成果と兆し
昨日は昼投稿できなかったので、本日3投稿目を。
4日後
課外授業の次の日からは、とにかく訓練と魔法研究の実証実験の日々だった。どうやら、血の巡りが感じられない者が多い。そこで、拍動を感じるために脈を測ったり、胸に手を置いて拍動感じてもらった。
そうすると血流を感じられることが多い。多分血流がどう動いているかがわからない。その延長で血流を感じれない。結果、マナの流れもわからないという流れだ。血流や、心臓を絵に書いてイメージして感じてもらう。拍動を感じる。そうすると感じられるようだ。
前世ではなんとかなく心臓以外でも血流を感じることがあった。病気のせいで、血流が悪いというのもあり、ドクドクと拍動以外に感じた。だから俺は血流を感じやすかったが、科学の発展していないこの世界ではそれがイメージできないようだ。
そこからやると、マナを感じることが皆できた。魔法スキルのないリリアも感じられ、呪文を使い、手からマナを出せた。そして、全員が魔法を使えるようになった。結局、マナを動かす呪文はなく、手に集めめる呪文を使い、マナを動かす方法になれてもらう方法で上手くいった。
魔法を誰でも使えるようになったことが魔法の使えないメイドたちに好評だった。水魔法や火魔法、風魔法により、生活が、仕事が楽になったって。料理や洗濯なんかものすごい楽だって。生活用の魔法を作ってみようかな?皆んなが楽になる魔法、面白そうだ。
結果、俺の理論ならば、誰でも魔法ができる。あとは、多くの呪文が開発されればいける。それは宮廷魔術師に任せよう。ここまで、5年以上かかった。特に魔法を誰でも使えるようにするのが一番苦労した。後の苦労は丸投げしよう。
今日は父上や兄上、メル姉たちが休みの日だ。
朝から訓練を父上と兄上とゼルとしている。メル姉やエルカ姉様、ユリア義姉上、リア先生が来ていて、母上と歓談中だ。リア先生は無理矢理にメル姉とエルカ姉様に連れ出されたようだ。午後に買い物に行くらしい。兄上の婚姻式のドレスを見に行くとか。俺も誘われたが、回避した。
「マルク、今日は負けないよ」
「先週に続き、今日も勝ちます。魔獣を倒したことによる成長を見せます」
「位階があがったのかな?酔いはなかったかい?」
「酔いとは?」
「位階酔いと言われて、位階が上がると、急に力が上がって自分の体を操れないから酔ったみたいになるんだ。多くの貴族は小さい頃から位階を上げておくから、課外授業では酔いがないけど、マルクはそういうのをしてないからしたんじゃない?」
「いえ、特には」
「え?あんまり魔獣を倒していないの?」
「いえ、小型狼を2匹、大ネズミを3匹倒しました」
「うん?それだけ倒せばなるはずだけどな」
「アルフ様、人によっては位階の上がりやすさも違います」
「そうか。そうだよね」
「ええ」
「そうなんですね。俺は全くそんなのありませんでした。位階も低いのかな?」
「そういえば、マルクは位階が低いにしては強いね」
「確かにそうだな、位階の低さと強さが釣り合わないな。後で調べに行ってみるか?」
「そうですね。そうしたほうがいいかもしれません」
「うむ。午後はマルクの成果を確認してから教会に行き、位階を確認してみよう」
「はい」
皆、不思議そうな顔をしている。位階かぁ。
「私も最近は測っておりません。測ってみましょう」
「アルフ様は今はだいぶ高いのではないですか?」
「ああ。何回か位階酔いを経験したから、多分まぁまぁだろう」
「それより、模擬戦をしましょう」
「ああ」
兄上と模擬戦を行う。今日は兄上に負けた。硬化を使用され、ジリ貧になった。まだうまく戦えない。疾駆はまだ完全には使用できないし、集中力が高まった時にできる大技だ。まだまだ訓練が足りない。いや、もっと強くなれる可能性があると思うことにしよう。
「ふう、硬化を使わされるとは、確かに課外授業がいい経験になったみたいだ。冷静に対応するようになったね。前のギャンブルな感じがなくなったよ」
「ええ、常に最善手を出せるようになりました。賭けに出て、実力以上の力を使うのではなく、今できる最も良い攻撃をする。これは強くなる最高の方法です」
「そうですか。でも、まだ打つ手が、力が足りないです。まだまだ強くなります」
「強くなりたいではなく、強くなると言えるようになったことも素晴らしい事、自信がついたようですね」
「ああ、武術においてはマルクに足りない、マルクの強みである自身を信じる強さが武術にも出てきたな。あとは積み重ねだ。頑張るんだ」
「はい、父上」
そしてゼルと父上とも戦った。いつも通り、俺も兄上もまだ敵わない。だが、少しだが、2人とも本気が見えてきたような気がする。まだ気がするだけだが。
そして訓練を終え、昼食を食べ、成果を見てもらう。既にここ数日の間に手にマナを集める魔法言語、初級魔法の魔法言語は出来上がった。ミリア先輩の言葉を基礎にそれらしい魔法を撃つ呪文を何種類も試した。
まずはゼルとアイナが魔法を使った。皆が驚く。特にゼルに。
アイナはある種の魔法は使えていたが、ゼルは魔法は全くだった。それが1週間で使えるようになったんだ。皆が驚くのも当たり前だ。普通は60年近く、魔法が使えなかった者が1週間で魔法が使えるのは奇跡というものだ。
そして、さらにメイド陣、最後にリリアだ。獣人や、そのハーフは魔法が使えないというのが定説だが、リリアは使える。それが驚きのようだ。特にリア先生とユリア義姉上が驚きを隠せない。
「これは、なんと言うか、言葉にできない、奇跡です」
「ええ。リア姉様、これは夢ではないですよね?」
「ええ」
今度はエルカ姉様とメル姉が。
「マルク、すごい」
「マル君、これは世界を変えるね」
母上や父上が。
「ええ、マルク、あなたはきっと獣人族やハーフから英雄として感謝されるわ」
「ああ、これは奇跡だな」
「リリア、よかったわね」
「はい。マルク様は私にとって、神に近いです。もしかしたら、獣人族とのハーフの子にとって、これからが、本当の意味で世界を生きれるようになるかもしれません」
「そうね」
リリアは賛辞というより信仰に近い言葉をくれた。
そう、獣人族は人族と比べ、何倍も生きるというわけではなく少し長生きという程度、しかも魔法が使えない。だから劣等種族と言われ、ハーフは人族として魔法もスキルもない。俺と同じように無能と呼ばれ続けた。彼らハーフはスキルはないが、高いマナを有する。
だから魔法が彼らにも使えれば、ハーフの人らはこれから差別など受けない。まあ、今も、差別は表面上はない。ただ、スキル主義者や貴族派、帝国や聖国が差別していた。
そう、リリアの言う通り、今日という日が世界が変わる瞬間なのかもしれない。
それから、俺は父上らと共に教会に向かった。男性陣のみだ。女性陣は買い物だ。女性の買い物は長い。これはこの世界も一緒だ。男性陣はそれを避けるため、教会に行く。荷物持ちなど勘弁である。
そして教会に来た。
「マルクよ。そこの部屋で調べる。神父すまないが位階を調べたい。貸してもらってもいいか?」
「はい。位階の調べ方はご存知でしょうか」
「ああ」
「そうですか。ではご自由にどうぞ」
「後で寄付する。よろしく頼む」
「はい」
「では行くぞ」
寄付という言葉に嬉しそうにする神父様。どうにも天神教は好きになれない。金がなければ無視することや、人族以外は相手にしないところなど、はっきり言って嫌いだ。
部屋に入る。
「アルフ、お前が見本を見せてやれ。マルクよく見ていろ」
「はい」
「マルク、まずは手をスキルを調べた時みたいに水晶において、祈る。『我が主神、天神様よ。我を導き、我が位階を教え給う』・・・。ほらこの用紙に手を置くと紙に印字されるよ」
「ありがとうございます。位階23はすごいのですか?」
「ええ。今の騎士では位階20に行くものはほとんどいないでしょう」
「そうなんだね、じゃあ行ってまいります」
「お気をしっかりと。マルク様」
「うん、ゼル」
『我が主神、天神様よ。我を導き、我が位階を教え給う』
そして、紙に触る。あっ印字された。位階は??という印字だ。??って何?
「どうした?」
「えっと。位階が??って印字されたんですが」
「何ですと?」
「??っと表示されたのか?」
「はい」
「それは、確か昔に数度のみだと聞いたぞ」
「ええ、数度のみと。それ以降は聞いたことがないと」
「私も授業で習いました」
「そうなんですか?」
「ああ、過去にそう印字されたのは王国の初代陛下アルサレス様がレオナルク殿下時代にそう印字されたこと、ドンナルナ家の初代様もどうにように印字されたことがあるだけだ。その後、結局位階50だとわかったと聞いている。ゼル、神父に聞いて来てくれ。これはどこまで調べられるか?と」
「はっ」
・・・
・・・沈黙が続く。これって問題があるのだろうか?
「聞いてまいりました。100まで調べられる物だそうです」
「待て、ということは100を超えるということか?」
「いえ、聞いたことがあります。勇者は測れなかったと」
「では勇者だと?」
「それも違うでしょう。でも・・・。理由がわかりません。というよりは推測が多すぎて確信ができません」
「そうだな」
「ええ。マルクは驚くことが多いな」
「まぁ良い。マルクならば大丈夫だ」
こうして、教会で位階を調べ終わり、あとにした。途中で女性陣の買い物を少し覗いたが、まだかかりそうだ。俺は少し付き合わされ、兄上の婚姻式に着る服がどれがいいとかこれだとか着せ替え人形とかした。
そして家に戻り、夕食を家族で囲んだ。
「え?マルクの位階が」
「ああ、??だ」
「そうなの、召喚者か初代国王陛下らのみのはずよ」
「ああ。そう聞いて、不思議に思っている」
「うーん、考えられる理由が多すぎて、確定できないわね」
「ああ、そうなんだ」
「父上、母上、申し訳ありません」
「マルク、謝ることはないの。あくまで、理由がわからないだけよ」
「そうだな」
「一つだけ気になることがあります。先程、位階酔いの様子を聞いたら、スキルで魔法を飲み込んだ時に似ていると思うのですが」
「???」
「!!」
「あの〜」
「そうか。そうかもしれん。他人のマナを飲み込むことで、力を得る。その結果、それが位階を上げている。それならわかるな」
「ええ。それなら、位階が100を超えているのだわ」
「「「「!?」」」」
「世界最高位ですね」
「ああ」
世界最高位?それはすごい響きだ。なんか嬉しい。
「ええっと、世界最高位とは?」
「今、最も高い位階が母上なんだよ。マルク」
「え、兄上、そうなのですか?」
「調べられている範囲ではね。確か母上は58でしたか?」
「ええ、私の次がゼルで48、その次がラルクやシグルソンと言われているわ。ただし、エルフたちは謎だから、よくわからないけどね。それに冒険者の中には公表しない者も多いって聞くっていうから、本当かは疑わしいけど」
「そうですか」
「ああ、だから、もしマルクの位階が100超えたならば最高位になる」
「位階の高さ=強さではないですが」
「そうだね。ゼルや父上の方がよっぽど強いよ」
「ええ、でも強くなる可能性が大きいということです。位階はあくまで身体や才能をあげる。高いほどスキルや能力も上げやすくなるというのもの、あくまで強くなる可能性です」
「ああ、訓練を怠れば、弱くもなる。俺がいい例だ」
「兄上、過去を振り返って、自嘲しても強くはなれません。もう今は違うのです。そのことをもう信じていいのでは?」
「そうか。マルクの心の強さは、弟だが、学ぶべきところが多いな」
「いい事を言います。シグルソンも先日、救われたようです」
「教官が?」
「ええ、マルク様に、シグルソンが貶されるということはシグルソンの元部下も教え子も一緒に貶されるようなもの、貶されても構わないと思うなと叱責され、目の色が変わったようです」
兄上が嬉しそうだ。
「そうか。それはいいな。教官を慕うものは多くいる。だが、教官が表舞台から消えていくことに嘆いてもいた。それが変われば嬉しいものだ」
「そうですね。アルフ様」
「俺はそんな大それた事は言ってないよ。ただ、自分のプライドに縋る為に、シグルソン教官を貶すのが許せなかっただけ。その過程でシグルソン教官が止めるから感情のままに言ったんだよ」
「それで良い。そういう言葉が一番効く」
「そうですか」
「そうね。ラルクの言う通りよ。マルク、貴方は貴方のまま変わらないでね」
「ん、マルクは今のままがいい」
「そうね。マル君は今のままでいいの」
「マルク君は素直で真っ直ぐなところが長所です」
「マルクはいい生徒です。そのまま自分の目指す道を行ってください。先生として微力ながら協力します」
「ぷっ。リアが先生ぶる」
「そう、義姉なのに。リア、カッコつけすぎ」
「うるさいです。エルカ、メル」
こうして夕食を楽しんだ。
位階について補足
位階についてのボリュームゾーンは、一般人だと1から3、冒険者だと8〜13、騎士の場合も10〜15くらいです。この世界の位階は魔物を倒すことでしかほぼ上がりません。それでも普通に暮らすと、生涯かけて3までは上がります。
冒険者の方が低いのは、基本才能のあるものは宮殿勤めや領兵をするからです。




