十二支臣最強
「弓兵、構え!!」
ギギギギギッ ──────── 。
「放て!!」
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ ──────── 。
第一軍の戦闘地では、その他の戦闘地のような小細工や舌戦といったものはなくすぐさま戦闘が開始されていた。
また、ここでは他の戦闘地とは大きく異なり各団ごとの戦いではなく総力戦の様相を成していた ───── いや、そう呼ぶには大きな間違いがある。
実際にはガルディア王国第一軍 vs 炎獄のドランの戦い。
「ダメです。硬い鱗に阻まれて全く矢が刺さりません」
「かまわん、かまわん。致命傷を与えようなどとは考えておらん。あやつの気を散らせられればよい」
「第二射、放てーーー!!」
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ ──────── 。
ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ ──────── 。
第一軍による無数の矢を浴びても気にする素振りを見せることなく攻撃を続けるドラン。
それでも諦めることなく先程の倍以上の矢を眼前の敵目掛けて打ち込む騎士たちの姿にドランは少しばかりの苛立ちを見せるのだった。
グオォォォォォ ──────── 。
「脆弱な者どもが・・・。そのような小枝をいくら打ち込もうと我には効かぬわ!!」
苛立ちと共に咆哮をあげた敵の姿に微かな隙を察知したガウェイン。
その僅かな好機を逃すまいと彼が率いる第四聖騎士団が四方よりドランに向けて魔法を帯びた斬撃による攻撃を開始する。
「第四聖騎士団、構え!!」
グッ…グググッ… ──────── 。
「撃てーーー!!」
火・水・風・土それぞれの属性を帯びた斬撃がドラン目掛けて一直線に放たれる。
そして、さすがのドランもこの攻撃には危険を察知したのか、大きく広げていた両翼に包まれるように身を屈めて防御態勢を取ったのだが、その瞬間を狙っていたガウェインがバトルアックスを構えて襲い掛かる。
「そんな殻に閉じ籠ってて俺の一撃が防げんのか?」
───────── !?
「そのご自慢の守り、俺が斬り崩してやるよ!!」
身体強化された上に手にしたバトルアックスにも強化魔法が施されており、赤いオーラを纏った強力な一撃が振り下ろされる。
そして、それに対抗すべくドランの身体を覆う鋼の鎧のように堅固な鱗がぶつかり合う。
ガガッ ───── ガガッ ───── ガガガガガッ。
「鋼鉄かよ!マジで硬〜な」
グッ…グッ…グググッ ─────── 。
攻防互いに反発し合う中、少しずつではあるがガウェインの攻撃がドランの防御を崩し始める。
しかし、その刃が鉄壁の防御を突破するかと思われたその時、一瞬でも自身に傷をつけることが出来ると考えた敵を前にドランの怒りが爆発する。
「小ざかしい・・・。ヒト族ごときが…調子に乗るなーーーーー!!!!!」
「おいおい、マジかよ!?」
バーーーーーン!!
「クッ・・・」
ヒューーーン ──────── ドーーーン!!
それまで防御に徹するために屈めていた大きな身体を一気に開放し、それと同時に内に溜めたエネルギーを放出したドラン。
その強烈な衝撃波によってガウェインは弾き飛ばされ、周囲を包囲していた騎士たちはその光景を目にし恐怖を覚えたのだった。
しかし、そこはガルディア王国が誇る精鋭たち。
芽生えた恐怖心を強靭な精神力で抑え込み、後退りするどころか逆に反撃の準備を始める。
「ガウェイン様はご無事か?」
「おう。なんてことはない。むしろやっと身体が温まってきたところだ」
「ガウェイン殿、一人で楽しまれては困りますぞ。吾輩たちもまぜてくだされ」
「おい、二人とも遊びじゃないんだぞ。先程の作戦通り我々の団で連携してやつを倒す」
「「 ハッ!! 」」
ここでアーサーとガラハットが合流する。
どうやら第四聖騎士団による攻撃は小手調べだったようだ。
ガウェインとガラハットの会話からみてもまだまだ余裕な様子が伺える。
そんな二人に対してアーサーが気を引き締めるようにと注意を促し、当初の予定通り三つの団による共同戦線が敷かれるのであった。
「各団準備が完了致しました」
「よし。それでは攻撃を開始する!!」
アーサーによる号令が発せられ、いよいよ格段による攻撃が開始されようとしていたその時 ──────── 。
モワモワモワモワ ──────── 。
突然王国軍が陣を張る一帯に激しい濃霧が発生する。
それはこれまでの道中で発生していたものよりも濃いものであり、一気に視界を奪われることに。
そして、それによって第一軍の騎士たちはたちまち混乱の渦へと飲み込まれるのだった。
「クッ…こんな時に・・・」
「陣を乱すな!」
「クソッ、敵の位置は何処だ」
地上に広がった濃霧は第一軍の視界と共に冷静さも奪い、戦いの地には混乱する騎士たちの声が飛び交う。
そして、その上空では慌てふためく敵の様子を眺めるドランの姿があった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
第一軍とドランの戦いを少し離れた高台から見ていたメールとマウルスを含めた獣王国軍。
そんな彼らを置き去りにし単独で敵陣へと向かったドランの姿を見て憂慮に堪えない様子のメール。
そして、それとは対照的に面倒事を避けたいがあまり一切見向きもしないマウルスの姿があった。
「メールさんは世話好きだな〜…。あんな連中のことなんてドランさんに任せておけばいいのに…」
「ダメよ〜。獣王様から〜三人で戦いに臨めって〜言われてるんだから〜。
それに〜いくらドランといっても〜聖騎士長と〜十二の剣二人を〜一度に相手にするのは〜骨が折れるわよ〜」
「いやいや…ドランさんは僕たち十二支臣の中で最強なんだよ…。あんな数だけの連中に遅れを取るとは思えないけどね…。まぁ〜僕は少し寝るよ…」
「も〜う〜、マウルスは〜やれば出来る子なのに〜。出番が来たら起こすから〜ちゃんと戦うのよ〜」
メールの声掛けに対して瞳を閉じて横に寝そべったまま軽く上げた左手をヒラヒラとさせて応えるマウルス。
種族間による一大事を前にしても未だに自分のスタンスを変えようとしないのは、本当にどうでもいいと思っているのか、はたまたドランの実力を認めているからなのか。
その心の内は本人にしか分かりはしない。
そんなマウルスの姿を見て呆れたようにフゥ〜とひと息吐くメールなのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「メールのやつめ、余計なことを。だか、これは戦争だ。手加減はせんぞ。 ───── 炎の息吹」
ヴォーーーッ ───── ゴゴーーーッ ───── 。
聞き慣れた轟音と共に霧に覆われながらも空が赤く染められる。
その光景を目にすると同時に騎士たち全員が全てを理解した。
「盾兵、構えーーー!!」
「総員、衝撃に備えろ!!」
ゴゴーーーッ ───── ゴゴゴーーーッ ───── 。
辺り一帯を燃やし尽くすかのように放たれ続ける炎。
その息吹は先程までのものとはうって変わり三つの団全てを巻き込む範囲で放たれていた。
そして、その高温と威力を前にただひたすらに耐えることしか出来ない第一軍なのであった。
「ガッハッハッ。なかなかやりおるわ」
「クソッ、あの野郎まだまだ力を隠してやがったな」
「目眩しの霧に強力な息吹。いったいどうしたものか・・・」
アーサーたちはまだ知らないが、ドランの後ろにはまだ獣王国の軍勢が控えている。
そして、戦闘が開始されたとはいえメールはサポートに回っており、マウルスに至っては何もせず眠っている。
そんな状況にも関わらず第一軍を圧倒するドラン。
その圧倒的な武力を前に苦戦を強いられるアーサー・ガウェイン・ガラハットなのであった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
早速その実力を発揮し始めるドラン。
そして、その身を案じつつサポートに徹するメール。
第一軍の戦闘地で起こった戦闘の激しさはここからさらに他の戦闘地へと広がっていきます。
次回『地の利』
お楽しみに♪♪
少しでも“面白い”、“続きが読みたい”と思って頂けたら、
『ブックマーク』
『☆☆☆☆☆』評価
『感想』
を頂けたら幸いです。
読者の皆様の評価・ご意見・ご感想がモチベーションにも繋がりますので、何卒応援よろしくお願い致します!!