7:噂をすれば……
ショッピングモールからの帰り道。
「今日は晩ご飯何かな~」
「んー、冷蔵庫の中身と相談だけど、鶏肉があったし唐揚げでも作るか」
「やったあ! そういえば、唐揚げとフライドチキンって何が違うんだろ。なんか同じに感じるけど」
アリスが自転車を押しながら、前方にあった某フライドチキンのチェーン店の看板を見つつそう言った。因みに俺が唐揚げと言いだしたのも、その看板を見て食べたくなったからだ。
なんというか最近気付いたが、アリスと俺は思考というか視点が似ている気がしていた。考えてる事一緒なんだよなあ……。
「確か、肉に下味をつけるのが唐揚げで、衣に味をつけるのがフライドチキンって聞いたことあるな」
「ああ、なるほど。確かにフライドチキンって衣が美味しいもんね」
「俺は唐揚げ派だなあ。いやフライドチキンも好きだけども」
「私はどっちも好きだけど……女子の敵ではある……」
アリスが難しい顔をしてそう言うので俺は笑ってしまった。
「まあカロリーは高いからな」
「でもカロリーは美味しいから」
「真理だ」
「明日は土曜日で天気も良いみたいだし、前言ってたテニスにでもしにいく? それかウォーキングとかハイキングとか!」
アリスが見えないテニスラケットを素振りして、にこやかに俺へと笑いかけてくる。それがイギリス人の血の影響なのか分からないが、手振りやアクションが一々大きくて、それが妙に愛おしかった。高校ではまず見ない姿だけどね……。
「テニスか。ラケットどこにしまったっけな……ガットも張り直さないとだし」
「レンタルしてるところあるからそこで良いじゃん!」
「それもそうだか。しかし、身体動くかなあ」
「いつぶり?」
「ああ、いつだっけな……」
俺は高校一年の冬まではテニス部に所属していた。テニス部と言ってもうちの高校はあまり部活動に力を入れておらず、他校のように全国大会を狙うとかは一切なく、テニス好きが集まっただけのもはや同好会クラスの活動内容だった。
そしてそこを俺が辞めたのは、とあるややこしい事情があったからだ。一応言っておくが俺も何もしてないし、巻き込まれただけなのだが、結果として俺が辞める形になった。まあ元よりやる気ない感じの部活だったので辞める理由が出来て良かったのだが。
「……ねえ、それってさ今日、教室で言ってたやつ?」
「げっ、それ覚えていたのかよ」
「当たり前でしょ? なんか賢兎君ってテニス部のこと聞くといつもなんか難しい顔するし、なんかあったのかなあと。A組のどうのが関係していると思ったのは、ただの勘だけど」
アリスがそう言って笑っているが、その目には、如何なる誤魔化しも見抜くぞという決意の光が宿っている。女の勘、恐るべしだよほんと。
いや、別に隠すことでもないんだけどね……
「お察しの通りだよ。俺がテニス部辞めたのは、A組の――」
俺は……この時、うちの高校の制服姿をもう探していなかった。ここまで来たらもう誰もいないだろうと安心しきっていた。いや、油断していたと言ってもいい。
だから俺は前から歩いてくる、うちの制服を着た女子に気付いた時には――既に手遅れだった。
「――え? なんで賢兎が……アリス様と一緒に歩いてんの?」
その女子の言葉に、俺は目を見開き、アリスは逆にスッとその目を細めたのだった。
「え、待って、なんで」
そう言って、持っていた高校指定の鞄をドサリと落としたのは――
あちこちに跳ねている黒髪をボブカットにした、世間一般で言えば、おそらく幼馴染みとでも呼べる相手である――妃山 朱音だった、
噂をすれば影とは……本当に良く言ったものだ
新キャラ登場ですが、ご安心ください。暗い話や不穏さなどは一切なく、二人の関係性に揺らぎは一切でてきません。ちょっと立ち位置がトリッキーなキャラですかね?