部活始まるって
部室から出て、訓練場に来た。
「皆さん、こんにちは。今日から実践戦闘研究会が始まります。まずは自己紹介をします。部長のマルク・ドンナルナです。よろしくお願いします。では皆さんの自己紹介もお願いします。副部長のアレス、レオナと続いてください」
「アレス・スピキアーズです、・・・・」
・・・・
「はい。皆さん自己紹介ありがとうございました。これからのスケジュールについて、風の曜日、土の曜日はシグルソン教官の指導があります。その他の曜日では、火の曜日はリネア・ドンナルナ先生と魔術詠唱研究会と共同して新たな魔法理論を学びます。
水の曜日はレオナと戦術研究のロドリス先生が戦術を、木の曜日は戦闘模擬戦です。兼部の人もいると思うので、好きな日に来てください」
「「「「「はい」」」」
「では、今日はシグルソン教官の指導です。シグルソン教官をお呼びします」
・・・・
「うむ。皆よく来た。今日は俺の指導日だ。戦闘の苦手なものもいるだろう。だがいつ戦闘に巻き込まれるか、魔獣と会うか分からん。生き残れるための最低限の強さを欲してここに来たのだろう?
鍛えてやる。ついて来い。授業みたいにきつくはない。それぞれに合わせた指導と訓練方法を見つけ、教える。それに励め」
「「「「「「はっ」」」」」
そしてシグルソン教官の前で素振りから始まった。それぞれのダメなところが的確に指摘され、訓練方法を言われて行く。やっぱり、すごい人だ。
そして、素振りを終え、
「よし、今日は組手をする。俺が受ける。お前らは打ち込んで来い。最後に部長と俺が本気の模擬戦をする。目標がどれほどか目で見て、肌で感じて、多くのものを学べ」
「では、ルーナ」
「はい」
「魔法でもスキルでもなんでもいい。来い」
それから皆がシグルソン教官と組手をする。授業は武術のみだが、部活はなんでもあり。すごいいい経験になる。そして戦い方もいいところと悪いところが言われて行く。これだけですごい勉強になる。
「よし。マルク以外は終わったな。ではマルク、本気でやるぞ」
「はい」
「来い」
シグルソン教官とやる。武闘オーラもありだ。何度も撃ち込まれるが、何とか返す。やはり強い。本気の教官は恐い。そして強い。ひしひし一撃に強さを感じる。こっちは守りに専念させられる。でも反撃をしたい。
どこか隙を探す。長い攻防になる。スタミナには自信がある。ゆっくりと時間をかけて隙を見つけたい。
だが、それがなかなか来ない。一瞬だが教官が息を吸った。これがあるのか。どのくらいで来るかを感じよう。何度も撃ち合う。まだ守りに入る時間しかない。
また息を吸った。だいたいわかって来た。何度か撃ち合うが、俺は守りに専念するばかりだ。それでも、もう少しで呼吸が来る。
・・・来た。一気に疾駆と武闘オーラで突きに行く。
シグルソン教官は一瞬、たじろぐ。だが返しに来る。スピードの勝負、俺が早いか教官が早いか。俺の槍が早い。教官に当たる。そう思った。そうなるはずだった。しかし、それは残影だった。これは教官のスキルか?くそ、やばい。
あっ。俺は吹っ飛んだ。そして首筋には剣があった。
「負けました。あれはスキルですか?」
「ああ、影残しと言ってな。影の残影を本物に見せ、俺は移動するスキルだ。戦場に出なくなって初めて使用した。大戦でもラルクやゼルぐらいにしか使っていない。奥の手中の奥の手だ」
「そうですか。奥の手を使っていただけたなら。嬉しいですね。でも悔しい」
「ふん、戦場を引退したものに勝てないようではまだまだ。もっと成長しろ」
「はい」
パチパチと部員から拍手が始まった。
「すごい。これが学院最強の強さ」
誰かが言った。
その後、リオル先輩が
「マルク、強いな」
と言うと続いて皆が感想を言っていく。
「マルク、実技の授業ではまだ本気じゃなかったのか。悔しい」
「ごめんね。ヨークス。武闘オーラはトーラス先生に授業では使うなと言われたんだ」
「そうか。たしかに、あれは俺が怪我する」
「そうだね。でも目標が高いから頑張れる」
「ああ。高すぎる気もするが」
「アレス、高すぎるだろう。マークの言う通りだ」
「そうね。あれは私には目指せない」
各々の感想が飛び交う中、シグルソン教官が口を開く。
「まあ、マルクを目指すもよし、目指さないものよし。ただ、知っておけ。マルクのこの力が学院生の最高峰であり、まだ強くなる。そして、こうなれるかもしれない、なれないかもしれないが、お前たちは皆、学院にいる以上、マルクのように自分の強さを磨く必要がある」
シグルソン教官は優しく、けれど厳しい口調で続ける。
「それは武の強さだけではない。魔法や、知能でも良い。なんにせよ。最強になることだ。この部活はいい。風と土が俺、水はロドリス先生、火はリネアに教えを受けられ、マルクの新たな魔法理論を学べる。これほどの環境は上の各学院でもない。それを生かすことだ。自分の強さ、弱さと向き合え」
「「「「「「はい」」」」」」
こうして初日の部活が終わった。何人かは訓練所に残り、模擬戦や素振りをして行くようだ。シグルソン教官が見守ってくれるとのこと。俺は魔術詠唱研究会に顔を出す。ミリア先輩に任せきりではマズイ。ルーナと共に魔術詠唱研究会の部室に向かう。
「失礼します。ミリア先輩、マルクです」
「ルーナです」
「マルク、ルーナ、お疲れ」
「マルク君、ルーナさん、お疲れ様です」
混乱が?
「あれ?」
「ん?」
混乱がない。むしろ、ミリア先輩を中心にうまくまわっている。
「いや、予想していたのは多くの人がいて、ミリア先輩が大変かと思っていたのですが」
「うん、みんないい子。それにレアリア先生が来てくれたから問題ない」
「そうですか?何をしていたのですか?」
ミリア先輩が俺の理論をまとめた論文と先輩の論文を渡してきた。
「うん。私の理論の勉強とマルクの理論の勉強」
「そうですか。ミリア先輩、レアリア先生、お疲れ様です。来れなくてすみません」
「いい。ルーナもあっちの部活もある。ちゃんと分ければいい」
「はい」
「ミリア先輩、明日はよろしくお願いします」
「うん。リネア様の教えを請うことができる。頑張る」
部員の1人が話しかけてきた。
「マルク、あの魔法理論は凄いな。俺も撃てそうだ」
「そうですか。ええっと」
「ライだ」
「ライ、よろしくお願いします。でもまだ呪文は少ないんです。王宮でも研究してもらっているけど」
「ああ、だから、俺らも研究するよ」
「ありがとうございます」
「私もします」
「ありがとう。ルーナ」
「うん。私もするから大丈夫」
「ミリア先輩も?先輩の研究はいいんですか?」
「もう完成した」
「流石です」
「当たり前。ミリア・リニエに不可能はない」
「そうですか」
レア先生がいっらしゃる。
「レア先生、お疲れ様です。すみません」
「いいの。これで顧問らしいことができるわ。それに魔術詠唱研究会がまた活気付いたのよ。嬉しいわ」
「そうですね。本当に良かったです」
「マルクのおかげよ。頑張ったわね」
「いえ、1人では。みんなの支援があってです」
「そうですか。でもたまには自分を誇ってください」
「はい」
こうして、部活初日は終わった。この後、家路に着いて、夕食を食べ、明日の準備をして寝た。




