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アルフの結婚

部活の初日から13日後の休日


今日は兄上とユリア義姉様の婚姻式だ。ルイン様が昨日から王都に来ている。

「ラルク兄様、ついにアルフも婚姻、それにマルクは魔法理論を発表と、ドンナルナ家として誇らしい気分ですね」

「ルイン。ライルの婚姻の時は大変だぞ。俺も今回は大変だ。多くの訪問客を相手にした。俺はまだ下級貴族だが、お前はこの国の三家だ。これは大変だぞ」


「ラルク兄様、脅かさないでください。昨日からのラルク兄様を見て、戦々恐々としています」

「そうだろう」


「ええ。そうそう、マルク、ライルに新理論の教育方法を教えてくれてありがとう」

「いえ、教えているのはルーナリア・アルメニアです。私は補助ですよ。ルイン叔父上」


「そうか。ルーナリアさんに会いたいなぁ。今日はいらっしゃるの?」

「来てくれるようです。ユリア義姉様側の出席者として」


「そうか。学院卒業したら、うちの領で教員をしてくれないか口説いてみよう」

「ふふ。ルイン様、まだ数年先ですよ」


「ははは。それでもだよ。いい子は早くつば付けないと持ってかれるからね。貴族社会はそう言う面倒な世界さ。それに今一番注目のマルク理論の一番の理解者となったら、それは狙っている貴族は多いだろうね。ガルド様の保護下だから安易には手を出せないけど。まあ聞いてみるくらいわね」


「知らんぞ。ルイン。勝手にやれ。ガルドに怒られない程度にな」

「ええ。ライルの奥方もありかな」


「えっ?」

「もしかして、マルクは狙っている?」

「いえ、そうではないですが」


「違うのか?俺はてっきりそうかと思っていた」

「マルクはモテるのよねー」


「父上、母上、そんなことはないです」

「気づいてないタイプかな?」


「そうです。父上。マルクは鈍感なんです。そういうところだけ」

「ライル様、どういうことですか?」


「マルクが怒った。もう少し、色々と勉強しようね」

と話していると婚姻式の準備は整った。


俺らは教会で兄上とユリア義姉上の登場を待っている。ドンナルナ家側はうちの家族とドンナルナ本家からルイン様、ライル様、リア、メリダ様。そして家臣のゼルとアイナとリリアら。


普通はゼルら家臣は来ないらしいが、うちは家臣も家族と考えて、出席している。それに兄上の上司や同僚の方々だ。ユリア義姉様側はルクレシアス家、アルメニア家のルーナとその母、そしてユリア義姉様のご学友たちだ。


オルガンの音がなり、2人が入って来た。兄上は黒のタキシードで固めて凛々しい。元々モテる人だが、今日は一段とカッコいい。対して、ユリア義姉様は純白のウエディングドレスで綺麗だ。会場からため息が出る。2人の美男美女に多くの者が見惚れる。


2人はゆっくりと入ってくる。ユリア義姉様の手を取り、エスコートする兄上、それは正に夫婦と呼ぶに等しい。その慎ましい姿に会場では涙と息を飲む音がする。


オルガンの音が大きくなる。2人が祭壇に近づく。そしてオルガンの音が終わる時、2人は祭壇の前に。


2人は神殿の神父と天神様の像に誓いを述べていく。そして、天神様に向かい。2人で祈りを捧げる。それに続き、出席者が祈りを捧げる。今日という日から夫婦になる2人に幸せが来ることを。


そして、その沈黙が終わり、2人はゆっくりと神に礼をして、その後振り返り、出席者に礼をする。そして、もう一度祭壇に向かうと、神父が婚姻証明書を渡し、二人はそれにサインをする。最後に指輪をユリア姉様の指に兄上が付け、その後に2人は口づけをする。


会場は一瞬の静けさの後、万雷の拍手が会場を包む。俺も涙が出て来た。横のメル姉もエルカ姉様も涙を浮かべる。母上はもう涙で顔がぐちゃぐちゃだ。そして父上は涙を堪えている。ゼルとアイナとリリアらは涙を流し喜んでいる。これが幸せという物なのだ。


そして2人がもう一度、神と神父に一礼、そして振り返り、出席者に礼をして、出て行く。2人が進む道は多くの人の幸せそうな涙と笑顔で溢れる道になる。拍手が2人を包み、それが2人のこれからを後押しするかのように。2人はゆっくりと、けれど着実に進んで行く。


そして教会のドアが開く。一瞬、眩い光が2人を、教会を包む。神の祝福かのように。


こうして婚姻式は終わり、多くの出席者とユリア義姉上、兄上の2人は披露宴会場に向かう。俺らもこれから会場へ移動する。


「ふう、これでアルフも独り立ちが終わったな。俺の家督も譲れる準備は整った」

「そうね。あとはマルクの学院卒業が終わったら、譲ってもいいわね」


「ああ、その前にメルとエルカだが、まあ、2人は自分で決めさせよう」

「ええ。あの2人はなかなか手強いわ」


そんな話をしている父上らを置いて、俺とメル姉、エルカ姉様とゼルらは披露宴会場に入る。新婦・新郎が入るまでの間、知り合いらと話をして行く。


「レア先生、ルーナ、こんにちは」

「ええ、こんにちは、マルク」

「こんにちは、マルク」


「レア先生も、ルーナも綺麗です」

「ありがとう、マルク。ユリアには負けるけどね。妹に先に婚姻されるなんてね」


「ふふ。レア先生、相手はいるのですか?」

「それは聞いちゃダメよ。マルク」

「すみません」


「そういうところは学ばないとね」

「はい」


「そうですよ。マルク」

「ああ、ルーナも来てくれて嬉しいよ」

「ユリア様にはお世話になりました。せめて婚姻のお祝いだけどもとは思いましたが、親戚席なのは少し驚いています」


「いいのよ。ユリアがそうしたいって言ったの。それにお父様もそれがいいって言ったのよ」

「レアリア様、ありがとうございます」

「ふ。いいのよ」


そして、2人の用意ができたようだ。係の者がその旨を伝えて来た。

2人は着替え、兄上は白のタキシード、ユリア義姉上は黄色のウエディングドレスに。2人の嬉しそうな顔は皆の顔に綻びを生む。


多くの人が祝辞を述べ、俺も

「兄上、ユリア義姉様、婚姻おめでとうございます。お二人は本当にお似合いの夫婦でございます。兄上は真面目すぎるきらいがありますので、普段はあまり笑いません」


皆が笑いそうになる。さらに笑わせよう。

「ですが、義姉様が兄上の笑顔を作り出されるのを見て、弟として嬉しい限りです。婚姻し、兄上、義姉様の笑顔溢れる夫婦となられる事、喜ばしい限りです。兄上にとってユリア義姉様は正に最高のパートナーでございましょう。おめでとうございます」

俺の祝辞には皆、笑い、そして拍手が来た。


「マル君、面白い祝辞だったよ。でも内容は良かったわ」

「ん。いい祝辞」

「ええ、いい祝辞だったわ。アルフの真面目すぎるところは誰に似たのかしら」


「うむ。いい祝辞だ。アルフにはちょうどいいだろう。それにここまで皆真面目な祝辞が多かったからな」

「ありがとうございます」


「マルク、いい祝辞すると、後が辛いよ」

「すみません。ライル様」


「いや〜、マルクは祝辞まで上手いのか」

「ありがとうございます。ルイン様」

こうして俺の後も祝辞は続いた。俺の祝辞が一番盛り上がった。笑いを入れたからな。


その後は披露宴も進み、皆楽しそうに、兄上とユリア義姉上を祝った。会は終盤になり、兄上の挨拶で終わる。

「本日は私たち夫婦の婚姻式にお集まりくださり、ありがとうございます。弟のマルクより真面目すぎると言われましたので、少しだけ砕けて話させていただきます」

軽く笑いが起きる。


「私は一度道を間違えそうになりました。その時は父上を始めとした家族や友人、ガルド様に助けていただき、今に至ります。その縁もあり、ユリアと婚姻と至りました」

笑いは消え、皆が話に入り始める。


「私には尊敬する方が3人います。1人目は父上であるラルク・フィン・ドンナルナです。父上はいつも家族を思っている。その気持ちは学ぶべきところです。父上に習い、妻ユリアといずれできるであろう子を常に愛し、思い続けたいです」


兄上は続ける。

「そして2人目は義父上であるガルド様です。ガルド様のように、国を思い、家族を大事にできる人間になりたいと思います。これからも精進しますので、ガルド様、皆さま、どうかこれからもご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます」

いいスピーチだ。兄上の言葉に父上やガルド様らがうなづく。


「そして、もう1人が我が弟、マルクです。マルクは皆様ご存知でしょう。先日、新たな魔法理論を発表し、この国のさらなる発展に寄与したとして、来週、叙勲を受ける予定です」

俺のことだ。俺が兄上の尊敬する人?


「そのマルクが7歳の時、スキル『飲み込む』という誰も知らない、誰も大したことないと思ったスキルのみとわかりました。それしか持たぬという状況に普通であれば、嘆き、心を折ってしまう状況でした。私もマルクの将来を暗い物と勝手に決めてしまいました」

兄上!


「しかし、マルクは7歳という、まだ子供にもかかわらず、自分で状況を変えるため、魔法とは?自分のスキル『飲み込む』とは?と考えたのです。そして、研究して状況ををひっくり返したのです。さらに、精進を重ねて、今や騎士にも負けぬ強さを手に入れました」


兄上は強く手を握った。

「そのマルクを見て、私は変わることができました。どんなに高い壁でも自分で諦めれば、そこから先はない。諦めなければ、その壁を越えることができるかもしれない。それを私はマルクに教えられました」


「兄上!」

涙が出た。兄上が一瞬こっちを見て、微笑む。そしてメル姉やエルカ姉様が手を握ってくれた。


「私とユリアのこれからの生活には、多くの幸せが来るでしょう。ですが時には困難も訪れると思います。その時にマルクから教えられた『諦めなければ、いつか壁を超えられる』という強い心を忘れずに2人で乗り越えていきます。もう私は1人で人生を歩くのではありません。


ユリアと2人で歩いていきます。ユリアも同じく、これからはユリアの人生を私と2人で歩いていきます。どんな時も2人で歩を合わせ、どんな困難も2人助け合い、どんな悲しみも2人で慰め合い、多くの喜びを2人で共有して、人生を歩んでいきます。どうか皆様、これからも暖かく見守っていただけると幸いです。本日はありがとうございました」


そこには万雷の拍手が起きた。まるで、くつくつと燻っていた熱が一気に解き放たれたかのように、会場を拍手が、感動が包み込む。


兄上、ユリア義姉様、おめでとう。


この後は披露宴も終わり、皆は帰る。俺も家族やゼルらと共に家に帰る。そして、家族団欒で話をして今日は終わった。

翌日も休みのため、訓練をして、のんびりと過ごした。


夜ももう1話。今日中に魔法理論に関することを終わらせたいので。

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