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モンナケルタ

ザッザッザッザッ ──────── 。



「フーーー、やっと着いたわね」



ホームを出発してから二時間後、スズネたちはようやく今回のクエスト場所であるモンナケルタへと辿り着いた。

そして、到着を喜びつつ彼女たちが目の前に聳え立つ大きな山を眺めていると、シャムロムがポツリと言葉を漏らす。



「なんか・・・普通っすね」



それは言葉にしたシャムロムだけではなく、その場にいた全員が同じことを感じていたこと。

ここは通常単体で行動することがほとんとである単眼巨人(サイクロプス)が複数体で行動し、尚且つ群れを成しているかもしれない場所。

そして、さらにそれを率いているのが過去の文献くらいでしかその存在を記されていない単眼巨人の王(サイクロプスキング)である可能性も示唆されている。

そんな異常事態が起きているとは到底思えないほどに外から見たモンナケルタはとても穏やかであった。

そこには異様な雰囲気も、殺伐として風景も、荒れ果てた様子もない。

見るからにしてごくごく普通の緑多き山。



「もっと殺伐としてんのかと思ってたけど。なんか拍子抜けね」


「どうせ何処かに隠れておるんじゃろ。さっさと見つけ出してやるのじゃ」


「そうだね。見た目に騙されないようにしないと!」


「そ…そうですね。ご主人様はどう思われますか?」


「あぁ?」



セスリーによって唐突にかけられた問いに対して、目の前に聳えるモンナケルタの山を左右端から端まで見回したクロノはひと息吐いたあと言葉を続けた。



「ハァ〜。まぁ〜何個かに分かれて身を潜めている奴らがいるな。その配置からしてある程度の統率はとれてるようだ」



クロノの言葉によってスズネたちの間に緊張が走る。

穏やかな山の風景に気を取られている場合ではない。

その言葉によって単眼巨人(サイクロプス)たちが群れを成していることがほぼ確定したのだ。

そして、それ即ち単眼巨人の王(サイクロプスキング)がいる可能性が一段高まったということである。



「それじゃ、ミリアを先頭にして予定通り陣形を組んだ状態で作戦を開始しよう」


「「「「「 了解! 」」」」」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



【モンナケルタ 〜 とある洞窟 〜 】



「オウヨ、マタアタラシイニンゲンガキタ」


「コンドハ、オンナ、イッパイ」


「グハハハハ。それはいいな。女は全て生かして連れて来い。男どもは好きに殺せ」


「「「「「 グオォォォォォ!!オンナ!オンナ!オンナ! 」」」」」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」


「ちょ…ちょっと、そろそろ休憩にしないっすか?」



モンナケルタを登り始めてから一時間ほどが経過。

山中に入ってからのモンナケルタは、外から見ていた時とは全く別の印象を与えていた。

スズネたちが最初に感じた何の変哲もない穏やかな山は、その見た目とは裏腹にそこら中に奇妙な気配が漂っており、上辺だけの明るい新緑が彼女たちの警戒心をより強めていった。

さらに、初めて訪れた山道に加え、まだ見ぬ強敵の存在、冒険者たちが次々と返り討ちにあっているという状況、それら様々なことに神経を費やし緊張状態が続いたことによって、彼女たちの体力は想像以上に消耗していたのだった。



「まだ行けんじゃない?登り始めて一時間くらいしか経ってないわよ」


「いや、シャムロム言う通り一度小休憩を取った方がいいと思います。この先に何があるか分からない以上、休める時に休んでおくことは必要です」


「そうだね。みんなも思っている以上に疲れていると思うから一度ここで休憩にしよう。ミリアもそれでいいよね」


「了解。本番はまだ先だしね。しっかり休んで備えましょ」



こうしてスズネたちは疲労した身体を休めるべく三十分の休憩を取ることにした。

そして、その時間の中でここまでの山中での振り返りとこれからの作戦について話し合いをすることになり、今回は山の中腹辺りまでの調査にとどめることとなった。


この山は、何かがおかしい。


誰一人としてそれが何なのかを言葉にすることは出来ないのだが、全員が確実に何かがあることを感じ取っていた。

それは単眼巨人の王(サイクロプスキング)が誕生しているということなのか。

それともまた別の要因によるものなのか。

その時のスズネたちには知る由もなかった。




─────────────────────────



「や…やはり奥へ進むほどに木々たちの様子がおかしいです。悲しんでいるような…。何かに怯えているような…。す…すみなせん、これ以上は私にも分からないです」


「その情報だけでも凄く助かるよ。ありがとうセスリー」


「でも、奥に進むほどにってことはやっぱりこの先に何かあるんすよ」


「まぁ〜行けば分かることよ。今日は中腹までの調査なんだし、さっさと進んじゃいましょ」



先頭を行くミリアに率いられ、より山の奥へと足を踏み入れていく宿り木。

そして、休憩を挟んでからさらに一時間が過ぎた頃、ようやく山の中腹辺りまで辿り着いたのだった。


そこから周囲をくまなく調査したスズネたちであったのだが、見つけたのは単眼巨人(サイクロプス)のものであろう大きな足跡くらいであり、狩りや戦闘の痕跡などを見つけることは出来なかった。

そうしてこの日は単眼巨人(サイクロプス)と遭遇することなく下山することを決めた時、彼女たちの耳に悲鳴が届く。



「キャーーーーーッ」



突如として山中に響き渡った悲鳴。

それは明らかに女性によるもの。

スズネたちは咄嗟のことに驚きながらも一瞬目を合わせると、誰の合図もなく一斉に悲鳴が聞こえた方角へと駆け出したのだった。





最後までお読み頂きありがとうございます。

スズネたちの元へ届いた悲鳴。

その声に導かれ走り出した宿り木。

その先で彼女たちを待ち受けているものとは ───── 。


次回『撤退』

お楽しみに♪♪


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