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成長は主人公だけのものではない。

翌日


朝は訓練をして、学院に向かった。学院は久しぶりに登校ということもあって、生徒が笑顔で挨拶をしている。リオルさんだ。


「おはようございます。リオル先輩」

「おはよう。マルク」

「今学期もよろしくお願いします」


「ああ。シグルソン教官の授業では、また模擬戦をしよう」

「はい」

「やあ、おはよう。マルク、リオル」

「おはよう、ライル」

「おはようございます。ライル様」


「マルク、帰りは問題なかったかい?皆心配していたんだよ」

「はい。少し、魔獣に出会いましたが、問題はなかったです。ライル様は辺境伯領から王都に来られる際は問題ありませんでしたか?」


「そうか。問題なくてよかったよ。こっちも問題なかったよ」

「ルイン様もお変わりなく?」

「ああ。来月来るらしいから、ラルク様のところに行くと思うよ」


「そうですか。父上に伝えておきます。ライル様、今学期もよろしくお願いします」

「ああ。よろしくね」

「マルクは夏休みにライルのところに行ったのか?」


「はい。親戚ですし。祖父母の墓もあります。勉強のためにも伺いました」

「そうか。じゃあ、3年前の戦場も見たか?」

「はい」


「そうか。俺も見てみたいな」

「来年来るといいよ」

「そうか。じゃあ頼むかもしれない」

「わかった」

こんな話を学院の門でして、教室に行く。


教室では皆が夏休みに何をしていたか、どこどこに行ったという話で華を咲かせている。俺が入ると

「やあ、マルク、今学期もよろしく。今学期は負けないよ」

「マーク、おはよう。今学期もよろしくね。夏休みは何してたの?」


「ああ、自領に戻っていたよ。父の後を継ぐために学んでいたよ」

「そうか。頑張っているね。マークはすごいや」

「ありがとう」


「ふふ。今学期も頑張ろう。来年も同じクラスになるといいね」

「ああ。試験で勝って、首席で来年も同じクラスになるよ。マルク、試験を頑張ってね。中途半端に勝っても嬉しくない」

「ああ。もちろん勝つ気だよ」


「はい、皆さん、席についてください。色々と友達と話したいのはわかりますが、ホームルームを始めます。皆さん良い夏休みを過ごせたでしょうか?」

「「「「はい」」」


「そうですか。それは良かったです。ちゃんと勉強はしてましたか?してないと2学期は厳しくなります。夏休みを怠けてしまった方は授業をしっかりと受けて、頑張ってください」

「「「はい」」」


「課外授業を受ける方はこちらの資料を渡します。授業に行く前に来てください。課外授業を受けない方は再来週はお休みになります」

「「「はい」」」


「では、これでホームルームは終わりです」

「「「はい」」」

リア先生は結構人気がある。まあ男子生徒から。


課外授業の資料をもらい、実技の授業へ。さあ今日からまた頑張ろう。

「マルク、今日からまたよろしくね」

「ああ、アレス。今日もコテンパンにしちゃうよ」

「ふ。その口を今日は閉じさせてやる」

「その意気はよし。頑張ろう」


そして実技の授業へ。トーラス先生が来るまで、ストレッチに励む。体がほぐれてきた。アレスも真似てストレッチをする。他の生徒もしている。最近、よく見られている。


「おはよう。皆、体はほぐれているか?今日も走るぞ」

「「「はい」」」

恒例のランニングだ。トーラス先生は徹底して、体力をつけさせる。シグルソン先生もだが、戦場を経験している人たちは全て体力のないやつは直ぐに死ぬという考えだ。


「よし、じゃあ、用意はいいか?行くぞ。・・・よーい、スタート」

俺とアレスはロケットスタートをした。一番を譲る気は無い。


何人かついてきている。夏休みに徹底して鍛えてきたのだろう。ついて来た人たちは走りに無駄がない。結構本気じゃないと3番以下になることもあり得る。これはいい。張り合いがある。こういうのを待っていた。皆で張り合い、高みに登る。それがいい。脳筋かな?

・・・・

・・・・


なかなかついて来る。中々離せない。いいよ。いい。皆、頑張ったんだな。俺も負けられない。もっと、もっと強くなる。強くなりたい。

・・・・

・・・・


1人脱落だ。まだ5人とアレスがついてきている。いつもの半分くらいなのに。いい。まだ張り合える。

・・・・

・・・・


ああ。また脱落か。これで俺とアレスと後1人。ヨークス?ヨークス・カルバインだ。残っているの。びっくりした。変わったのかな?ならいいね。いいスキルを持つ者が強くなろうとする。いい刺激をもらえそうだ。これは負けられない。

・・・・

・・・・


ラスト一周。アレスはまだ息が上がってない。ヨークスも息は上がってない。でも少し辛そうだ。でも置いてくよ。さあラストスパート。

・・・・


くっ。まだアレスがついて来る。もうゴール前だ。最後のスパート。もうこれ以上は無理だ。

・・


はあ。何とか半歩差で勝てた。


「くそ。マルクにもう少しで勝てそうだったのに」

「アレス。すごいや。毎日走ってたの?」


「ああ。毎日、毎日、走って、走って、剣を振ってきたよ」

「そうか。かなりやばかった。正直あれ以上はスピードが上がらないよ」

「そうか。もう少しだね。絶対に勝つよ。今年中、いや今月中に」

「ああ。俺も負けないように頑張るよ」


「はあ。はあ、はあ」

「ヨークス、お疲れ」

「う、マルクか。はあ、はあ、バカにしに来たのか?」


「そんなことしないよ。正直ここまでついて来られるとは思わなかったよ。ラストスパートをかける余裕は残していたけど、それでも結構本気で皆を振り落としに行ったのに、アレスとヨークスに最後までついて来られたのは驚いた。もっと訓練しないといけないって、慢心していた自分を見直すいい機会になったよ。ヨークスは変わったね」

「く、はあ、はあ、はあ、余裕か」


「まあ、ギリギリ息は上がってないくらいだね。でも結構キツイよ」

「く、いつかは、はあ、勝ってやるからな」

「ああ、負けないように訓練するよ」


「よし、ヨークス、いい休みを過ごして来たようだな。変わったな。いいぞ。では次の模擬戦に行く。皆用意しろ。2人一組だ」

「マルク、やろう」


「ああ。アレスに今日も勝つよ」

「今日こそ、俺が勝つ」

「皆、スキルを使って良い。マルク、お前にはいいハンデだろ?スキルなしでアレスに勝て」


俺とアレスは今日も模擬戦をする。アレスはスキルを使って、速さで勝負し始めた。これはキツイ。アレスの速さは先日の魔獣との戦いで見たが、ギリギリ目で追いきれるくらい。少し油断すれば目で追うのも難しい。相当に速い。ここは誘導するしかない。いい訓練だ。


アレスはスキルで撹乱して来る。全く、ついていけない。しょうがないので、俺は少し油断を見せた。そこにアレスが突っ込んで来る。これを待っていた。一気に俺も加速して突きを放つ。しかし、アレスは直前に動きを変えた。騙された。誘導されたのは俺か。く、間に合え。体をひねる。何とか直撃は外した。


肩が痛い。当たったか?でも軽い。掠ったぐらいだな。本物の剣だったら結構いい線をいっていたかも。これは緒を締め直そう。次は、手を読む。ここでアレスは息をした。隙を見せて来た。多分これはブラフ。この次は右に行くはず。呼吸に合わせて、突きを行う振りをする。


やはり左に重心が少し動いた。そこから右に回転して切りおろしだ。アレスは虚をつかれ、一気に体勢崩した。俺はその隙を見逃さずに、一気に突きを放つ。アレスは一歩で体勢を直し、剣で防ごうとする。俺はそれを見て、一気に叩き落としに変える。アレスの右腕に槍先が当たる。アレスは剣を落とした。そして俺は槍先を首に突きつける。


「そこまで、アレス、スキルの使い方、マルクのフェイントを読んだところまでは良い。しかし、その後に自分のフェイントを読まれた。読み合いで負けたな。最初の読み合いで勝ったことで気を抜いたのがダメだ。しかし、その後も諦めずに体勢を直したところは良い。その諦めない気持ちを忘れぬな」

「はい」


「マルク、最初の読み合いはダメだ。安易なフェイントは相手に余裕を与える。しかし、そこから気持ちを切り替えて、アレスの狙いを読み切り、また状況の変化に対応したのは良い。お前の良さは対応力だ。どんな状況でも自分を切り替え、自分を保つ。そして戦況を読み、有利な状況を作り出す。


その努力と力がお前の強みだ。その年では、武術家として、ありえないほどの経験と訓練をしているに違いない。その積み重ねが対応力を生んでいる。もっと訓練に励め。そしてもっと色々と経験しろ。それがお前の強さに変わる」

「はい」


「よし、来週は課外授業だ。この授業の生徒は全員出席だな。その心構えとチームの戦い方を教える。5人1組になれ。俺と模擬戦だ」


俺はアレス、ヨークス、ランニングでついて来た連中と組んだ。トーラス先生との模擬戦前に得意な戦い方を聞き、戦術を組んで戦った。結構いい戦いをしたが、最終的に負けた。


「ふむ。お前たちは自分の良さを知り、それを生かしていた。それは良い。ただし、甘えがある。マルクが突出して強いから、それに頼るところがある。それがダメだ。もっとお互いに補い、お互いに助け合うことだ。1人に頼ったチームは弱い。お互いに補うことで強くなる。それを忘れるな」

「「「「「はい」」」」」

「よし、次」


「「すまない。マルク頼りすぎた」」

「いいよ。初めてだし、お互いの良さをもっと確認すべきだったね。俺も皆がどこまでできるかわからない部分があって頼りきれなかった。お互いの良さをもっと信じることが重要だったね。俺はこれが下手みたいだ。本番で組むことがあったらよろしくね」

「「ああ」」


「マルク、今回はダメだったが、次はもっと強くなって、お前に頼らないようになる」

「そうか、ヨークス。でもヨークスは強くなっているよ。うまくヨークスの良さを生かしきれない状況にしちゃったよ。こっちこそごめん。うまく連携できればもっといい状況を作れたのに」


「いや、俺もそれをすべきだった。その状況を作ってもらうことを選んでしまった。一緒に作り出すべきだった。だが、俺はお前には負けない。いつかお前を超える。その時を待っていろ」

「ああ」


ヨークスは本当に変わった。自分の弱さを認め、そして強さを見つめ直した。だから、いいところを伸ばし、ダメなところを変えようとしている。これは強くなる。いいライバルになりそうだ。マークといい、ヨークスといい、なんといってもアレスも。皆、いいライバルだ。学院に入ってよかった。


「ヨークスは変わったみたいだね」

「ああ、ヨークスに、マークに、そしてアレスといいライバルがいて、学院は楽しいよ」


「そう。今日はごめん。うまく立ち回れなかった」

「大丈夫、課外授業までに教訓にできれば」

「そうだね。一緒に組めるかわからないけど、頑張るよ」


他のチームの戦いを見つめながら、検討をした。そして授業は終わった。いい勉強になった。チームで戦うことは、戦力をしっかりと理解することから始まる。多分、トーラス先生より強い魔獣はでないだろう。だけど、戦力も把握できないまま戦えば痛い目を見る。これはいい教訓になった。


昼食を取りに、食堂に行く。レオナたちと合流して、席に着く。あ、ルドルフだ。ライル様が貴族派と関わって、良くない方向に行っているとか言っていたな。それと、ガリシアン家の兄弟のなんちゃら君とナンちゃら先輩。ガリシアン兄弟に、ルドルフか、彼らはなあ。面倒な人たちがくっついている。ガリシアン家の者が貴族派とかやばくないか?


「レオナ」

「ええ。カークスに、ルークスだね。はあ、面倒になりそうよ」

「そうだね。それにルドルフってことは?」


「多分、ガリシアン家本家の人間が貴族派になっているのかも。もう面倒はやめてほしい」

「そうだね。ハンニバル様とコーネリア様に伝えた方がいいんじゃない?」

「ええ。そうするわ」


「俺も父上に言っとこうか?」

「そうね。でも少し待って。お父様に相談してからにさせて」

「そうか。父上に言えば、ガルド様にも伝わるからね」


「ええ。だからお父様と相談してからにして欲しいの」

「ライル様には言っていいかな?」


「ええ、ライル様はアドルフのことを教えてもらったんだもん。こっちのことも伝えないといけないわ」

「わかった」


本当にまずいことをする。道を間違えていたことに気づいて、正道を歩こうとする者がいれば、反対にくだらないプライドで道を間違える者がいる。人生って難しいなあ。しかし、ルイン様の言う通り、貴族派が消えては湧いてくるな。何か裏がありそうだ。


ルドルフたちに関わらないようにして、昼食を食べて、食堂を後にして部室に行く。


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