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旅は友連れ

翌日にアレスとライル様の元へ言伝をお願いし、夏休みの中盤に各領を見て回れることになった。それまでは毎日、訓練と研究、来学期の予習というスケジュールで過ごした。


そして辺境伯領への出発当日

「マルク、もう準備は大丈夫?道中は色々と危険な事もあるから気をつけるのよ」

「はい。母上。ゼルもおりますし、大丈夫です」

「そうね。ゼル、よろしくお願いね」

「はっ、リネア様」


「では、母上、行ってまいります」

「ええ。行ってらっしゃい」


まずは、王都の門付近でルーナとレオナと待ち合わせだ。

「おはよう。レオナ」

「おはよう、マルク」


「やあ、君がマルク・ドンナルナ君かな?」

「はい。マルク・ドンナルナです。ええっと」

「ああ、すまんね。ハンニバル・フォン・ガリシアンだ。よろしくね」


「ハンニバル様でございましたか。いつもレオナさんにはお世話になっております。この度は急なお話にもかかわらず、寛容な対応ありがとうございます」

「ふむ。気にしなくていいよ。レオナにとって、戦場を実際に見るのは勉強になる」

「そうですか」


「それに、レオナが褒める君を見てみたかったんだ。それにラルク様のお子様が変な噂があるけど、実際にはどうなのだろうかと」

「お眼鏡には叶いましたでしょうか?」

「ああ。噂はやはり嘘だとわかったよ。ラルク様のお子様がそんな軟弱な筈はないと思っていたけど、会ってみたら、想像以上に強者の雰囲気を持っていたよ」


「そうですか。ありがとうございます。スキルを気にせずに見ていただけ、嬉しいです」

「ふふ。どうだい?レオナと婚約しないかな?」

「お父様!?」


「ハンニバル様、冗談がお好きなようで」

「ふふふ。冗談半分なんだけどね。君はきっと教えれば、いい軍師になる。私の後継者として国のためにレオナと婚姻して、継いでくれるといいなと思ったんだけどね」

そんな冗談をハンニバル様と話していると


「おはようございます。マルク、レオナ」

「「おはよう、ルーナ」」

「お待たせしてすみません」


「大丈夫だよ。少し早く来ただけだから」

「そうね。私もお父様が早く行こうって言うから」


「私のせいかな?ええっと、君はルーナリア・アルメニアさんかな?」

「はい。ハンニバル・フォン・ガリシアン様」

「そうか、レオナのライバルは手強さそうだ」

「お父様」


「まぁ、全員揃ったみたいだし、出発したらどうかな?」

「はい。では、ハンニバル様、行ってまいります」

「ああ。レオナ、道中は気をつけるようにね」

「はい。お父様」


「じゃあ、ルーナ、レオナ、行こうか」

「「はい」」

「じゃあ、ゼル、よろしく」


「それでは、本日より随引します。ゼルと申します。ドンナルナ家の執事をさせていただいております。本日より、再度王都に戻ってまいります時まで、皆様の安全はこのゼルが守りますゆえ、危険な際は私の判断をお聞きください」

「「「はい」」」


「ふふ、最強の護衛に守られての旅だね」

「ハンニバル様、老齢の者を最高の護衛などと」


「ゼル・ドンナルナといえば、レオナルク王国における槍術の伝説。そのゼル殿に守られては、最高の護衛に守られての旅というのもの、全くもって正しいと思うけどね」

「ふふ。まぁ、ハンニバル様がご安心いただけるならば、この老兵も嬉しい限りです」


「ああ。よろしく頼むね」

「はっ」

「じゃあ、行こう。ゼル」


「はっ。皆様は馬車に、私は操者と共に前に乗りますゆえ」

「ああ」

「「はい」」


こうして、旅が始まった。

「ねえ、彼の方がゼル・ドンナルナ様?」


「ああ。ドンナルナの名は捨てたらしいから、今はゼルだね」

「そう。あの槍術の天才、槍無双と言われる」

「そうみたいだね。俺は小さい時からいる執事というのが、当たり前だけど、他ではそう言われてるみたいだね」


「あの、ゼル様に槍術を教えられて来たのですか?」

「うん、ゼルと父上が師匠だよ」

「そうなの。それは強いはずよ」

「そうですね。たしかに」


こんな話や学院の話をして馬車の中で過ごした。道中は危険なことはなかった。王国騎士団の警備部隊が王都やその周辺の領で盗賊や魔物の集落を潰している。その部隊の中隊長が今は兄上だ。


兄上は日々、王都から遠征して、国内の安全を、守っている。その活躍は王都内で評判が良く、出世をしている。この国は道を間違えてもやりなおすことはできる。正しい道を行くことを願えば、やり直せる国だ。


ドンナルナ辺境伯領までは15日ほどかかる。辺境伯領で10日ほどいて、スピキアーズ領に3日で着いて、7日ほど滞在して、10日かけて王都に戻る。これが今回の予定だ。新学期はあと、2ヶ月弱ほどで始まる。学院の夏休みは長い。領に戻る者を考量してだ。


それから8日ほど過ぎた頃


もう少しで、ドンナルナ辺境伯領だな。ルイン様やライル様に挨拶して、辺境伯領を回って、戦場を見る。まぁまぁ、スケジュールが詰まっている。


「次の領を越えると、ドンナルナ辺境伯領です。次の領は、少し荒れておりますゆえ、皆様、お気を引き締めてください。万が一があります」

「ああ、そんなに危ないの?」


「ええ、王国の交通の要衝のため、前は栄えた領だったのですが。前領主がかなりの悪政を引いたために、騒乱となりまして、収まったのですが、盗賊や魔獣が他と比べて多いです」

「そうなんだ。避けられないの?」


「ええ、ここを越えないとスピキアーズ領や辺境伯領に行くには元カルバイン領や貴族派領地を通るか、未開領域や海を通ることになります」

「そうか。わかった。気をつけるよ」

「ええ」


そんなやり取りがあったが、実際には数匹の魔獣と遭遇しただけだ。俺とゼルが槍術で倒した。まあ、うさぎと猪の魔獣が単体ではこんなものだろう。


猪の魔獣と戦った時は

「強いわね。マルク」


「ええ、猪の魔獣はかなり強い部類に入ります」

「まあ、ほとんどゼルがやったけどね」

実際にゼルが一突きで相手を弱らせ、俺が一突きで殺し、血抜きをして夕食に食べた。ゼルの手柄だよ。


こうして、辺境伯領に着いた。辺境伯領の領都オルガは、かなり発展していた。

「すごいね。王都も発展しているけど、オルガみたいに近いところには敵、魔獣はいないし、この街はまた異なる雰囲気の街だ。」


「ええ、この街は王国の守備の要と共に帝国や商業都市国家群や小国国家群との貿易の要の都市でもあります」

「そうだね。でも、戦争も多い地域だから発展するには難しいと思っていたよ。実際に来てみるとわかることも多いね」


「マルクはもっと訓練以外のことも勉強した方がいいわね」

「そうですね。マルクの常識知らずは直すべきところです」

「う、そんなに常識ないかな?」


「本人は気づかないってやつよ」

「そうです」

「私が至らぬために、マルク様に申し訳ありません」

「ゼル、そこで謝ると、俺が不憫な人になるから」

「「ぷっ」」


「ふふ。申し訳ありません」

「ゼル様とマルクは祖父と孫みたいなね」

「そうですね」


「まぁ実際にゼルは俺の大叔父にあたるからね」

「「そうなの(ですか)?」」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「初めてね」

「ええ」


「そうか。ゼルは俺の祖父の子供で、元はドンナルナ家の分家筋にあたるんだ。父上が家を出る際に教育係だったゼルがついて来てくれて、今は家臣になったって感じだよ」

「そうなの」

「そうなんですね」


そんな話をしながら、領都の門で待っていると、

「マルク・ドンナルナ様、レオナ・ガリシアン様とその御付きの皆様、領主ルイン・フォン・ドンナルナ様とライル・ドンナルナ様が邸宅にて歓迎をしますゆえ、お迎えに参りました」

と領兵と家臣の方がいらっしゃった。


「ふむ、アカードよ、久しいな」

「ゼル師匠、お久しぶりでございます。マルク様はどちらに」

「マルク・ドンナルナでございます。アカード・マリード様」


「マルク様、私はドンナルナ家の家臣です。敬語はおやめください」

「わかった。アカードはゼルの弟子なのか?」


「ええ。若い時に扱かれ、今はドンナルナ軍の筆頭将軍をさせていただいております。マルク様とゼル師匠がいらっしゃると聞き、参上しました」


「そうか。まあ立ち話もあれだから、まずは領主邸に案内を頼む」

「はい。お気を遣わせてしまい、すみません」

「いや、懐かしい出会いであろう。よい。では」

「はっ」


こうしてアカードに先導され、領主邸に向かった。入ると

「やあ、マルク、ゼル。それにレオナ・ガリシアン嬢、ルーナリア・アルメニア嬢、良く来た」

「「初めまして、ルイン・フォン・ドンナルナ辺境伯様。この度の訪問をお許しくださり、ありがとうございます」」


「うむ。構わない。楽にしてくれ。レオナ嬢、ルーナリア嬢」

「「はい」」


「お久しぶりです。ルイン様、この度は訪問をお許しくださり、ありがとうございます」

「マルク、大きくなったね。半年ぶりかな」

「ええ、今年の初めに王都にルイン様がいらっしゃった時以来かと」

「そうか。子供は数ヶ月で大きくなるね」


「そうですか。お褒め頂き有り難いです」

「マルク、よく来たわね」

「メリダ様、この度は訪問をお許しくださり、ありがとうございます」


「いいのよ。あなたとドンナルナ辺境伯家は親戚よ。それにあなたの祖父母様の墓もあるの、遠いから難しいけど、気軽に来ていいのよ。それに、私とライル、ルドルフ、それに再来年にはリアまでラルク様やリネア様にお世話になるの。気にしないで」

「そうだな。ラルク兄様やリネア姉様には世話になりっぱなしだ。マルクを面倒みたところで、恩は返しきれん」


「そう言っていただき、幸いでございます。それこそ、親戚ですので王都でのことは当たり前のこと」

「そうか。しかし、マルクは立派な話し方ができる。いっぱしの貴族として十分な資質を有するな」

「ライル様の真似をしております。学院にはライル様といういいお手本がいらっしゃいますゆえ」

「そうか。ライル、頑張っているようだな」


「父上、マルクがお世辞を言っておるだけです」

「いいえ。ライル様には学院でお会いする際に、いつもよくしていただいております。貴族派から嫌がらせをされている時も庇っていただいたことが多々あります。その時の立ち振る舞いは、さすがの一言です」

「そうか」


「ふふ。ライルも、マルクが可愛いのね」

「そんなことありません。ルドルフが可愛くないだけです」

「ライル、そう言うな」


「ルドルフはどうされたのでしょうか?」

「あいつは、なんだか理由をつけて帰ってこないようだ。どうも貴族派の連中と仲良くしていてな。少し心配している」


「そうですか。最近は貴族派は静かですが」

「ああ。だが、何故か湧いて出てくる。レオサードを退治したと思ったら、ガルバイン。その次が出て来そうな雰囲気だ。マルクも気をつけろ」

「はっ」


「まあ、つまらん話は終わりだ。宴を用意した。家族と君たちだけだ。ライルやマルクの学院の様子などを聞かせてくれ」

「はい」


その後は宴会で、学院の様子や母上の授業の話、ライル様や俺の様子などで盛り上がった。母上の授業の話ではリアやメリダ様が目を輝かせていた。やっぱり、母上は女性人気がすごい。


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