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課外授業3日目② 終わりとシグルソン

俺らが休憩しているとトーラス先生が来た。

「よし、今回の課外授業は終わる。お前たちは学院に戻れ。先生が騎士団と宮廷魔術師団を連れてくる。その者らが馬車も持ってくる。それに乗って帰れ。お前たちは全員、合格基準を満たしている」

「はい」

「こいつはどうしましょう?」


「先導の先生に連れて帰ってもらう。状況判断としては正しいが、マルクやりすぎだ」

「はい」


「まあ、でも、中にいた先生に聞いたが完璧な判断だ。あの状況で熊の魔獣と戦うのも、誰かの助けを待つのも、ルーナたちを見捨てるのも全てダメだ。お前は冷静に一番いい方法で、一番いい判断をした。


誇っていい。特に、マークの結界を利用して、休むこと、合流地点の選定は見事だ。チームのメンバーが何ができるか判断して、それで完璧な作戦を作る。いいリーダーだ」


「いいえ。皆のおかげです」

すると、2、3時間してレア先生が来た。第4騎士団第12部隊は近くで訓練していたらしい。その団がきたとのこと。兄上の団だ。


「お待たせしました。今騎士団が来てくれます。皆さんは私と一緒に学院に戻ります」

レア先生の後ろに兄上がいる。


「マルク、よく頑張った。聞いたぞ。友を見捨てず、誰も危険に合わせずに、皆を救った。誇っていい」

「いえ、兄上。トーラス先生にもそう言われましたが、俺は皆に助けられて作戦を実行したにすぎません。マークやレオナ、アレスらが素晴らしいのです」

「そうか。慢心はしない。お前らしいな」


「では、兄上。ご武運を」

「ああ」


それから、学院に戻ってきた。そのあとも多くのチームが途中終了となって帰ってきた。全チーム帰ってきたようだ。


「学院長より、お言葉です」

「今回は異例の事態になり、課外授業は基準を変えます。1匹でも倒したチームは合格。3日間、誰も怪我せずに終わったチームも合格とします。ただし、昨日までに不合格を申された者と、今日の事件の発端になった者の数名は不合格です。以上」

「「「「はい」」」」


あのバカが騒ぐ。

「ななな、なんだと」

「そこ、静かに」


「続けて各クラスでホームルームです。それが終われば、解散です」

「「「「「はい」」」」」


「ではcクラスは教室に移動してください」

「お前が〜」

俺にあのバカが飛びかかってきた。自分の責任は考えずにいきなりだ。


「やめろ。お前が悪い」

「俺はまだやれた。それをこいつが勝手に介入してきたから」


「おい、やめろと言ったぞ」

「ひい」

シグルソン先生だ。森にいたのだろう。所々汚れているし、傷だらけだ。


「お前は、自分の欲で仲間を危険に合わせて、それどころか助けてもらった者に怒りをぶつける。未熟などというレベルではない。失格だ。学院をやめるといい。お前はふさわしくない」

「な。な、何を」


「国を守る者、国の為に働く者、民を守る者、民を幸せにする者が他人の命を軽んじるなど、馬鹿げた行為だ。それをわざわざ言われなくてはわからない者など、この国にはいらん。お前が戦場に出れば、民が死ぬ。文官になれば民が不幸せになる。領主になれば民は苦しむ。だから、学院をやめろ」


「売国したものが何を言う。帝国の犬が」

「おい、お前、ふざけるなよ」

「マルク」


「シグルソン教官ほど、国を思っている人がいるか。このバカが。くだらないプライドに縋るしかない者が人を貶すな。いい加減にしろ」

「マルク、やめろ」


「シグルソン教官」

「お前が怒るようなことではない。こんな言葉ぐらい何度も受けてきた。それくらいで怒るほど、人生に、国に希望はない」


「違います!教官。シグルソン教官は素晴らしい恩師です。教官がバカにされるのは教官の教えを守る生徒も皆、バカにされたことです。私は、教官を尊敬しています。こんなバカにあんなことを言われていい人じゃない!」


教官は「はっ」と驚いた表情をしている。こんな教官は珍しい。

「そうか。俺がバカにされたことを受け入れれば、俺の教えを大事にする者らも傷つけるか・・・」

「はい」


シグルソン教官は少しの沈黙の後

「わかった。気をつけよう」


すると学院長が近づいてきた。

「シグルソン先生、流石に言い過ぎです。まぁ納めていただけると助かります」


「すみません。学院長」

「いえ。シグルソン先生が怒らなければ、私が彼を罰していたでしょう。やめるとか言わないでくださいね」

「はっ」

「そうですか。皆さん。教室に戻ってください」


そして、教室でホームルームが行われ、俺らは家路に着いた。

「ただいま、戻りました」

「マルク、大丈夫だったの?」

「マルク様、大丈夫ですか?」


「はい。母上、ゼル。大丈夫です」

「よかった。熊の魔獣が出たって聞いたから、心配したわ」


「まぁ、最悪、スキルを全開に使えば、マルク様ならば倒せると思いますが」

「うん、遭遇したけど、戦わずに逃げたよ」


「そう。よかった」

「そうですか」

ああ、本当に愛してもらっている。忘れちゃダメだな。家族を悲しませないようにしなきゃ。


「で、どうだったの?」

「はい」

課外授業の話をしっかりと話した。


「偉いわ。仲間を見捨てずに、それでいて安全な策を取る。成長したわね」

「ええ。何と素晴らしい。最上の策です。マルク様にできる一番の策でしょう」

「トーラス先生にもそう言われました」


「そうね。そう言うでしょうね。驚くぐらい冷静な策だわ。その状況でそれが出せただけで今回は参加した意味があったわね」

「ええ。その経験がきっといつか花開くでしょう」

二人が驚嘆し、賛辞をおっしゃってくれた。


「ご飯は食べた?」

「いいえ。朝以来食べていないです」


「アイナ、ご飯の用意頼める?」

「はい」

昼食を食べた後、俺は少し、疲れたから、部屋に戻り、ゆっくりした。


父上が帰ってきたらしい。

「マルク、話は聞いた。よくやったな。スキルを使わずに冷静に仲間を助けたこと、俺は誇らしいぞ」

「はい。ありがとうございます」


「ふむ、アルフらが熊は倒したようだ。狼はフェンリルらしい。保護されたぞ」

「そうですか。兄上はお怪我は?」


「特にしていない。大丈夫だ」

「そうですか。ああ、先生方の対応が良くてな。どうやらシグルソンが熊の魔獣をかなりの手負いにしたらしい。それを最後に騎士団が仕留めたようだ」


「そうですか。あの汚れは、やはり戦ったのですね」

「多分な」


「そうですか」

「そうだ。シグルソンと会ったが、お前に感謝していたぞ」

「そうですか?」


「うむ。『お前の子供に教えられた。生きる意味をもらった』とな。久しぶりに話したが、顔が昔に戻っていた」

「そうですか」


「何を言ったのだ?」

「はあ。先生が貶される時は、先生の教えを守る者も貶されていると。だから先生に自分の人生を誇ってくださいと伝えました」


「そうか。それはいい事言ったな。あいつは自分の国を捨てた事に悩んでいた。自分は生きていいのか?貶されるに値するのではないのか?とな」


「そうですか」

「ああ。マルクの言葉で目が覚めたのであろう」


こうして異例の課外学習の日々は終わった。明日、明後日は休講で、来週から授業が始まる。


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