仮説と検証
色々と仮説を立て、考えてきたことに一筋の光が
3週間後
今日も頑張るか、この3週間は考えて、訓練しての連続だった。
ゼルと今日も訓練だ。父上は最近、なんだか忙しいようだ。帝国やら聖国がどうとからしい。よくわからないが、そんな話で会議が多いらしい。まぁ忙しいんだろう。
ゼルと今日も半身からの踏み込みを500回から。何度も注意を受ける。前より厳しい。この前のことが関係するんだろう。もっと頑張らなきゃいけない。よし集中だ。
次は、突きまでを500回やる。少しだが良い突きが増えたような気がする。もっと早く、力を伝える。地の力を上手く槍に。もっと、もっと。
はあ今日も訓練が終わった。母とゼルが見つめる中、毎日少量のマナを飲んでいる。ここ数日、前日より次の日の方が疲れてないし、前日より次の日の方が早く終わる。今日も同じだ。
「マルク様、もう少し早く終わるようになったら次のステップを考えます」
「本当?よしもっと頑張る」
「はい、やりすぎはいけません。変な力が入ったり、型が崩れます」
「あぁ、わかったよ。師匠」
「ええ、わかっていただければよろしい。では突きを後200回」
「えっ。まだ」
「はい、もっと頑張るのでしょう」
「うん」
また、200回突く。何回か注意が入る。そのアドバイスを聞いて、注意して突く。その繰り返し。何度も何度も。そして今日の訓練も終わった。
午後は、訓練なし。今日は母上もゼルも忙しい。またスキルについて考える。魔法についても考察しよう。
昼も食べた。よし、まずはスキルだ。
昨日も回復魔法を受けた。でも昨日より明らかに体が動く。先日、母上に聞いたら、回復魔法は使う前より回復するはずはない。よくて回復前と同じ程度らしい。ならばやっぱり訓練で動けたのはスキルだ。そして、ゼルにもここ数日、昨日より格段に動けていると言われた。それは予定を早めるほどだ。
ならば明らかにマナを飲み込んだことが大きい。これは確定だ。このスキルは確実に、マナや魔法を飲み込むことで、力を得ることができる。もし、魔法以外でも同じことができるならばもっと色々できるが怖いな。それに母上に泣かれるかも。父上も認めてくれないだろう。しょうがない。これはもう少しこのスキルを理解してからだ。
とりあえず、次に飲み込むのは魔法だ、でもまずは先にマナを何度も飲んで大丈夫と思ってもらえるようにしないと。スキルは後回しだ。
よし次は魔法だ。
ここまでの考察だと。マナを使って、現象の原因物質を集めるか。それともマナを現象の原因物質のように擬似的に扱うかだ。これを試さなくちゃ。俺は現象の原因物質を集めているのでは?と睨んでいる。
どうやって試そう?どうしたらわかるか?姉上に試してもらうか?空気のないところで火魔法を使ってもらう?空気のないところで火がつけばマナが原因物質で空気がなくとも着くということだろう。もし空気のないところで火魔法がダメなら原因物質を集めているんだろう。
待て、俺が集めてみる形でマナを使ってみれば?火がつく?これならできるか?いや、水素と酸素を分けらない。火はダメだ。火だとできない。水か?水を集めてみよう。これならできるか。
よし姉上が帰ってきたら、見てもらいながらやってみよう。そしたらできる。よしそうしよう。
それまで休憩だ。
下が騒がしい。姉上が帰ってきたのだろう。
「母上、姉上に見てもらいながら、少し魔法を試してみたいのですが、良いでしょうか?」
「2人が見てくれるならばいいわ」
「はい。姉上、どうでしょう?」
「いいわ。マル君のためなら」
「ん。マルクの願いなら姉だからやってあげる」
よし、姉上が協力してくれる。
訓練場に来た。
「姉上、魔法が何をしているかを考えたんですが、水魔法は空気中の水を集めているんじゃないかと思うんです」
「水が空気にある?」
「そうです」
「えっ、でもそんなのないじゃない。マル君間違っているよ」
「でも、メル姉、家が湿っていることがありますよね」
「ええ、あるわ」
「それだと、その水はどこにあるのでしょう?」
「ん、確かに」
「でしょう。エルカ姉様。だとしたら水が空気の中にあるんですよ。ただそれが気体になって」
「気体?水が?」
「ええ、水は熱すると気体になるんですよ。水を熱すると減るじゃないですか?」
「ええ、そうね。マル君」
「でしたら、その水はどこに行くんでしょうか?」
「それが空気中にある?」
「はい。雨が降るのも、空気の中の水が集まって雨になるんです」
「そうなの、エルカ?」
「わからない、メル」
「じゃあ、雨はどうやってできるのでしょう?」
「海よ、海の水よ。海の水が雨に変わるのよ。マル君」
「どうやって?」
「魔法じゃないかな?」
「ん、メル。マルクがあってる。多分」
「ですから、空気に水があるんです。それを集めます」
「マル君、どうやってやるの?」
「ええ、マナを広めて水を集めます。それを魔法として打ってみたら、エルカ姉様の水魔法と比べてみたいと思います。それで、どう違うかをみたいです」
「ん、実験はいいこと」
「はい、ではやってみます。」
マナを感じ、掌に集め、それを手から放出する。そして水を集める。水の塊ができた。
はぁここまでか?
「ん、魔法と言えるかわからないけどウォーターボールになってる」
「そうね。ただこれでは使えないね」
「エルカ姉様、水魔法のウォーターボールをあそこに撃ってもらえますか?」
「ん」
『水を集え。ウォーターボール』
勢いよく水の玉が勢いよく飛んで行く。やっぱり俺のとは違う。やっぱりマナを水にしているのか?マナが現象の原因物質か?
回復魔法を考えると違うのかと思うけど、やっぱりマナが原因物質なのか。でもだとすると・・・火魔法は空気のないところでは撃てるのか?そもそも魔法は・・・。
「姉上ありがとうございました。今度、もう一つ試したいことに付き合って頂いても?」
「ん、何をする?」
「ええ、今度はメル姉に火魔法を打ってもらおうと」
「メルに?」
「マル君、いつでも言って」
「んん、私はいらない」
「いえ、エルカ姉様の意見も聞きたいので」
「ん、そうエルカの意見は必要」
「はい。そうです」
「でも、マル君、何をするのかな?」
どうしようどう説明しよう?
「マナが、空気中の火がつくものを集めているんじゃないかと思うんです。それでメル姉に空気の薄いところで火魔法を使ってもらおう?」
「待って、マル君。どういうこと?」
「火魔法とは何か、マナが火魔法で何をしているのか考えてみました。それを考えると。火魔法が起こす火の現象は、マナが原因で起こるのか?それともマナが火の原因のものを集めて起きるのか?だと思うんです」
「そう、スキルがないから現象を理解してそれを起こすということかな?」
「はい。そうです」
「マルク、それは上手く行ったらすごいこと。魔法とは何かを発見したに等しい」
「えっ。エルカ姉様?」
「マルク、そんなこと誰も考えてない。スキルのある魔法を使う。先輩に習ったものを。そしてそれを組み合わせたり、強化している」
「はっ、じゃあ経験でどうにかする感じですか?」
「ん」
「えー」
驚きだ。メカニズムを知ろうとする魔術士はいないのかな?
「はあ、でもやってみたいんです。火魔法の仕組みを理解するために」
「待って、火を現象として理解しているってことだよね?」
あっこれは完全に説明するとマズイか?適当にごまかして説明しよう。
「はい。あくまでなんとなくですが」
「説明」
「はい。エルカ姉様。説明すると火は何か燃える固体があると、燃える瞬間に、その個体が気体になって、それが空気とくっついて燃えるんです。」
「つまり、木とかが燃える瞬間に、気体になってそれが空気とくっつくと燃える?それでいいの?」
「はい」
「それだと燃えカスは?なに?」
「燃えカスは軽くなるじゃないですか?それは気体にならなかった残りです」
「つまり、燃えカスと気体に分かれる?気体が空気とくっついて燃える?木が燃えているようで木から分かれた気体が燃えている?」
「エルカ姉様。ええ、だから火が高く燃え上がるのです。だから息ができないところでは燃えないのです」
「そう。確かにそれなら理論として不思議なところはないし、空気が必要なのも納得だわ。そうね、今までの説明が嘘に思える。マル君よく知っているわね」
「はい、ある文献を読んで、燃えるとは考えて、空気がないと燃えないと聞いてそれしか無いと思いました」
「そうなのね。マル君はやっぱり天才ね」
「ん。天才」
「はあ」
「ただ、それは簡単よ。火魔法は空気のないところでも使えるわ。全く同じようにね」
「メル姉、ありがとう」
「ん?メルだけ?」
「エルカ姉様もありがとうございました。」
「ん」
よし、これでマナを理解できる。火は空気のないところでも撃てる。つまり火魔法は本当の火の現象とは異なる。
「じゃあ、ご飯に行きましょう。マル君も、エルカも準備して」
「はい。メル姉、エルカ姉様、ありがとう」
食堂に来た。
「マルク、もういいの?」
「ええ、母上、マナとは何か、魔法とは何かをわかるきっかけが掴めそうです。これで魔法が使えるかもしれません」
「そう」
「はい、姉上には感謝です」
「メル、エルカ後で少し話を聞かせて」
「はい」
「ん」
父上が戻って来た。
「皆、ただいま」
「おかえりなさい。父上」
「あぁ、マルク、何かいいことがあったか?」
「姉上のおかげで魔法の研究が進みました」
「そうか」
「後で、メルとエルカに細かい話を聞くわ。ラルク」
「リネア、そうかぁ」
「ええ」
こうして食事は和やかに食べた。俺は嬉しくていつもより話が弾む。父上は疲れているだろうに、楽しそうに聞いてくれる。心配してくれているんだな。少しは安心してくれたかな?
そんな楽しい時間は早い。もう食事も終えたから部屋に戻ろう。
「父上、では部屋に戻ります」
「うむ。しっかり休め」
食堂を出て、部屋に戻る。
マルクが部屋に戻ると、
「で、リネア、今日のマルクは?」
「ええ。私も知らないのよ。メル、エルカ、ごめんなさい。少し訓練の様子を教えて」
「はい、お母様。マル君が試したいことを聞いて、試すのを見てました。マル君は空気中の水を集めて水魔法をしようとしたのです」
「空気中の水?空気中に水があるのか?」
「はい。マル君はそう言いました」
「本当か?メルとエルカは納得したのか?」
「はい。マル君の説明だと、家の中が湿っていたり、水を温めると量が減るのも、雨が降るのも水が空気の中にあり、それが多くなると空気が湿ってくるし。集まって雨になると。そして水を温めると水が気体になり空気中に入るから水の量が減ると」
「ええ、確かに言われれば、そう思うわね」
「うむ。あくまでそう説明されればな。どうしてマルクは知っている?」
「わかりません」
「そうか聞かなかったのか?」
「はい。でも火の仕組みを説明した時に文献を読んで、考えたと言っていたので。水も水の文献を読んでそう思ったということなのかな?」
「ん。多分そう。マルクは天才」
「そうか。それより火の仕組みだと?」
「ん。火は燃える物、例えば木を燃やす時、木が燃えているように見えて、木が個体と気体に分かれる。その気体が空気とくっつくことで燃えている」
「そうなのか?」
「そうね。それなら燃える時に空気が必要なことの説明がつくわ」
「確かに、空気の薄いところでは火がつきにくい」
「ん。それもマルクは知っていた」
「で、マル君はその仕組みを使って、魔法を再現してみようとしたみたい。水魔法はエルカと比べて。火魔法は空気のないところでできるか?と聞いてきたわ」
「うん?空気の薄いところで火魔法を使ったのか?」
「いいえ、お父様。火魔法は空気のないところでも使えるという事実を教えたわ」
「そうか、水魔法の方は?」
「ん。水魔法と違うものだった。でも一見すると水魔法だった」
「そうか」
「そう、それでマナが何かわかったんじゃないかな?」
「そうなのね。マルクは天才ね。ラルク」
「あぁ。」
あまりのことにラルクは戸惑っていた。女性陣はその凄さに喜んでいるが。
「わかった。メル、エルカもう休みなさい。明日も学院だろ」
「はいお父様」
「ん」
ラルクも疲れていたので、ラルクはこれで終わりにした。
異世界人であるマルクの特異性が発揮されます。言い訳は苦しいのですが、家族は何となくスルーします。家族の優しさですかね。