1.彼女は自動販売機について学ぶ3
前回、俺は昼ごはんを買い、自動販売機に寄った所、一学年上の先輩に目をつけられた挙句、昼飯を食べ損ねるという悲惨な目にあった。
腹の虫を抑えて挑んだ5限目は地獄のような時間だったのは言うまでもない。
ようやく、遅めの昼飯を食べていたら同じクラスのこうじとみっちゃんが俺の周りに集まってきた。
「お前は昼休みにどこで何してたんだよ?」
とこの意地悪そうに笑い、食事中の俺にヘッドロックをかけるのがこうじ。
「その辺にしといてやれよこうじ。智は女の品定めにご執心なんだから俺らはそっと見守ってあげよう」
大真面目な顔をし、呼吸をするようにこんな嘘を吐けるのがみっちゃん。最初に席が近くて話してるうちに馬が合うようになってつるんでいる友達だ。
「こうじはそのバカ力でヘッドロックをすんな!死ぬわ!みっちゃんも誤解を招くような話を平気でするなよ!またこうじが本気にしてややこしくするんだから」
ヘッドロックの余韻でむせ返りながら友である2人に忠告するが、2人は俺の話など聞いちゃいないようでヘラヘラと笑っているだけだった。
「昼飯買った後に寄った自販機で変な先輩に絡まれちゃったから遅くなったんだよ」
「早速、先輩に絡まれるなんてさすが智wお前って話しかけやすいか分からんけどなんかトラブルに巻き込まれやすいタチだよな」
「そーなのか?全然気づかなかった…。
とにかくさ!そこで会った先輩が不思議なのよ。俺がちょっと自動販売機の話したら興味を持っちゃって」
「んで、帰り際、『雑学を教えて下さい』みたいなこと言っててさ。なんか、雑学を学校の教科と同じに考えてるっぽくてさー」
ふんふんと聞いていたこうじが急に目を見開き、ガバッと俺に顔を近づけ、胸ぐらを掴みかかってくる。首に胸ぐらにこうじは動きが激しいな。
「何ー!彼女ってことは女か?しかも女の先輩だと!?何年何組の誰なんだ?」
「んー確か2年生の早川って先輩だったかなー?」
その瞬間、俺の胸ぐらを掴み揺さぶっていた、こうじの手が止まる。なんだいきなり?
「えー?あの早川先輩とお話しなさったの?」
と興奮して話すこうじはいつも通りなのだが、あの冷静なみっちゃんも少し俺の言葉に興味津々なようだ。
さらには他の男子達も俺のほうに寄ってきてどんな声だったとかどんな感じだったのか、スリーサイズは幾つだったとか色々聞いてくる。
「?そんなに有名なの?あの先輩って」
という俺のセリフを聞いた2人は信じられないものを見るような顔で俺を見つめる。
「早川先輩を知らないとかありえんだろ…。この学校における入試テストの歴代最高得点を叩き出し、今なお学年一位をキープするまさに天才」
「そして、その卓越した頭脳を持ち合わせながらミニマルサイズという可愛らしさと美貌とは裏腹に
話しかけた男子はその目で見つめられるとメデューサのように固まるらしい。
そのためか、私生活はおろか学校生活も謎が多く、何故か昼休みにクラスから消えて居なくなり、どこで何をしているか目撃した人が皆無という超常現象が起き、さらに昼休みの終わりのチャイムと共にきちんと教室に帰ることから誰かがタイムリープしてね?と言った事からついたあだ名が『時をかけるシンデレラ』」
「そんな彼女がある日飲んでいたジュースのキャップが発見され、そのキャップと合うジュースを見つけた人と結ばれるという噂があるとかないとか」
なんだその尾びれがつきまくっている噂話は…。しかし、そんな学園のアイドルみたいな人だったとは。
まぁ、確かに先輩の目力で固まったのは確かだが、昼休みに先輩に会っている俺からしてみれば消えていなくなってもいないしましてやタイムリープもしていないので噂話と言うものは本当にどっから湧いて出るのか分からない。
中休みギリギリまでこうじが話す早川伝説を聞きながら昼飯を食べ終えた。
しかし、噂話は置いといて…今の話の感じだと早川先輩は頭がいいみたいだ。
入試テスト歴代1位という華やかな成績を誇る才女。おそらく彼女は勉強が「好き」の世界に住む住民なのだろう。
そんな彼女に雑学なんて低俗な分野に手を出したら。なんか、ヤバイ気がする。
仮に先輩が俺が話した自動販売機の話で興味を持ったとして、そして、俺がそんな下らない知識を教えたとして。多分、先輩の親や教師が絶対に反対するだろう。
親パターン
「うちのあやみちゃんに変な事を学ばせないでちょうだい!」
教師パターン
「我が校の天才、早川くんにバカな事を教えたのは君か!?早川くんの成績が下がってしまったではないか!君には責任を取って退学してもらう!」
うん。どっちに転んでもヤバイからしっかり先輩に話をつけとかなくちゃいけないな。
読んでいただきありがとうございます!
感想や修正点ございましたらコメントいただけたらと思います。