関して言えば天才的なセンスを持っている。

自信家ではあるけど、奢ることなく誰に対しても分け隔てのない人柄で男女問わず学校の人気者。

戦闘における実力については、私たちが通うサーバイン戦闘専門学校においても歴代トップクラスの成績で卒業を迎えるほどだ。



「さすがだね〜。私なんてギリギリでの卒業だったからヒヤヒヤだったよ〜」


「あんたは稀少な回復魔法持ちなんだから大丈夫よ。まぁ〜なんだかんだ言って、ウチの学校って厳しいからね。二人揃って卒業できて良かった良かった」



───────────────────────────────────



【サーバイン戦闘専門学校】

戦闘に特化した学校であり、体術や剣術などを使う戦士、魔法を使う魔法師の育成機関である。

基礎的な体術や魔法、戦術の訓練や座学は全員学ぶが、より実践的なものに関しては、それぞれが戦士または魔法師を選択することによって分けられる。

その門を叩く者は数多くいるが、必ずしも卒業できるというわけではなく、卒業者0人という年も珍しくない。

その名前の由来は、1000前に起こったイェーニル大戦において魔王を討伐した『勇者サーバイン』の名からきている。




「それでは、これより本年度の卒業式を始める。本年度は、本校において他に例を見ない程の豊作であり、見事15名の者が卒業する運びとなった。これはわし自身にとっても、本校にとっても、大変喜ばしいことである」



おお〜いつにもなく校長先生の気合いが入っている。

普段はのほほんとしたおじいちゃんって感じだけど、今日は噂に違わぬ大魔法師って雰囲気が出まくってるな〜。

ヴォルディモア校長は、今でこそサーバイン戦闘専門学校の校長をしているけど、昔はSランク冒険者として名を馳せた大魔法師だ。

ウチのおばあちゃんとも知り合いらしく、あばあちゃん曰く“昔のアイツは力任せの魔法ばかりで私の足元にも及ばなかった”らしい・・・


あーさっきまで平気だったのに、急に緊張してきたーーーーー。



「それでは、卒業者には順番に『召喚の儀』を執り行ってもらう。呼ばれた者は前に出てくるように」



召喚の儀とは、サーバイン戦闘専門学校を卒業する者に対して、それぞれ専用の武具や魔獣を召喚し、それを卒業の証として与える為の儀式である。

戦士には武具が与えられ、魔法師には魔獣が与えられる。

召喚した武具には自身の血を与え、魔獣には口づけをすることで契約が完了となる。



「それでは、首席卒業ミリア」


「はい!!」



うわー始まったー。

ミリア頑張れーーー。



壇上へ上がったミリアに校長が石版を差し出す。

ミリアがその石版に両手をかざしすと、壇上の中央に描かれた魔法陣が輝きだした。

そして次の瞬間、天に突き刺さる程の真っ赤な炎の柱が現れる。


おお〜〜〜〜〜。

会場から感嘆の声が漏れる。


炎の柱が消えると魔法陣の中央に一本の真紅に輝く剣が現れた。

校長がその剣を取りスキル【鑑定眼】を使う。



「おお〜これは・・・。この剣は【炎帝の剣】じゃ。火属性に特化した攻撃力抜群の一振り。ミリアの戦闘スタイルにもよく合うじゃろう。大切にするんじゃぞ」


「ほうほう、【炎帝の剣】か〜。攻めて攻めて攻めまくる私にはピッタリの武器ね!!」



ミリアは剣先で自身の親指を少し切り、血を吸わせる。



─── ミリアの召喚魔法契約が完了しました ───



会場内に契約完了を知らせる声が響き渡る。

炎帝の剣を手にしたミリアはとても嬉しそうだ。

あ〜私にも良い感じの可愛い魔獣が出ますようにーーー。




そして、その後も順調に召喚の儀は進んでいき ───── 。



「それでは、最後にスズネ」


「は、は、はい!!」



あーどうしよう私の番だ。

何をどうするんだっけ??

まずは前に出て、壇上に上がって、それから・・・それから・・・。



「ん?大丈夫かね?スズネ君」



ハッと我に返ったら目の前に校長先生が・・・!?



「ふぁい!大丈夫であります!!」


「「「あはははははははは」」」



会場中から笑い声が発せられる。

ふえ〜ん。

やらかしてしまった〜。

恥ずかしすぎるーーーーーー。



「フォッフォッフォ、そう緊張することもあるまい。まずは深呼吸をして、落ち着いたらこの石版に両手をかざしなさい」



スーーーーーッ


フゥーーーーー


スーーーーーッ


フゥーーーーー


よし!!


心を落ち着かせて、石版に両手をかざす。



「おう、そうじゃ。魔獣を召喚したら契約の為の口付けを忘れんようにな」



へっ?口付け??

あっそうだ!口付けのこと忘れてたーーー。

っていうか、なんでこのタイミングで言うのよーーーーー。



最後までお読み頂きありがとうございます。

スズネは、だいぶテンパってましたね。

無事に召喚の儀を成功させられるのでしょうか。


次回『魔王召喚』

お楽しみに♪♪


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