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AVENGE〜復讐の権化〜  作者: 一条飛沫
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少年と精霊

ここは何処だ。気づくと俺は一面真っ白な霧の中にいた。さっきまで一緒にいたはずのレイラとジェームズの姿が見えない。どうやらはぐれてしまったようだ。早く王都まで行きたいのに参ってしまう。


とりあえず前に進むしかない。キリがないところまで行けば、何処かで会えるだろう。俺は歩き続ける。ただただ無造作に足を動かす。


同じところをぐるぐる回っているとも知らずに。






 ここは何処だろう。気づくと私は霧の中にいた。真っ白だ。世界の果てまで続いているんじゃないかと思うほどに濃い霧だった。さっきまでジェームズくんと並び、オズの後ろを歩いていたはずなのに気づけば二人ともいなくなっている。精霊になった私は魔力が見える。これは、例外なく精霊だけの特権だ。なのに辺りはぼやけてしか見えない。つまりこの霧は魔力を含んでいるということだ。こんな大規模な範囲に魔術を行使できるのは加護を持つ者か精霊しかいない。もう王国が刺客を送ってきた?いや……流石に早すぎる。それはないだろう。じゃあこれは精霊の仕業だ。


この世界の精霊は何も知らない者達が見れば人間と見分けがつかない。しかしその力は圧倒的で、人間では行使できない規模の攻撃魔法を使うことができる。その代わりに魔力の回復が極端に遅いというデメリットがあるが。しかし、契約することにより契約者の魔力を使うことでそのデメリットは消える。その代わりに契約者は膨大な魔力を必要とするため魔術を使えば魔力切れを起こすというデメリットがうまれてしまう。しかしそれも私の場合はないに等しい。なにせ契約者がオズなのだ。圧倒的な魔力量。おそらく全世界何処を探してもオズより魔力が多い生物など存在しないだろう。それがオズの抱く憎悪により手にした魔力だ。


そんなことを誰にいう訳でもなく考えながら歩き続ける。


同じところをぐるぐる回っていることにも気づかず。






 ここは何処だろう。さっきまでは師匠とレイラさんと一緒にいたはずなのに気づくと僕は一人で立っていた。辺り一体は白く閉ざされた霧の中だ。ちなみに師匠というのはオズワルドさんのことだ。魔術を教えてほしいと頼んでいるのだが、レイラさんに教われといつも追い返される。でも僕は諦めるつもりはない。師匠と呼んでいればいつか本当の師匠になってくれるかもしれない。だから僕は憧れの人を師匠と呼んでいる。


そんなことより師匠とレイラさんを探さなければ。どうもあの二人がいないと心細い。レイラさんに少しずつ魔術や剣術を習っているが、やはり僕一人で対処できることにも限界はある。というか、今の僕では何も対処できない。


それでも進まなければ何も起きない。師匠達と再会することもできない。おそらく師匠は僕がいなくても、一人でも進んでいってしまう。それほどにあの人の憎しみは大きいのだ。


師匠を探さなければ。街を出るときに拾った短剣の柄に手をかけすすむ。


 どれほど歩いたか分からない。1時間か2時間かはたまたそれ以上なのか。もう足がガクガクだ。歩き続けて僕の足は限界に達していた。それでも己に鞭を打ちなんとか一歩一歩前へ進む。このままでは置いていかれる。そんな不安と葛藤しながらも。


 それから2時間は立っただろう。冷たい地面に頬をつけ己の体力のなさを痛感する。それと同時にこれで僕の復讐は叶わないのか。そんな諦めさえ思い始めていた時だった。


「……………………………………………」


何か音がする。いや、声か?先ほどまで自分の足音しか聞こえていなかったはずなのに耳をすませば誰かの泣いているような声が聞こえる。この声の主なら何かこの霧をぬける方法を知っているかもしれない。そんなあやふやな希望を頼りに最後の力を振り絞って声の方に歩いていく。


そこには女の子がいた。僕と同じくらいの歳だろう。地面に座り込み、シクシクと泣いといる。師匠なら多分むしすることだろう。レイラさんならどうするんだろう。おそらく手を差し伸べることだ。あの人は人間を世界を神を恨んでいるが、弱者を助けようとする人だ。僕もその優しさに救われた。僕も人間は嫌いだ。でも全ての人間が嫌いな訳ではない。僕のように苦しんでいる人たちは助けたい。苦しんでいる人たちこそがこの世界を良くしてくれる人たちだ。あの人たちは一緒にいながら自分の復讐を貫くつもりらしい。ならば僕も僕の理想の復讐をする。僕の理想は弱者を救い、強者を挫く。


「どうして泣いているの?」


声をかけると少女は涙を浮かべた目でこちらを振り返る。一瞬どきりとする。少女は驚くほど綺麗な青色に髪に同じ色の瞳をしていた。レイラさんも綺麗な碧眼を持っているが、彼女はもっと青く綺麗な目をしている。恋とはこのことを言うのかもしれない。僕は紅潮させた頬をポリポリとかきながら質問を繰り返す。極力優しい声で。


「どうしたの?何かあった?」


少女はしばらくじっと僕を見つめた後、静かにまるで湖のごとく澄んだ声で囁く。


「………変な人に追われているの………」


そういった彼女の涙で潤んだ目を見ると何か男としてやらなければいけないと言う本能が働き出す。


「僕が守るよ!」


「本当?……守ってくれるの?……」


強く宣言した僕に首を傾げて聞いてくる彼女は男として守りたくなる。そんな愛くるしさを秘めている。


「じゃあ、手を繋いでくれる?……」


え……これはもう脈アリなのか?!いきなりそんな展開になっていいのだろうか。


「も、もちろん!いつでも僕が手をつないであげるよ!」


強がってみたはいいが内心かなり動揺している。なにせこれまでは孤児。生きるので精一杯だった僕だ。当然童貞である。女の子と手を繋ぐなど初めてだ。ズボンで手を拭き、一度深呼吸を挟み、差し出された彼女の手を取る。


その瞬間当たりが光に包まれる。光が消えると何か違和感が感じられる。何があったのか困惑していると、


「これでいつでも手をつなげるね!」


そういって恋人のように手を繋いでくる。


「え!!どう言うことーー!?!?」


しかしこれで事態は終わらない。


「やっと見つけたよ。精霊の嬢ちゃん。オイラと契約してくれっていってるだろ〜。」


大きな鎌を持った男が霧の向こうから現れる。


「残念でした〜。もう私はこの人と契約しちゃったんだも〜ん。」


そういって僕の腕に抱きついてくる。ベーと舌を出して男を煽る。


「え!!!本当にどう言うことーーーー?!?!?」

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