表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/193

獣王ゼリックvs聖騎士長アーサー

「やっと会えたな、アーサー」


「獣王…ゼリック…」


「おいおい、そう緊張すんなよ。俺はただ玉座にふんぞり返ってるだけの無能な王じゃねーからよ。それにここは実力主義の獣王国ビステリアだ。強い奴は大歓迎だぜ」



怪しい炎のトンネルを抜けた先で突如その姿を現した獣王ゼリックを前に嫌でも警戒を強めるアーサーであったのだが、周囲を見回してみたものの他に伏兵などの気配はなかった。

それでも目の前にいるのは今回の戦争における最重要人物である。

ゼリックの決断ひとつで戦争を激化させることも終わらせることも出来る。

そんなことを考えながらアーサーはゼリックとの会話を続けるのだった。



「獣王よ、こんな所まで私を呼び出していったい何用かな?」


「カーッハッハッハッ。そう邪険にすんなよ。わざわざ俺とお前の二人だけってシチュエーションを用意してやったんだ。楽しく行こうぜ」


「なるほど…そこまでしてもらっておいて申し訳ないんだが、こうみえて私も忙しい身でね。一刻も早く仲間たちの元へ戻り、この戦いを終わらせなければならないんだ。用件があるならさっさと終わらせてもらえると助かるんだが?」


「おいおい…何を言ってやがるんだ?今お前の前にいるのは敵国の王なんだぜ?俺を殺せば戦争は終わる。言っただろ?ここは実力主義の獣王国ビステリアだ! ───── どうだ?シンプルだろ?」



獣王の言っていることは間違ってはいない。

実際王であるゼリックを失えば獣王国軍の勢いは弱まり、戦争は一気に終結へと動き出すだろう。

しかし、なぜ獣王はわざわざこの状況を作ったのか。

自分の身を危険に晒してまでアーサーの前に姿を現した理由は・・・。

不敵な笑みを浮かべながら真っ直ぐ視線を向けてくるゼリックの意図を図りかねるアーサー。

そして、その戸惑いに満ちた表情を前にゼリックは大笑いをみせる。



「ガッハッハッハッハッ。俺がお前をわざわざ呼び出した意図が分からねぇって顔してんな。聖騎士長ともあろう者がそんなに分かりやすくて大丈夫か?」



それはまるでイタズラを仕掛けて楽しむ子供のようであった。



「・・・。獣王よ、お前が何を企んでいるのかは知らないが、今ここでお前を倒したところで他の獣王国軍が戦いを止めるとは思えない。そして、このまま戦争を続けてもただただ無駄な犠牲者を増やすだけだ。ここらで一時的に戦闘を中断し、ガルディア王と話し合いの場を設けないか?」



戦闘回避そして戦争の一時停戦を提案するアーサー。

それを受けたゼリックはというと・・・。

一気に感情を失っていた。

アーサーの発言を聞き終えたゼリックはそれまでの笑顔を失い、ひどく冷めた表情をみせながら大きな溜め息をつく。



「ハァ〜〜〜・・・。興が冷めるようなことを言うんじゃねぇーよ。アーサー、お前はお前という存在の価値を何ひとつとして分かっちゃいない。国王レオンハルト?奴にはお前ほどの価値など無い」


「おい!我が国の王を愚弄する気か?レオンハルト王あってのガルディアだ!私程度と比較するなど論外!!」



その軽率な発言に対して怒りを滲ませるアーサー。



「おーおー、これはまた主君想いの家臣だな。俺にもそれくらいの忠義を持った部下が欲しいもんだぜ。 ───── だがなアーサー、いざ戦争が始まるとなった時に国民に“安心”を与えるのは誰だ?戦場においてその背中で戦士たちに“勇気”を与えるのは誰だ?そして、今のガルディア王国を守護する上でその“希望の光”となっているのは誰だ?」


「・・・・・」


「お前だよ!アーサー!!ガルディア王国が窮地に立った時、レオンハルトなんかじゃなくお前の存在が支えとなる。だからこそガルディア王国にとってお前は最重要であり、俺たち敵国にとっては最も警戒しなければならない面倒な存在なんだよ」



獣王の熱弁を聞き少し驚いたような表情をみせたアーサーであったのだが、数秒の後に初めて笑顔をみせる。



「アハハハハ。実力主義の獣王国ビステリアを統べる獣王本人にそこまで言われるとは ───── 本当に光栄なことだ。そして、今お前が口にしたことが事実なのだとしたら、私はこれからも負けるわけにはいかないな」



その表情には充実感が漂っていた。

忠義を尽くすと決めた友のため。

平和を望む国民のため。

まだまだ未熟な自分を慕いついてきてくれる仲間たちのため。

それを強く再確認することが出来たからだ。



「それだよ!だから、今ここで俺自らの手でお前を殺すために呼んだんだよ!!」



その言葉を聞いてアーサーは全てを理解した。

これまでと違い獣王国が急に好戦的な態度をとってきたこと。

話し合いにも一切応じることなく宣戦布告してきたこと。

戦場でアーサーを孤立させ、ここまで誘導したこと。

そして、獣王自ら一人でこの場に来たこと。



『全てはガルディア王国聖騎士団聖騎士長である自分を殺すため』



たったそれだけのためにここまで大掛かりな作戦を立て、国同士の戦争を引き起こしたのだ。



「理解に苦しむ・・・。わざわざそれだけのために?」


「それだけの価値がお前にはあるってさっきからずっと言ってんだろ」


「まったく…正気とは思えないな。それでも国を統べる王なのか?たった一人を殺すためだけに国を動かすなんて・・・」


「ハァ〜…別に理解してもらおうなんて端から思っちゃいねーよ」



ガルディア王なら、レオンハルトなら、こんなことは絶対にしない。

いや、普通に考えて国や民のことを想うのであれば絶対にしない所業である。

アーサーにとってゼリックの行いは国と民を裏切る行為であり、決して許容出来るものではなかった。



「獣王よ、お前は王ではない!王とは単純な強さだけで測れるものではない!その思想、その姿勢、その行動、その在り方をもって国と民を導くものだ。そして、現ガルディア王レオンハルトこそが歴史に名を残す名君だと私は確信している」


「あ〜そうかい。別にどうでもいいことだ。もうお喋りの時間はいいだろ?そろそろ始めようぜ」



そう言うとゼリックはゆっくりと立ち上がる。

そして、腰に差した刀を抜刀したのだった。


スーーーッ ───── カチャッ。


それを見てアーサーも聖剣エクスカリバーを構える。



「それじゃ ────── 行くぜ!!」



──────── ドゴーーーーーン!!!


足場にしていた大岩が砕け散る。

そして、その強力な踏み込みによって勢いをつけたゼリックがアーサーに襲いかかる。


ギーーーン!


ググッ…グググッ…。



「おいおい、四聖に数えられている男がそんなもんじゃねーだろ!!」



ガンッガンッガンッガンッ。


キーン ─── キーン ─── キーン ─── キーン ─── 。



「オラオラオラオラーーー!どんどんいくぞコラァーーー!!」



キーーーン ───── ガキーーーン ───── 。


キーーーン ───── ガキーーーン ───── 。


勢いに乗るゼリックの斬撃を前に防戦一方となるアーサー。

それでも、さすがは四聖に名を連ねる男。

初見にも関わらずゼリックの太刀筋を捌くことを苦にもせず、次々と打ち込まれる刃をいなしていく。

しかし、その剣技にばかり気を取られ懐に出来た一瞬の隙を狙われ強烈な蹴りをくらってしまい、そのまま蹴り飛ばされてしまう。



「隙ありーーーーー!」



ボゴッ ──────── ドゴーーーン!!


ガラガラガラガラ ──────── 。



「おーい、生きてるかー?まさかこの程度でくたばったりしねーよな」


「・・・・・」



ドーーーーーン!!!!!


ここまでされてようやく本気になったアーサー。

金色こんじきの闘気を解放し周囲の瓦礫を弾き飛ばす。



「フゥー・・・。様子見はここまでだ。ここからは“殺し合い”になるぞ」


「ガッハッハッ。望むところだ!!」



いよいよ始まった二人の戦い。

この戦争においての頂上決戦と言っても過言ではない戦い。

そして、ようやくる気になったアーサーの姿を前にしてゼリックは興奮気味に笑うのであった。





最後までお読み頂きありがとうございます。

いよいよ両軍の総大将同士の戦いが始まりました。

四聖に名を連ねる大剣豪“王剣”アーサーと同じく四聖に名を連ね全ての剣士の頂点とも云われる“剣聖”ミロクの二番弟子であるゼリック。

世界最高峰の剣士同士の戦いの先にあるものとは ────── 。


次回『殺し合い』

お楽しみに♪♪


少しでも“面白い”、“続きが読みたい”と思って頂けたら、

『ブックマーク』

『☆☆☆☆☆』評価

『感想』

を頂けたら幸いです。


読者の皆様の評価・ご意見・ご感想がモチベーションにも繋がります。

お気軽にお寄せください。

応援よろしくお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ