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第49話:ポンコツ、相談に乗る

「これで良し……っと。ミナリー、そっちは終わった――って、何してるのよ?」


 客間のベッドメイキングを終えて振り向くと、ミナリーが机に向かって何やら難しそうな顔をしていた。


 仕事をサボってるのはもう普段通りだから別に良いとして、ミナリーが机に向かってるなんて珍しいわね。


 手には羽ペン、机にはインクと小さな紙が置いてある。


 何を書いてるのかしら?


「何か悩みごと? あたしで良ければ相談に乗るわよ?」


 まあ、どうせお金に絡んだろくでもないことだとは思うけど。


「アリシアが? じゃあ……うん、お願いしようかな。……不安だけど」


「おいこら一言多いのよ……ったく。それで、あんたは何に悩んでるわけ?」


「実はね………………ポエムを考えてるの」


「ポエムっ!? あ、あんたが!?」


「そんなに驚くことかなぁ?」


「そりゃ、驚くに決まってるでしょ! あんたがあたしに言ったこと、忘れたとは言わせないんだからねっ!?」


 そう、それはあたしとミナリーが初めて会った日のことだ。


 仕事のタイムテーブルを確認しようとしたミナリーに間違って、あたしは自分がしたためたポエムを渡してしまった。


 それを見たミナリーは、あたしをフォローするようなことを言っておきながら、最後にはポエムを書くあたしを馬鹿にしたのである。


 あの時の屈辱と羞恥は、一か月が経った今でも忘れていない。


 ……けれど、


「まあ良いわよ、もう。ポエムに関する悩みなら、あたしに任せなさいよねっ。こう見えてポエムにはけっこう自信があるのよ」


「へぇ、自信あるんだぁー……」


「な、何よその可哀想な人を見るような目は!? ふ、ふんっ! あたしのポエムの素晴らしさを理解できないようじゃ、あんたにポエムの才能は無いみたいねっ!」


「そうかなぁ?」


「まあ、とりあえずあんたのポエムを見せてみなさいよ。あたしが色々とアドバイスをしてあげるわ。感謝しなさいよっ!」


「じゃあ、これ」


 ミナリーは机の上にあった紙をあたしに手渡した。


 せっかくだから、ミナリーにやられたようにあたしも声に出して朗読してやろう。えーっと、なになに……?


「『欲しい物リスト』…………って、え? なに、これ?」


「欲しい物リストだよ?」


「それは知ってるけど、ポエムは?」


「え、そんなの嘘に決まってるじゃん。そんな恥ずかしいことするわけないよ」


「……………………………………………………………………………………………………」


 欲しい物リストと書かれた紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げ捨ててやった。


「あんたねぇ!? あたしを馬鹿にするのもいい加減にしなさいよっ!?」


「まあまあアリシア、落ち着いて? 悩み事があるのは本当だから」


「この期に及んで相談に乗ってもらえると思ってるわけ!?」


「乗ってくれるよね?」


「乗るわよっ!」


 ……まったく、仕方がないんだから。


 何だかんだ、悩みごとを相談したいなら初めからそう言えば良いのに。


 ミナリーって変な所で素直じゃないのよね。


「それで、あんたの本当の悩みは何なのよ?」


「えっとね、明日ってお給料日でしょ?」


「そう言えば、そうだったわね」


 メイドのお給料日は、毎月の末と決まっている。


 それが明日のことで、明後日にはもう一年の最後の月――師の月だ。


「だから、お給料で何を買おうかなぁーって。でも、なかなか思い浮かばなくって」


「それで『欲しい物リスト』だったのね」


「参考までに、アリシアのお給料の使い道を訊いても良いかな?」


「あたし? あたしはまあ、主に小物類とか。後はちょっとしたアクセサリーくらいね。お姉さまは服とか、ポーションの材料とか、色々と買ってるみたいだけど」


「へぇー。二人ともそれなりにお給料使ってるんだね」


「あんたは欲しい物って無いわけ? さっきの欲しい物リスト、何も書いてなかったけど」


「…………お姉ちゃんからお金の大切さは教わったけど、お金の使い方は教わらなかったんだよねー」


「ミナリー? 何か言った?」


「ううん、何でもないよ。欲しい物がいっぱいあって、何を書いて良いかわからなくって」


「何よ、それ。あんたらしいっちゃらしいけど、欲張り過ぎるのもほどほどにしなさいよ」


「えへへ……」


 恥ずかしそうに笑って、頭を掻くミナリー。


 その仕草が少しばかり無理をしているように見えたのは、きっと、あたしの気のせいだろう。


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