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魔剣グラム

ガンガンガンガンッ!!



「フゥー…かってぇ〜なぁ。この俺の斬撃でもヒビひとつ入らねぇとは。マジでムカつくぜ」


「もう終わりか?俺はまだ何もしていないぞ?」


「こんの野郎・・・。ブッ殺す!!」



いくら斬撃を打ち込もうとも魔法障壁の前に全て弾き返されてしまう。

当然クロノには一切攻撃が届いておらず、退屈そうな様子を前にイライラを募らせるゼリックであったのだが、彼の性格上ナメられっぱなしで諦めることなど出来るはずもなく、ただひたすらに剣を振るうのだった。



「殺す!」



ガキーーーンッ ──────── 。



「殺す!殺す!!」



ガキーーーンッ ──────── 。



「殺す!殺す!!殺ーーーーーす!!!」



ガキーーーンッ ──────── 。



それでも、そんな彼の思いとは裏腹にいくら打ち込もうとも状況が変わることはなかった。

そして、その最たる要因は少しでも剣をかじった者であれば一目瞭然なものであった。


《あのように心と体が乱れた状態ではいくら打ち込もうとも魔王クロノに届くことはないだろう。そんなことは獣王とて分かりきっているはず。それなのに、なぜ・・・》


対峙している二人の攻防を隣で眺めながら、あまりにも稚拙な攻撃を繰り返すゼリックの様子を冷静に分析しつつ、その思考と意図を読み取ろうと努めるアーサー。

しかし、そんな彼らの心境などお構い無しにクロノが行動を開始する。



「そろそろこの戯れにも飽きてきたな」



ボッ ─── ボッ ─── ボッ ─── ボッ ─── ボッ ─── ボッ ─── 。


その言葉と同時にクロノの周囲に炎の球体が姿を表す。

その数、六つ。

クロノを中心にアーチを描くように等間隔で並んだ炎球はゆらりゆらりと静かに揺れる。



「あん?なんだアレは」


「ハハハッ…嫌な予感しかしませんね」



そして、このアーサーによる予感は見事的中することとなる。



「おい雑魚ども、次は俺のターンだ。せいぜい必死になって逃げ回れ。 ───── 火炎連弾ファイアガトリング



キュイーーーン ──────── 。


六つの炎球が音を立てて高速で回転を始める。

そして、次の瞬間 ───── 。


ドッドッドッドッドドドドドドドドド ──────── 。


ドーーーン!!ドーーーン!!ドーーーン!!


ドドドドドドドドド ──────── 。


ドーーーン!!ドーーーン!!ドーーーン!!


その攻撃はガトリングとはいうものの、実状は爆撃に近いものであった。

地面はえぐれ、爆炎が舞い、熱風が吹き荒れる、まさに地獄絵図と化していた。

しかし、そんな中であってもスズネとユニがいる場所だけはその影響を受けることはなかった。



「あの…あれだけの爆撃がありながら、どうして私たちのところには何の影響が無いのでしょうか?」


「あ〜それはですね。さっきクロノが離れてろって言った時に、私たちの周囲に魔法障壁を張ってくれてたんです。そのおかげで私たちのところにはほとんど影響が無いんですよ」


「いつの間にそんなことを・・・。まったく気付きませんでした」



スズネたちが時折笑顔をみせながらそんな話をしている最中でも、男たちの戦いにそんな余裕は無い。


ドドドドドドドドド ──────── 。


ドーーーン!!ドーーーン!!ドーーーン!!



「クソッ…あの野郎、めちゃくちゃしやがんな」


「クロノ殿の乱入は想定外でしたが、獣王の意識があちらに向いているうちに ───── 」



ドドドドドドドドド ──────── 。


ドーーーン!!ドーーーン!!ドーーーン!!


クロノによる猛攻を受けゼリックとアーサーが逃げ回るという戦局が続き、それぞれの思惑が蠢く中でついに痺れを切らしたあの男が動きだす。



「あーーーーー!めんどくせぇーーーーーーーーーー!!!」



ドンッ ──────── スタッ。


大声を上げて空高く飛び上がったかと思うと、ゼリックは静かに観客席へと降り立つ。

そして、今のままでは埒が明かない奥の手を披露する。



「正直ムカつくがお前もそこそこやるようだからな。俺様の実力の一端を見せてやるよ」



ゴロゴロゴロゴロ ──────── 。


ゴロゴロゴロゴロ ──────── 。


ゼリックの言葉に呼応するように、突如として空が分厚い雲に覆われ、周囲が暗い闇に閉ざされる。

そして、上空では天が鳴き、曇天の中でチラチラと光が漏れ始めたその時 ──── 天より地へと落とされた凄まじい威力のいかづちがゼリックに直撃したのだった。


その誰も予想だにしていなかった突然の出来事を前に全ての者の目が釘付けになっていた中、彼らの前に現れたのは強力な雷を全身に纏ったゼリックの姿であった。



「ハァ〜〜〜・・・。それじゃ…行くぜ〜〜〜」



シュンッ ──────── ドガーン!!


先程までとは比べ物にならない威力の斬撃を繰り出すゼリック。

しかし、それよりも他の者たちを驚かせたのはその尋常ではないスピードであった。

まさに目にも留まらぬ速さ。


シュンッ ─── シュンッ ─── シュンッ ─── シュンッ ─── シュンッ ─── 。


ドガンッ ─── バゴンッ ─── ガキンッ ─── ドガンッ ─── バゴンッ ─── 。


そして、光の速度に乗って打ち込まれる重剛な攻撃を重ねた結果、次第に魔法障壁にヒビが入り始め。そして、ついに ───── 。


ビキッ…ビキビキビキッ ────── パリーーーーーン!!



「ハァ…ハァ…ハァ…。ハハッ…ガハハハハ。どうだ!その生意気な障壁を砕いてやったぞ!!」



ついに魔法障壁を打ち破ったゼリック。

そして、息を切らしながらそのことを強く言い放ったのだが、クロノの反応は彼が求めたものとはかけ離れた冷ややかなものであった。



「たかが魔法障壁を破った程度ではしゃぐな、愚か者。まぁ〜少々面倒ではあるが、王として貴様らには力の差というものを徹底的に教えてやらねばならんからな。仕方がない、貴様らの分野で相手をしてやろう」



そう言うと、クロノは異空間を作り出し、その中へ手を入れると異空間収納ストレージから一本の剣を取り出したのだった。



「えっ!?クロノさんは魔法師ですよね?剣を使えるのですか?」


「私も剣を使っているところは一度しか見たことがないんですけど、魔法無しでもクロノは強いですよ」



魔法師であるクロノが剣を手にしたこと、そして何よりも剣士として最高峰の実力を持つとされるゼリックとアーサーを相手に剣で挑もうとしていることに驚きを隠せないユニなのであった。

しかし、相対している二人はそんことよりも取り出された剣に対して驚きを隠せずにいた。



「なんだ…その剣は・・・」


「なんと禍々しいオーラを放つんだ」



クロノの右手に握られた剣からは“禍々しい”という言葉がよく似合う黒紫色のオーラが溢れ出していた。

そして、そんな彼らの顔を眺めながらクロノは笑う。



「どうした?コレが気になるのか?こいつは“魔剣グラム”という魔族に伝わる剣だ。別名“魔帝剣”とも云われている。強き者を好み、弱き者には自身に触れることすらも許さない。まぁ〜要するにじゃじゃ馬だな」


[我をじゃじゃ馬と申すか、小僧]


「えっ?えっ?えっ?どこからか声が」


「ま…まさか、意思を持つ武器インテリジェンスウエポン!?」



=========================



意思を持つ武器インテリジェンスウエポン


世界に極僅かしか存在しないと云われている自らの意思を持つとされている武器。

戦闘経験を自身の力として蓄積することが出来、成長を続けることから通常武器よりも強力な力を宿しているとされている。

今現在では、その存在すらも伝説や幻とされており、逸話など物語の中だけの存在と云われている。



=========================



まさかの意思を持つ武器インテリジェンスウエポンの登場に驚きを隠せないでいるアーサー。

その隣では驚きと共にどこかワクワクした様子をみせるゼリックの姿があった。



「また珍妙な物を出してきたな」


[して、小僧よ。あやつらは喰うてもよいのか?]


「出てきて早々にはしゃぐな。今は自分の力量も分からぬ愚か者どもに、王とは、最強とは何かを教えている最中だ。邪魔するなら叩き割るぞ」


[ガッハッハッハッハッ。我を相手にそのような態度を取る者など、長い年月を経てきた中でそなたをおいて他におらぬぞ]



自ら手にした剣に対して威嚇以上の殺気をぶつけるクロノ。

あくまでもこれは躾けであると捉えている彼にとっては、この状況をなんびとたりとも邪魔させる気はないようである。



「待たせたな。そろそろ第二ラウンドを始めようか」





最後までお読み頂きありがとうございます。

クロノが取り出した“魔剣グラム”。

剣士の最高峰である二人を前にあえて剣で勝負することを選んだクロノ。

果たして勝機はあるのか。


次回『雷光流し』

お楽しみに♪♪


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