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乱入者

ガキーーーーーンッ!!


目の前が黒に覆われ真っ暗となり死を覚悟したシャムロムであったが、自身に襲いかかった凶刃は甲高い音と共に弾き返される。



「ちょっ…アイツいつの間に距離を詰めたのよ」


「全く見えなかったね・・・。ありがとうクロノ」



シュンッ、シュンッ ────── ザッ、ザッ、ズザザザザッ。


瞬きをする暇さえも与えることなく一瞬のうちに距離を縮めてスズネたちへと襲いかかったキャスパリーグ。

奴にとってはそれで全てが終わるはずだった。

しかし、目の前に並び立つ小さく脆弱な者たちの命を刈り取るために繰り出した一撃は何者かによって阻まれた。

その予想外の出来事に警戒を強めたキャスパリーグはすぐさま距離を取り直したのだった。

もちろんそんなことができる者などこの場において一人しかいない。

スズネたちが何もさせてもらえない中、クロノだけはその動きを捉え、敵の攻撃が届くよりも前に瞬時に魔法防壁を展開したのだ。


グヴヴゥゥゥゥゥ ──────── 。


再び距離を取ったキャスパリーグはクロノに向けて明確な殺意を向けながら唸り声を上げる。

そのように圧をかけ続けてはいるものの、彼もまた想定外の出来事を前に少しばかりの混乱を抱えていた。

確実に目の前の標的を仕留めたはず。

警戒するような存在も確認できず、一瞬で距離を縮め自慢の鉤爪を一振りすれば全滅させられると思っていた。

しかし、そうはならなかった。

繰り出した一撃が標的に当たる寸前のところで何かにぶつかり邪魔をされたのだ。

その瞬間に彼の中で目の前の標的への警戒度が一段階上がり、それが何なのかを確認するためにも距離を取り観察を始めたのだった。



「なんだ?Sランクってのはこの程度なのか。もしそうなら・・・興醒めだな」



最高ランクの魔獣。

数多く存在する魔獣の中で最高位の者を目にし、少しばかりの興奮を覚えていたクロノであったのだが、その攻撃は彼の予想を上回るほどのものではなかった。

しかし、当然キャスパリーグとしても今の一撃が本気であるはずもなく、単眼巨人(サイクロプス)たちを一掃したことすらも彼にとっては準備運動程度のことであった。


グヴヴゥゥゥゥゥ ──────── 。


そして、ここからキャスパリーグによる猛攻が始まる。



ブンッ ──────── ズボッ・ズズズズズッ。



「なっ…なんすかアレ!?前足が地面の中に入ったっすよ」



キャスパリーグが大きく右前足を振り上げ勢いよく地面に向かって振り下ろすと、前足は沈むように地中へと入っていった。

そして、スズネたちがその光景に目を奪われていると後方から甲高い音が聞こえてきた。


ギンッ ───── ギギッ…ギギギギギッ…。


音につられ慌てて後方へと振り返った彼女たちが目にしたのは、空中に現れた黒い円の中から飛び出したキャスパリーグの前足が自分たちを守る魔法防壁を攻撃している光景であった。

その鋭い鉤爪で防壁を引っ掻くように削っていく。

そして、もちろん攻撃はそれだけでは終わらない。


ヒュンッ ───── ガキンッ。


ヒュンッ ───── ガキンッ。


ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ ───── ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ。


前後左右に空中からとありとあらゆる方向から鋭く尖った黒い影がスズネたちへと襲いかかる。

目にも留まらぬ速さに加え、手数の多さに一撃一撃が殺傷能力の高い威力を誇っており、彼女たちは魔法防壁の中でただただ圧倒されることしかできなかった。

それは暴嵐のごとき攻撃。

戦局はまさに防戦一方。

しかし、そんな状況の中でもクロノはスズネたちを守りながらも反撃に転じようと魔法を放っていく。



「チッ…クソ猫が!調子に乗りやがって ───── 風刃(ウインドカッター)



ヒュンッ ──────── 。


放たれた風の刃がキャスパリーグ目掛けて一直線に飛んでいく。

その威力、スピードと申し分なし。

そして一切の躊躇なく敵の首元へと襲いかかる。


ブシュッ ──────── 。



「や…やった!」


「でかしたわよクロノ!!」


「さすが旦那様なのじゃ」



クロノが放った強力な一撃によってキャスパリーグの首が切り落とされた・・・と誰しもが思った。

しかし ──────── 。



「いや…喜ぶには早いようだ」



ブシュッ ───── ユラユラ…ユラユラユラ…フワンッ。


敵の撃破に喜びを表すスズネたちであったのだが、クロノの言葉が示す通り攻撃を受けたキャスパリーグが不自然な動きをみせ始める。

切り落とされたかと思われた首元がゆらゆらと揺れ始め、それに続くようにしてキャスパリーグの姿が霧のように消えたのだった。

それはまるで幻であったかのように。


スーーーーーッ。



「こちらです!暗闇の中から急に姿を現しました」



マクスウェルの声に反応して視線を向けると、そこには先ほどまで目の前にいたはずのキャスパリーグの姿があり、すでに次の攻撃へのモーションに入っていたのだった。


ブンッ、ブンッ ────── ガリガリッ、ガリガリガリッ。



「うわぁぁぁぁぁ」



突然自分目掛けて振り下ろされた巨大な前足に驚き、大きな声を上げながらバランスを崩して尻もちをついてしまうスズネ。


ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ。



「痛たたた…」


「ちょっとスズネ大丈夫?」


「うん。ちょっとびっくりしただけ」



スーーーッ ──────── ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ。


スーーーッ ──────── ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ。


クロノの存在を警戒したのか、そこからのキャスパリーグの戦い方は徹底されていた。

数回の攻撃を加えては闇に隠れるように姿を消すというヒット&アウェイを繰り返す。

それに対してなかなか敵の姿を捉えることができず、次第にイライラを募らせていくクロノなのであった。



「あ〜クソッ!ちょこまかちょこまかと煩わしい。 ───── 風刃乱舞(ウインドストーム)



ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ ──────── 。


フワンッ、フワンッ、フワンッ、フワンッ、フワンッ ──────── 。



いくら攻撃をしても霧のように姿を消す相手に少し意地になって魔法を放ち続けるクロノであったのだが、その苦労も虚しくなかなか効果は表れない。

そして、闇雲な攻防を続ける両者が睨み合いを続けていると、どこからともなく声が聞こえてくる。



「やれやれ、両者ともまだまだ戦い方というものがなっていないな」



その声は天井より陽の光を取り込んでいる穴の方から聞こえてきていた。

落ち着いた雰囲気をした聞き取りやすく穏やかな声。

そして、それを耳にしたスズネたちが声の主へと視線を向けた時、その者はそこから華麗に飛び降りてクロノとキャスパリーグの間に割って入ったのだった。



─────────────────────────



天井より伸びる一筋の光。

それがスポットライトのようにその者を照らす。

黒のタキシードに黒いハットを被り、首元には赤い蝶ネクタイ、手には木製のステッキを携えている。

その姿はまさに上流階級の紳士そのものであった。


突如として現れ、クロノとキャスパリーグの戦いに乱入してきた謎の人物。

しかし、その者はヒト族ではない ───── おそらくは獣人族。

そう、目の前に現れた紳士は白い猫の姿をしていたのだ。

そして、その訳も分からぬ状況を前にしてその場にいた全ての者が呆気にとられていたその時、沈黙を破るようにスズネが声を上げる。



「ジークさん?」


「おお!やはりスズネであったか。なんとも懐かしい匂いがしてな。まさかとは思ったが・・・いやはや会えて嬉しいぞ」






最後までお読み頂きありがとうございます。

突如としてスズネたちの前に現れた白猫の獣人。

クロノとキャスパリーグの戦いを見て、まだまだだと言う彼の実力や如何に。

そして、ジークと呼ばれた彼とスズネの関係とは。


次回『自己分身(ドッペルゲンガー)

お楽しみに♪♪


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