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円卓会議

獣王国へと送られた使節団が帰還した。

その姿は戦帰りかと思えるほどにボロボロであった。

中でも今回の使節団の代表として国王レオンハルトから直々の任命を受けていたハルトマンは、駆け付けた者たちが皆揃って目を覆いたくなるほどの損傷を受けていた。


そして、その報告を受けた国王レオンハルトは頭を抱えつつも獣王国への報復を一切許さすことはなかった。

ただ、獣王国が今後どういった動きをみせるかが不明であるため警戒を強めることを決めたのだった。



そんな状況の中、聖騎士長アーサーによってガルディア王国が誇る十二人の団長たちに招集がかけられる。

会場は王宮内にある会議室の一つ。

部屋の中央には大きな円卓が置かれ、それ以外には円卓を囲うように等間隔で並べられた十三個の椅子があるだけの質素な部屋。

もちろん今回の議題は昨日獣王国より戻った使節団からの報告を受けて、今後の方針を決めるためである。

そして、今回集まったメンバーは聖騎士長であるアーサーを含む十二名。



=========================


聖騎士長 アーサー

第一席  ランスロット

第二席  トリスタン

第三席  ケイ

第四席  ガウェイン

第五席  パーシヴァル

第六席  ラモラック

第七席  ベディヴィア

第八席  ガレス

第十席  グリフレット

第十一席 エクター

第十二席 ガラハット


=========================



「それでは、これより円卓会議を始める」



アーサーのひと声により部屋の中に流れていた空気が一変し各自の表情が引き締まる。

そして、各団長たちは口を一文字に閉じたまま議長を務めるアーサーへと視線を向けた。

そんな中、今回は全員招集ということであったのだが第九席のモードレッドだけは欠席となっていた。



「今回は全員出席のはずではなかったのですかな?」



モードレッドの席だけが空席となっていることに違和感を覚えたガラハットがアーサーに質問する。



「ああ、モードレッドは特別任務中のため欠席を許可した」


「なるほど、またですか?」


「「「「「 ・・・・・ 」」」」」



モードレッドが会議に欠席することは今回が初めてではなく、その度に特別任務中の一言で片付けられていた。

その事について納得していないガラハットは不満気な表情を見せるのであったが、他の者たちはそれに対して意見を言うことはなく沈黙を続けていた。

その時、痺れを切らしたのか第一席ランスロットが声を上げる。



「ガラハット、その辺にしておけ。時間の無駄だ。それではアーサー様、そろそろ本題に入りましょう」


「ああ」



こうしてガルディア王国が誇る最高戦力たちによる円卓会議が開始される。



「皆忙しい中よく集まってくれた。今回集まってもらったのは他でもない、先日ヒト族の者によって獣人族が襲撃を受けた。それを受けて王宮より使節団が獣王国ビステリアへ派遣されたのだが、昨日壊滅的な状態となって帰還した。派遣された三十五名全員が負傷させられており、中でも使節団代表のハルトマンは未だ意識不明の重体となっている」


「報復しますか?」


「いや、報復は無しだ。国王様より絶対にこちらから手を出させるなとの命を受けている」


「な〜んだ、やられっ放しか」


「口を慎め、ラモラック。これは子供の喧嘩ではない」



ギィーーーッ、ギィーーーッ。



「は〜い」



今回集められた団長たちの中でひと際異彩を放つ男。

唯一椅子の背にもたれ掛かり、両手を後頭部に置きながら椅子を前後に揺らしている。

年齢的にもかなり若く見え、他の団長たちが三十〜四十代であるのに対してただ一人だけ十代〜二十代前半のようであった。

それ故、会議中に先程のような言動や態度がしばしば見受けられ、他の団長たちから叱責を受けることも珍しくなかった。



「ケイの言う通り、これは喧嘩なんて生易しいものではない。獣王国は治外法権が認められており、我らがガルディア王国と国交や交易のある大事な隣国だ。それ故、国王様も出来る限り対話を以って今回の件を解決したいとお考えだ」


「そういうことであれば我々聖騎士はいったい何を?」


「そーだ、そーだ。僕らは王国の脅威を武力で片付けるのがお仕事だからね!対話で済ませるんじゃ〜やること無いよ」


「ラモラック!!」


「はいはい、黙ってますよ〜〜〜」


「それでアーサー様、今後の我々の役割というのは?」


「今王宮では国王様の獣王国訪問へ向けて準備が進められている。我々聖騎士団ももちろん同行するのだが、その準備に数日掛かる。そして、その間に獣王国に動きが無いとも限らん」


「なるほど。国王様訪問の護衛とその準備の間における王都の防衛というわけですね」


「そういうことだ」



アーサーからの説明を受け団長たちの中で一気に緊張感が高まる。

それもそのはず、何せ相手は獣王国である。

先程ラモラックが軽はずみな発言をしていたが、実際に戦うとなると一筋縄ではいかない。

そもそも獣人族というのはヒト族の三倍以上の身体能力を持ち、さらにそれぞれの動物の特性まで有しているのだ。

それが獣王国の戦士ともなろうものならばその力量は計り知れない。

そして、ガルディア王国に聖騎士長アーサーや十二の剣ナンバーズがいるように、当然獣王国にも“十二支臣”と呼ばれる強者たちが存在する。

それら全ての獣人族を束ね、頂点に立つ者こそが獣王なのである。



「何か質問のある者は?」


「はい、は〜い。っていうか、そこまでする必要ってあるんすか?いくら獣王国が強国だからって、こっちは大国ガルディアですよ。わざわざ戦争吹っかけてきますかね?」


「ラモラック、お前の言うことも分からなくはないけどよ、今の獣王はかなりの曲者だからな。何が起きても不思議じゃないんだよ」


「ふーん。まぁ〜ガウェインさんが言うならそうなんだろうね」


「はぁ〜・・・面倒臭いなぁ〜・・・。これだけ団長が揃ってるなら・・・俺要らないだろ・・・」


「ベディヴィア、サボろうとするな!お前も第七席を預かる団長なんだぞ。もっと責任を ─────── 」


「うわぁ〜・・・ガレス、本当に面倒臭い・・・。はぁ〜・・・誰か代わりに団長やってくれないかなぁ〜・・・」


「おい!貴様ら騒がしいぞ!!」



シーーーン・・・。



少々荒れ始めた会議の場に第二席トリスタンの声が響き渡る。

明らかに苛立ちの見える声色で無駄口を叩く者たちを一喝する。

そのひと声によって場は一気に静寂に包まれ、ふざけたような態度を取っていたラモラックでさえも大人しく椅子に座るしかなかった。



「アーサー様、失礼しました。それでは本題に戻りましょう」


「ああ、ありがとうトリスタン。それでは説明も終えたところで各団の持ち場を伝える。私直属の近衛団、第一軍、第五軍、第十一軍は国王様訪問に際して護衛の任に就く。そして首都の防衛に関して、北壁を第二軍と第七軍、東壁を第三軍と第六軍、南壁を第七軍と第八軍、西壁を第四軍と第十二軍で担当する、以上。現時刻より各団速やかに配置についてくれ」


「「「「「 ハッ!! 」」」」」



こうして各団長が揃った円卓会議もなんとか終わりを迎え、団長たちは自身の団に戻り速やかに持ち場へと分かれたのであった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



円卓会議から二日後。

国王レオンハルトを含む一団の準備が整い、翌日には獣王国ビステリアへと出発するように計画が進められていた。



「おい!そこの者止まれ!!」


「はい、はい。オイラに戦う意思なんてないよ」



突如として北壁の門に姿を現したのは一人の獣人族であった。

その突然の出来事に北壁の防衛にあたっていた第二軍と第十軍に緊張が走る。



「すぐにトリスタン様とグリフレット様をお呼びしろ」


「ハッ」


「あっはっはっ、別にオイラは何処にも行きやしないよ」



そして、獣人族が現れたとの報告を受けトリスタンとグリフレットが急いで現場に駆け付けると、そこには軽装備を身に纏った猫の獣人が一人抵抗する素振りもなく二人の到着を待っていた。



「突然何用かな?」


「ん?なんだい、ガルディアとビステリアは国交を結んでいる友好国だろ?オイラが来て何か問題があるのかい?」


「おい、テメェーふざけてんのか。テメェーらがガルディアの使節団に何をしたか分かって言ってんだろうな?冗談じゃ済まされねぇーんだぞ!!」


「あはははは。────── それを言うなら先に仕掛けてきたのはお前らだろ?こっちは無抵抗な商人たちが武装した兵士に襲撃されてんだよ」


「クッ・・・」



突然現れてヘラヘラしている獣人の男に対して怒りを見せ声を荒げるグリフレットであったが、獣人の男は先に仕掛けてきたのはお前たちだと静かな殺気と共に怒りを滲ませるのであった。



「まぁまぁ、オイラも別に口喧嘩しに来たわけじゃねぇ〜んだよ。ガルディア国王宛に獣王様より言伝を賜ったもんでね。会わせてもらってもいいかい?」


「貴殿の訪問の理由は理解した。国王様に確認を取ってくる故、暫し別室にてお待ち頂こう」


「はいはい、いくらでも待ちますよ〜」




最後までお読み頂きありがとうございます。

今回のお話でちょうど100話となりました。

皆様の温かい応援のおかげでなんとかここまで続けることが出来ました。

いつもお読み頂きありがとうございます。

ここからさらに盛り上げて参りたいと思っていますので、今後とも応援のほど宜しくお願い致します。


両国の間でいつ何が起こってもおかしくない状況の中、突如国王レオンハルトへの謁見を求めてガルディアに姿を現した獣人族。

これは今回の出来事にどのような影響を与えることとなるのか。

レオンハルトの想いと獣王の思惑が交差する。


次回『宣戦布告』

お楽しみに♪♪



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読者の皆様の評価・ご意見・ご感想がモチベーションにも繋がりますので、何卒応援よろしくお願い致します!!


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