ミリアの研究とマナの収束
翌日
今日は、課題授業の準備に入る。課題授業は二学期が始まって2週間後に始まる。そのため、夏休みの間から準備に入るよう言われている。辺境伯領に出かける前に準備は粗方しといたが、直前に準備した方がいいものを少しずつ用意していく。
回復薬などは直前に購入するとして、荷物を入れる袋と動きやすい服、水筒、火起こしの道具、ランタンとこれで大体揃った。後は寝具は学院が貸し出しをしてくれる。魔法が使えたらいらないものばかりだ。後は防具の類とナイフを購入して、槍は自分の物を使えばいいと。
こうして用意は整った。今日は午前中はゼルの用事があるため、午前の訓練はなし。午後に行う。なので、学院に向かう。学院でルーナと合流して先輩にお土産を渡し、研究を進める。かなりいいところまで来ている。トルネストさんの研究に魔法の不可思議な部分というものがあった。ここをもっとじっくりと調べておけばと思うが、焦ったのだろう。何か理由があるのかもしれない。
ルーナだ。
「こんにちは。ルーナ」
「こんにちは、マルク。待ちましたか?」
「いいや。今来たところだよ。じゃあ、部室に行こうか」
「はい」
部室に着いた。
「「失礼します」」
「こんにちは、マルク」
「サリー先輩、今日はいらっしゃるんですね」
「今日だけかな、少し勉強の合間に寄ったの。明日からは受験勉強が忙しいからこないかな」
「そうですか、よかった。これ、お土産です。スピキアーズ領で買った他国の髪飾りです」
「ありがとう、青ね。私の好きな色よ。ありがとう」
「どういたしまして、いつもお世話になっておりますので」
「そんなの気にしなくていいのに」
「ルーナと一緒に選んで買いました。どうぞ大切にしていただけると嬉しいです」
「ありがとう。マルク、ルーナ」
「いいえ。いつもサリー先輩にはお世話になっておりますので。マルクも私も」
「いい子ね。マルクも、ルーナも」
「ミリア先輩は?」
「奥で寝てるよ。ほら、あそこ」
「ああ」
「私は行くね。勉強しなきゃ」
「はい」
「ミリア先輩、起きてください」
「うん?マルクとルーナ?」
「「はい」」
「どうしたの?」
「アレスのスピキアーズ領に行きましたので、お土産をミリア先輩に渡しに来ました」
「うん」
「これ、俺とルーナからです」
「ありがとう」
「喜んでくれて嬉しいです」
「うん」
「俺とルーナは研究しますね」
「手伝う」
「いいんですか?」
「マルクの研究は面白い。それに私の研究は終わった」
「そうですか。なら手伝ってください。ここが最後の難関で、ここを越えれば理論は終了で、実証実験して成功すれば、研究は完成です」
「うん、詠唱と魔法言語の比較が少し、あとは無駄と思われるところを魔法言語で訳すのね?」
「そうです。魔法言語の分類は終わり、不必要と思われる部分はトルネストさんの研究から見つけられました。後は不必要な部分に何が書かれているかです」
「そう、すごい発見。これがわかればスキルありの物もさらに改良できるかも?」
「はい。そう思います」
「トルネストさんの研究の正しい部分を証明できる」
「ええ。父の研究が全て間違いではないと説明できます」
「俺はトルネスト理論を再評価できるよう、少し引用という形で書こうかと思います」
「えっ?」
「ルーナには言ってなかったね。ルーナと俺の合同研究にして、プラス、トルネスト理論の引用をすれば、トルネストさんの再評価になるよ」
「それはダメです。父の理論の引用はいいですが、私とマルクの合同研究はダメです。これはマルクが一から考えた理論です。それを少し手伝ったというだけで私が合同研究者なんて」
「うん。研究協力者とするべき」
「そうですか?」
「うん。流石にマルクの理論がほとんど。これじゃあ、ルーナは申し訳なく思う」
「そうですか。ルーナの協力なしにはできなかったんですが」
「だから、協力者。それでもこの理論の協力者は後世に評価される。そのぐらいの理論」
「そうですか」
「世界の魔法が変わる。それは確か」
「うーん。わかりました。じゃあ協力者で」
「はい」
それから研究を続ける。
「これで比較は終わった。あとは無駄部分でしょ?」
「ミリア先輩、ありがとうございます。これでだいぶ進みます」
「ふう、無駄部分のここが分かりにくいです」
「そこは難しいんだ。ここが何を書いているかだよ」
「ん?マナの収束の計算式」
「え?」
「私の詠唱の研究に出てくる部分、ここの改良を探した」
「どういうことですか?」
「私の今年の研究は、魔法の同一化。同じ詠唱でも皆の威力が少し違う。でも、皆が同じくらいの魔法を撃てれば合同で魔法を撃てると思う。またスキルのない者が、すこしのマナしか持たないものが集まり、上級魔法スキルを撃てる者にマナを預ければ撃てるようになる」
「マナのタンク化ですか?」
「タンク?」
「ああ、タンクは何かを貯める樽のような道具です。マナが少ない者でも誰か1人が上級魔法を撃てるスキルを持っていれば、マナの少ないもの同士が集まり撃てるようにする。他の上級魔法を撃てないものでもマナを貯める器として協力する。そうすれば広域壊滅魔法が撃てるということですね」
「そう」
「すごい。で、その研究で調べた部分が今回の部分ですか?」
「そう。マナを収束・集めさせる式の部分」
「そこが、どういうものですか?」
「うん、式の問題は収束にスキルが関わっている。スキルに頼らないようにできるか?スキルを共有又は全員に覚えさせる方法を探した。で、結局は詠唱を少し変更してマナを操作するスキルを使って共有して、収束を利用する方法を見つけて今回発表する。こういう式」
「はあ。式は・・・・・うん・・・・・うん・・・・・」
「わかった?」
「難しいですね。魔法文字ではどうなっているかは解りました。でもどう変えたらいいかを考えます」
「そう。わかったら教えてほしい。私の研究を変えられる」
「解りました」
こうして研究を進めて、今日は帰った。
午後は訓練だ。ゼルと槍術の訓練とゼルが他の武器を使って攻めてくるのを守ったり、切り返したりの訓練、さらに武闘オーラを利用する訓練、最後に模擬戦をする。
次は魔法とスキルを訓練して終了した。
夕食時
「マルク、魔法の理論はどうだ?」
「もう少しです。あとは詠唱のスキルに依存したマナ収束の部分を魔法言語で変換できれば大丈夫です。魔法言語の魔法が一つでもわかればいいのですが」
「そうか。王宮魔術師での研究を借りれないか聞いてみよう」
「そうね。私の名を使えばいいわ」
「ありがとうございます」
「うむ。そろそろ、いいかもしれないな」
「そろそろ?」
「ああ、マルク、スキルや魔法を使えることを表に出してもだ」
「そうですか?」
「ああ、ゼルも、今のマルクならスキルを使えれば、かなりの相手に戦えると言っておったしな。この前の模擬戦でも、俺もかなり力を使用して戦ったがかなりできた」
「そうですか」
「ふふ。マルク、嬉しそうね」
「はい。スピキアーズ領の帰りに皆を守るのに苦労したので、もっと強くなりたいと思って、スキルや魔法の戦い方も学びたいのです」
「うむ。だがな、俺もゼルも猪の魔獣くらいならばスキルなしでも倒せるぞ」
「はい。そこはもっと磨くことが必要です。スキルに頼りすぎるのではなく、スキルも、魔法も、武術の技術も磨きたいのです」
「そうか。強い敵にあった時のためか?」
「はい。そうです」
「うむ。わかった。では早く魔法理論を完成させろ。そうすれば発表できる」
「解りました」
話は終わり、夕食を楽しんだ後に瞑想と研究をして眠りについた。




