叙勲
それから1週間
今日は訓練はなしで、叙勲を受けるため、王宮に向かう。
「マルク、礼儀作法は大丈夫か?」
「はい」
「ならよい。では行くぞ。ゼル、馬車を頼む」
「はっ」
父上と2人で叙勲に王宮に向かう。陛下に直接、叙勲を受ける。礼儀作法を細かく教え込まれた。
王宮に来ると、門で
「ドンナルナ子爵及び本日叙勲なされるマルク・ドンナルナ様ですね。確認のため、家紋を拝見させてください」
「うむ」
「はっ、どうぞお通りください」
待遇が格段にいい。前に来た時はこちらから名乗ったが、今回はあちらから申し訳なさそうに確認して来た。しかも俺の名前が来賓として言われた。
待機しつつもに行く。ここも今までとは比べ物にならないほどの部屋だ。
「マルク、従者が呼びに来たら、お前1人で入ることになる。俺は先にいて、お前を待つ。焦らずに習った事をしろ」
「はい。父上」
いつも以上に確認をする。父上も緊張しているようだ。父上も母上も勲章を授与されているが、子供では俺が最初になる。しかも最高勲章だ。緊張するなと言う方がおかしい。
「では、先に行く」
「はい」
それから少し待つと、
「マルク・ドンナルナ様、準備ができましたので、ご案内いたします」
「はっ」
「では、参りましょう」
「はっ」
受勲を受ける謁見の間の前に来た。
「マルク・ドンナルナ様、ご到着」
「扉を開けます。お下がりください」
ドアが開く。陛下はこれから入るようだ。
俺は絨毯の切れ間に行き、膝をつき、頭を下げ、右腕を胸に当てる。
「陛下、御成〜」
「皆、頭を上げよ」
「はっ」
「うむ、頭を上げよ。マルク・ドンナルナ」
「はっ」
これで頭をあげる。
「うむ。お主の魔法理論は実に素晴らしく。誰でも魔法を使えるようになる。それが証明され、現在、多くの者に広まっておる。これはこの国においても例を見ない偉業である。此度はこれを称して叙勲をする」
「はっ」
「勲章は金獅子勲章とする」
「はっ。ありがたき幸せ」
「うむ。こちらに来い」
「はっ」
「うむ、こちらをお主に渡す。この勲章に恥じぬよう、さらに励み、また渡せるような偉業を期待している。励むのだ」
「はっ」
万雷の拍手が始まる。俺は偉業を成し遂げたんだなと思うが、だが道半ばだ。俺の人生は始まったばかりだ。
なお、金獅子勲章は最高勲章で。こちらでは『獅子』をレオと呼ぶ。そのため、この国レオナルク王国はその名から国旗に獅子と星を掲げ、それから勲章の最高位は獅子と決まっている。
その下は星でその数と色が勲章の高さを表す。ちなみにルクは『星』の意味になる。ナは『と』の意味で国名であり、初代陛下の名は獅子と星という意味になり、王国ではよくつけられる名だ。
「陛下、ご退場〜」
陛下がご退場される。俺を含め。その場のものが頭を下げる。陛下が退場なされると宰相より、勲章に伴う、褒美が告げれられる。学院の授業料の免除や金貨、それ以外にも新たにできた魔法理論研究所に入る許可などだ。
そして、そのあとは祝賀となる。俺は多くの方にお祝いされる。
「マルク、本当に立派になったね。此度はおめでとう」
「ありがとうございます。ルイン様」
「ふふ。ドンナルナ家として誇りだな」
「ありがとうございます」
「マルク殿、おめでとうございます。いつでもなんでも、困り事の際には言ってくださいね」
「ありがとうございます。コーネリアス様」
「今回の叙勲の対象となる魔法理論は、本当に素晴らしいですよ。試せば試すほどに感動する。軍の強さが増えそうです。できれば付与魔法の呪文を増やせれば、我が軍は最強になりますねぇ」
「今、学院でも魔法詠唱研究会が研究しています。各種魔法の呪文を作られるのも早いでしょう」
「そうですか、では魔法詠唱研究会に投資しましょう」
「ありがとうございます」
「マルク殿、おめでとうございます。研究所にはいつでもいらっしゃってください。我々はいつでもお待ちしております。講義をしていただけると、さらに嬉しいですね」
「はい」
「うちの回復魔法研究所もいつでもお越し頂いて結構です。いや暇ならば、是非うちで研究してください」
「学院がありますので、お時間ありましたら、伺います」
「「はい。是非」」
宮廷魔術師長と回復士長は仲がいいのか?それともライバルなのか?よくわからない関係だな。
「やあ、マルク君、おめでとう」
「ハンニバル様、ありがとうございます。いつもレオナにはお世話になっております」
「こっちこそ、いつも世話になっているよ。それにしても素晴らしい理論だよ。なんて言っても凡用性の高さだね。誰でもがいいよ。正に魔法革命と呼べる理論だ」
「ありがとうございます」
そこにもうお一人、いらっしゃった。
「おや、ハンニバル殿」
「ああ、スピキアーズ殿」
「アルフォンス様、先日はありがとうございました」
「そうか、うちのレオナもお世話になって、ありがとうございます。アルフォンス殿」
「いいえ。アレスに良き友がいて嬉しい限りです。遅くなりましたが、マルク殿、此度はおめでとうございます。いやあ、アレスのライバルはすごいな。良き友を持ったものだな。アレスは」
「ありがとうございます。アレスは良き友で良きライバルです。アレスにはいつも助けられてばかりで、いつもありがとうございます」
「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいね」
二人と歓談した後、二人はコーネリアス様の方に去っていた。
そこに
「初めましてだね。マルク殿、おめでとうございます。義父上の件はすまなかった。そしてマークがお世話になっている」
「ありがとうございます。レオサード子爵様。こちらこそ、マークにはお世話になっております」
「マークはいいライバルで、目標がいる。良い環境で学ぶことは素晴らしい」
「こちらこそ、マークのおかげで頑張れます」
「そうですか。嬉しいですね」
今度はガルド様が
「マルク、此度はおめでとう」
「ガルド様、ありがとうございます」
「うむ。誇って良いぞ。此度の叙勲は全く持って、全員一致での叙勲だ。王国の者は皆、これほどの幸せはなかろう。マルク・ドンナルナがこの王国に生まれたということが」
「お褒めいただき、ありがたき幸せ」
「ふむ。今日は楽しむのだ」
他にも多くの方が祝辞を述べていただけた。少し疲れるが、嬉しいことだ。ただ、娘さんを推しててくるのは勘弁してほしい。断りづらい。
最後に
「君がマルク・ドンナルナ君だね。此度の叙勲おめでとう。いやあ素晴らしい理論だよ。民を大事にすると素晴らしい者が出てくる。陛下はやはり素晴らしい。私も見習わきゃね」
「王太子殿下、これは。ありがとうございます。わざわざ、私めのためにお越しいただき」
「いいよ。そんな畏まらなくて。王太子なんて、大したことない。国は民や貴族がいないとダメなんだ。そして、その中でも君のしたことは本当にすばらしい。そんな君は私より大事な存在だよ」
「そんな事ありません。立派な王族の方々がいっらしゃるから、民は輝けるのです。王太子殿下、そして陛下が素晴らしい方でいらっしゃることが国を反映させます。兄より王太子殿下は実に民を大切になさる方と聞いております。そんな殿下が陛下になられる際はきっとこの国は更なる発展を成しましょう」
「嬉しいね。英雄に言われると」
「英雄など。私はまだ非才の身、私には不釣り合いです」
「そうかい?巷では英雄の子は英雄と囁かれているらしいよ。実に良い事だよ。英雄の子が英雄になり、国を救ってくれるなら、これほど良いことはないよ。頑張るんだぞ」
「はい。ありがたき御言葉、身をもってその御言葉に報いれるよう努力を続けます」
「うむ。励め」
「はっ」
こうして祝賀はつつがなく終わった。一部の貴族、貴族派だと思うが、それらには睨まれていた。
俺と父上は2人で王宮を後にする。王宮の門には宮廷魔術師と回復士の方々と騎士の方々が並び礼をしてくれている。
それ程に、俺の理論は大きいもののようだ。自分のためと始まって、今多くの人から感謝される。うれしい。
10歳の時は、元王太子に嫌なことを言われ、誰にも見送られずに王宮を帰った。今は皆に褒められて、見送られ、礼を受けて帰る。本当に頑張ってきてよかった。
家に着いた。
ゼルら家臣と母上、メル姉、エルカ姉様、兄上に、ユリア義姉様が迎えてくれた。
「マルク、良い顔しているわね。おめでとう」
「マルク、おめでとう」
「マルク君、おめでとうございます」
「ん。すごい弟。マルク、おめでとう」
「マル君、おめでとう」
「マルク様、おめでとうございます」
「マルク様、アイナは嬉しくて、嬉しくて」
「マルク様、おめでとうございます。やっと念願が叶い、私も嬉しい限りです」
母上、兄上、ユリア義姉様、エルカ姉様、メル姉、リリア、アイナ、ゼルの順に祝いの言葉をもらった。アイナが感情を爆発させているのは珍しい。
「みんな、ありがとうございます。ここまで来れたのは、みんなの支えのおかげです。本当にありがとうございます」
「うむ。マルク、ここからがスタートだ。まだ精進しろ」
「はい、父上」
この後はまた家族で祝ってもらい。楽しい日だった。




