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辺境伯領② 要塞

翌日


朝は兵の訓練に参加して、汗を流した。端っこで基礎をした後、模擬戦に参加して色々な武器の人と戦った。すごく強い人はいないが、皆が戦場で戦える素晴らしい戦士だった。王都で蔓延る貴族派のスキルしかない人たちとは違った。一戦一戦がすごく勉強になる。シグルソン教官に言われた、槍以外の武器への対応が下手だと再度感じた。


「シグルソンが多くの武器で対応力の訓練をしてくれているようですが、やっぱり圧倒的に足りないですね。少しは私も使えるので、王都に戻ったらそちらの訓練も増やしましょう」

「そうだね。やっぱり経験が足りないね」

「ええ」

そんなやり取りをしているが、ゼルは兵たちからどんどんと模擬戦の申し込みを受けている。


こうして朝は訓練して、その後に戦場の見学だ。今日は戦場の地形をしっかりと確認する。要塞から見た景色、要塞の反対から見た景色、敵の陣営があった場所など。


「ここからが一番戦場がよく見えます。まずは戦場を要塞から見てもらいます」

アカードさんの説明で見ていく。

「どの辺に敵がいたのでしょうか?」


「あの辺になります。で、あそこが最初に挑発に乗った相手が攻めてきたところです」

「あの辺ですか。誰が挑発したのですか?」

「ハンニバル様の命令を受けたガリシアンの者らです。その軍がかなり悪い言葉で罵りました。それを受け相手が攻めてきたということです」


「さすが、ハンニバル様ですね。それまでも挑発はしてきたのですか?」

「はい。他の相手を。その日まで、挑発に乗った者は徹底して無視してました。そして当日に急にお前ぐらいしか攻める勇気もないのだろう。いやお前が一番意気地なしか、ともっと汚い言葉で罵っておりました」


「うまいですね。徹底的に無視された挙句に最も酷い挑発とは。挑発に乗るのもわかります」

「その通りです。あれはキツイと思います。数ヶ月無視された人がいきなりの挑発ですから」

「さすが、お父様ね」


「ええ、ハンニバル様はすごいです」

「ふふ、ハンニバル様ほど敵に回したくない人はいませんな。大戦でも軍務大臣が有名ですが、ハンニバル様もすごいですよ」


「その噂はよく聞いております」

「辺境伯領でも戦場がいっぱいありましたからね」

「ええ。師匠。私は直接は指揮を受けたのは初めてですが、噂は凄く聴いてます」


そして次は戦いがあった場所へ行く。ここが戦いの場所。要塞から北西の場所だ。


「ここが最初のぶつかり合いがあった場所です。ここは攻め側には少し登りになります。これも狙いでした。王国兵がいた下り側が有利な場所を攻めさせることで、戦場全体の優位を作るという策です。少し歩いてみましょう」


「どうです。上からでは分かりやすい勾配です。でも帝国側からは分かりにくいでしょう」

「ええ。この勾配は要塞まで続いているんですか?」


「いえ、要塞手前で降ります。最初から降りの手前に位置しておりました」

「そこまで?」

「ええ。マルク様、そこまで考えて策を施したのです。その少しの差が大きな差となり一気に攻め滅ぼすことになります」


この説明はほんの小さな事だから、ほとんど聞けない話だ。レオナは知っていたようだ。ただ、勾配をしっかりと見てた。これを見ることが彼女の勉強なんだな。戦場にしかない雰囲気や差を見ること、これが現地でしかわからないことかな。


「では、これで今日は終わりにして、要塞に戻りましょう」

「はい」

こうして見学を終え、また要塞でゆっくりした。


翌日


訓練から始め、多くの者と訓練で戦い経験をできた。生きた武術はいい。足りない経験をくれる。今日になり、何故か俺も人気だ。昨日までは噂と子供ということで、遠くから見ていたようだ。ただ、強いとわかった人たちから模擬戦を申し込まれた。さすが、戦場で腕を磨いた人だ。見れば、訓練を励んだ武術か、スキル頼りの遊びの武術かは見てわかるようだ。


今日も訓練の後に戦場を見て回る。

「今日は帝国側が陣営を引いた場所を見て回ります」

「「「はい」」」


「帝国側の陣地は、少しだけ攻めづらいところに置かれます。ここに置くように王国側が導いております。ここには北の川から遠く、水を取りづらい。ここに置かせたのもハンニバル様の策です」

「すごい。そこまで」


「続きます。さらに挑発に乗った相手は水場から遠く、一番面倒なところです。ですから、奴の軍を狙ったのです。誰がそこにいようと挑発はそこの位置にいた者と決めておりました。そこに一番挑発に乗る者がついたのです」


「それはすごい。ここまで戦略を巡らすなんて」

「ええ。これは辺境伯軍も驚きました。これで戦争の被害が減るのは明らかです。帝国軍全体が攻めてきた時はラルク様と辺境伯軍が攻めて終わりです。戦う前に勝敗は決まっていたということです」


こんな話を聞いて、戦場を見て回る。水場を取れるところは本当に少し遠い。取りに行くには少し面倒だ。こういう事を見込んで、ワインを水代わりにするとは聞く。これが挑発に乗りやすい原因になるのだろう。そこも読んでいたのか。ハンニバル様はすごいな。


そして、要塞回りを確認して、伏兵の場所を見て回った。これは本当に勉強になった。来てよかった。


そして、あらかた見たところで、要塞に戻って来た。これで全て終わった。

明日は要塞からもう一度、見てみる。それで終了だ。


翌日、訓練は終わり、要塞から戦場を見て、要塞を出て行く。今日は要塞と領都の間の街で一泊してから領都へ帰る。領都に着いたのは昼前で、直ぐに領主邸に着いた。それからゆっくりと4日間を過ごして、朝方に領都を出た。


「では、ルイン様、メリダ様、ライル様、リア様、アカードさん、この10日間ありがとうございました。良い勉強になりました」

「皆様、この度はお忙しい中、歓迎いただきありがとうございました」


「ルイン様、ドンナルナ家の皆様、ありがとうございました。大変素晴らしい日々を過ごすことができました。再度ご感謝申し上げます」

「ええ。また来てね。マルク、レオナさん、ルーナさん」


「ああ、マルク、ラルク兄様やリネア姉様によろしくな」

「はい」

「マルク、レオナ、ルーナ、また学院でね。ゼル、訓練ありがとう」

「「「はい、ライル様」」」


「ええ。ライル様、学院が始まりましたら、どうぞドンナルナ家にお越しください。その際は訓練をして差し上げます」

「そうだね。お手柔らかにね」


「では、ルイン様、メリダ様、ライル様、リア様」

「ああ。またな。マルク」

「また王都でね。マルク」

「また、学院でな」

「うん。再来年はよろしくね」


こうして、領都を出て、スピキアーズ領に向かう。

辺境伯領を出て、スピキアーズ領に着くまで、2日がかかった。領境の宿場街で休み、翌日からスピキアーズ領に入る。その日のうちに、スピキアーズ領の領都に来た。


門で待っていると、アレスとアルフォンス様が来た。

「お待ちしておりました。マルク君、レオナ嬢、ルーナリア嬢、よくお越しで」

「こちらこそ、ご歓待ありがとうございます。忙しい中、お伺いさせていただきありがとうございます」

「「今日はありがとうございます」」


「マルク、レオナ、ルーナ。よくお越しで」

「「「ありがとう、アレス」」」

「では、邸宅へ参りましょう」


領主邸に着くと、アレスの母親と妹が待っていた。多大なる歓迎だ。

「マルク君、レオナ嬢、ルーナリア嬢、アレスと仲良くしてくれてありがとう。アレスが楽しく過ごしているようで、安心だ。また皆優秀でいい刺激をもらっているようだ。よく学んでいる。これも3人のおかげだな」

「いいえ。アルフォンス様、こちらこそ、アレスには助けられてばかりです。またこちらも多くの刺激を受け、勉強になっております」


「ふふ。アレスの言う通りね。王都での噂なんてあてにならないわ」

「ええ、母上。マルクは良き友であり、ライバルなのです。良き出会いに恵まれました」

「エルザ様、こちらこそ良き出会いに恵まれました。今日から数日ですが、よろしくお願いします」

「ええ。マルク君、よろしくね。リネアにもよろしく伝えて」

「母上をご存知で」


「ええ、リネアが宮廷魔術師になった頃にちょっとね。聞いてないかしら」

「はい」

「そう。彼女が王国に来たばかりの頃に戦場に初めて行く際に同じ回復士の部隊にいたのよ。仲良くしていたわ。まあ、あまり過去は話したくないのね。彼女は色々とあるから」


「そうなのですか。母上の過去は大戦で活躍した当時のことしか知りません」

「そう。私もあまりアレスに話してないからしょうがないわね」

「母上、私も知りませんでした」

「そうよね」


「うむ。儂もリネア様もラルク様も知っている。よく戦場で一緒になった。同世代の人間は皆、大戦では会うことが多かった。儂はあまり2人とは話してないがな」

「そうなのですか」

「そうなのですね」


「ああ。もちろん、ハンニバル殿も、マルク・トルネストも知っている。トルネストは同期だったからな。ルーナリアさんには言われたくないことかもしれないが、あいつはいい奴でな。学生時代はよく遊んだ。俺は早くに領主になる必要があったから、大戦中は領主として戦うため、一緒の戦場にはならかったがな。あいつがああなった時に何もできなかったことは悔やんでも悔やみきれないな」


「そうですか。父もアルフォンス様にそう思っていただき、嬉しいはずです」

「そうか。確か、ラルク様も仲が良かったな」


「ええ。そう聞いています。ですから、ルーナリアの辛い時に助けるのが自分の役目だと言っておりました」

「そうか。俺も王都にいればな、助けたが。ラルク様に礼を言ってくれ」

「はい」


「アルフォンス様、大丈夫です。父がそこまで多くの方に慕われていたことは娘として嬉しいです」

「そうか。トルネストに餞ができたか」

「そうね。あなたがアレスから聞いた時の顔は辛そうだったわ」

「ああ。あいつは本当にいい奴だったからな」

そんな話をして歓迎を受けた。


その日は早めに休み、ゆっくりとした。


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