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雷光流し

第二ラウンド開始。



バチッ…バチチチチッ ──────── 。



「おいおい…お前は魔法師だろ?俺とアーサーを相手に剣でろうってのか?」



ここまで化物じみた魔法を連発してきた男が突如として剣を取り出し、あろうことかそれを手にして自分たちと戦うと言い出したのだ。


ふざけているのか。

それともナメているのか。

はたまた目の前に立っている二人の剣豪の実力を知らないのか。


そんなことを考えながら表面上は冷静さを装ってはいるものの、ゼリックのはらわたは煮えくりかえっていた。

そして、決して言葉は発さずとも、アーサーもまたゼリックと同様にその行動を無謀だと考えていた。

しかし、そんな彼らの思いなど関係ない。

クロノは至って真剣である。



「お前らごときの短い物差しで俺を測るな。剣士?魔法師?雑魚過ぎるお前らみたいに決められた一つのことしか出来ないような俺様じゃねぇーんだよ」


「大した自信だな。あとで泣き言ほざくなよ」


「ハハハハハ。泣き言とは何だ?これまでそんなものとは無縁だったからな。お前ら程度の実力でそれが出来るのかは分からんが ───── 可哀想なお前らに“格の違い”というものを教えてやろう」



バチッ…バチチチチッ ──────── 。



「な…を ────── 」


「あん?何か言ったか?」



バヂッ…バヂッ…バヂヂヂヂヂヂヂヂ ──────── バチンッ!!


目の前からゼリックの姿が消える。

電流の残滓だけを残し、音も無く光速で移動したのだ。

そして、その移動先は言うまでもなくクロノのもとである。



「この俺にーーー何を教えるってーーーーー!!」



目にも留まらぬ速さで背後を取ったゼリックの刃がクロノの首を狙う。


ガキーーーーーンッ。


一糸乱れぬその動きから繰り出された一文字斬りが真っ直ぐに打ち込まれたのだが、その攻撃もあっさりと受け止められてしまう。

常人であれば斬られたことに気付くこともなくあの世へとご案内されそうな早技。

しかし、そこはさすが歴代最強とでもいうべきか、クロノはその一太刀を一切見ることなく、正面を向いたまま最小限の動きで受け止めたのだった。



「殺気がだだ漏れだ。愚か者!!」



キーン!キーン!キーン!


ガキーンッ!ガキーンッ!ガキーンッ!


ググッ・・・グウォン!!!


激しい打ち合いの中で力強く撃ち下ろされた強烈な一撃。

クロノからすればただの打ち下ろしにすぎないのであったが、それすらも必殺の一撃になりうるほどの威力を誇っていた。



「なっ!?」



ギギギッ…ギギギギギッ ────── ドンッ!!


予想だにしていなかった強烈な反撃を受け、観客席まで弾き飛ばされてしまったゼリック。

それでも彼の表情は嬉々として笑っていたのであった。


ビリビリビリッ ──────── 。


《なんつー馬鹿力だ。たった一撃受けただけで手が痺れてやがる。俺の攻撃を防いだことといい、口先だけの野郎ではないようだな》



「ガハハハハ。やるじゃねーか!小手調べはこの辺にしておいてそろそろ本気でいくぜ」


「お前は口先ばかりだな。御託はいいからさっさと来いよ」


「いい度胸だ。さらに速度を上げていくぜ」


「なっ!?まだ上がるのか!」



先程まででも十分な速さをみせていたゼリックなのだが、本人曰くまだ先があるようでそれを聞いたアーサーは驚きを隠せずにいた。

光速のその先とは ──────── 。



「いくぜ〜〜〜 ────── 雷光流らいこうながし」



ゼリックによって放たれた微弱な電撃が闘技場内に張り巡らされる。

あちらこちらでチカチカと光を放ってはいるが、それ自体に攻撃性はないようである。

そして、ここからゼリックの独壇場が始まる。


フゥ〜〜〜ッ ──────── 。


再びゼリックの姿が消える。

しかし、これまでのように荒々しいものではなく、まるで周囲に溶け込むようにゆっくりと自然な形で消えたのだった。


完全に気配を消している。

感じられるのは揺れる風とチラチラと光る微かな電流の残滓だけ。

そうした中、静まりかえる闘技場に狂気が姿を現す。


ズヴァン!!


突如として放たれた斬撃によって地面がえぐられる。

何をもって判断したのかは分からないが、クロノは紙一重のところでそれを躱している。

遠目からその戦いを見守っているスズネとユニには、突然の爆音と共に地面がえぐられたこと以外何が起こっているのかさえ理解することが出来なかった。



「やるじゃねーか魔王。まさか初見でこれを躱わすとはな」



姿形の無いままどこからともなくゼリックの声だけが響き渡る。



「別に大したことではない。いくら気配を消そうとも動きの中で空気は揺れる。その不自然さを見逃さなければ避けるくらいは造作もない」


「ガハハハハ。言うは易し。本物の化物だな。楽し過ぎて頭がおかしくなりそうだぜ」


「はぁ〜…こっちは拍子抜け過ぎて退屈しているところだ」


「そうかい、そうかい。それじゃ〜もっと張り切っていかねーとな〜」



フッ ──── フッ ──── フッ ──── フッ ──── 。


無音の中で微かに蠢く殺意。

それは少しずつではあるが確実に忍び寄ってくる。

そして狙われたのは、二人の戦いに目を奪われていたこの男。


ズヴァン ──────── ブシュッ。



「クッ・・・」



咄嗟に回避したとはいえ、防御が間に合わず手傷を負うこととなったアーサー。

まるで気配を感じないその攻撃を前に冷や汗を流しながらより一層警戒を強める。


《クロノ殿の助言がなければ危なかった。想定していたよりも気配を感じないな。空気の揺れ…か。何となくではあるが要領はつかんだ。次は反撃に出る》



「おいおい、よそ見してんじゃねーぞアーサー!お前も俺の標的ってこと忘れんなよ。油断してるとその首跳ねちまうぞ」


「黙れ!次は逃がさん」



闘技場内に張り巡らされた電気の流れに乗って縦横無尽に戦場を駆け巡るゼリック。

そんな姿見えぬ敵を前にするクロノとアーサーであったのだが、両者の面持ちは大きく異なっていた。


全神経を集中させ、いつどこからゼリックが現れようとも瞬時に対応が出来るようにと気を張るアーサー。

そんな彼とは対照的に、クロノはいつも通り自然体で立ち、余裕のある表情でただその時を静かに待つのであった。



ここまでは戦前の予想通り、好戦的なゼリックが攻め、アーサーとクロノが受けにまわりながら様子を伺うといった様相となった戦い。

この三つ巴の戦いの軍配はいったい誰に上がるのだろうか ──────── 。





最後までお読み頂きありがとうございます。

姿と気配を完全に消してクロノたちを狙うゼリック。

静かな殺意と音無き刃が二人に襲い掛かる。

未だ攻撃に転じる気配をみせないクロノに秘策はあるのか。


次回『雷帝』

お楽しみに♪♪


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