気の合う仲間 夏休みの計画
食堂に着いた。2人はまだいないようだ。部室で夏休みの予定を聞いているのかな?2人の部活動は夏休みに合宿しそうだ。魔術詠唱研究会はないけどね。
2人が来た。
「あれ、一緒だったの?」
「ああ、食堂の前で会ったんだ」
「そうか。部活は夏休みはどうだって?」
「ああ、合宿はあるらしいけど、領地に戻る人は行かなくてもいいって」
「そうか」
「私の部もそうらしいわ」
「そうなんだね。魔術詠唱研究会は合宿はないけど、自由に部室に来ていいって」
「そう。マルクはどうするの?」
「うん。特に行くところもないから、父上に聞いて予定がなければ訓練と学院での研究をする予定かな。みんなは?」
「私は、お父様と領地に戻るわ」
「俺も領地に戻るね。色々と学ばなくてはいけないからね」
「私は、お母様に会いにルクレシアス領に行きます。その後はある程度したら、戻ってきますね」
「そうか。みんな王都以外に家族がいるんだよね」
「「ええ」」」
「ああ」
「いつ行くの?」
「四日後だね」
「私は1週間後ね」
「私も1週間後です。ルクレシアス領は近いので」
「そうか。じゃあ。今日くらいは遊べるね」
「「ええ」」
「そうだね。どこに行く?」
「うーん、どこに行こうか?」
「懐かしいわね」
「もう3ヶ月も前なんだね」
「どういう事ですか?」
「入試の合格発表の後にね、マルクがどっか行こうって言ったんだけど、予約も何もしていないし、どこに行くかも決めてないんだ」
「そう、それを見越して、アレスが自分の領の塩や砂糖を卸している喫茶店を予約してくれていてね。あの時はアレスがいなかったら、困ってたの」
「マルクらしいですね」
「でしょう?」
「はい」
「もう、昔話はいいよ。どうしようか、アレス?」
「はははっは。結局、俺頼りなんだね」
「う、いいから。早く決めようよ。もう。レオナも、アレスも前のことを気にしすぎだよ」
「いや、今もそうだよ」
「わかったから」
「ふふふ。そうね。母上から聞いたところはどうかな?」
「どこですか?」
「あの有名店よ」
「もしかして、あのレストラン?」
「そう」
「でも入れないんじゃないですか?確か、予約が取れないとか?」
「大丈夫。ここにはマルクがいるから」
「え?俺?」
「そうほね。そう、マルクというより、リネア様ね」
「そうですね。リネア様の関係の店ですからね」
「どういうこと?」
「知らないのですか?リネア様が王都を守ったのは知っていますよね?」
「うん」
「その時に危険になったのが、あの店『シューガルト』のオーナーの娘さんで、結構命が危なかったらしいですが、リネア様が魔法でその命を救ったらしいのです。かなり力を使って、倒れたらしく、それ以来、戦場には出なくなったという話です。だから、ドンナルナ家の方は予約もなしに入れるらしいです」
「そうなんだ。じゃあ、母上に伝言を頼んだ方がいいかな」
「その方がいいかもしれませんね」
「そうね。そうしてくれる?」
「ああ、いいよ。じゃあ、一度帰るから、2時間後にいつもの噴水前にしよう」
「そうだね」
「そうですね」
「わかったわ」
「じゃあ、後でね」
家路につく。母上の執務室へ
「母上、ただいま戻りました。アレスたちに聞いたのですが、シューガルトというのはご存知ですか?」
「お帰りなさい。知っているわよ。どうしたの?」
「はい。一学期終了ですので、アレス達と遊ぼうとなったのですが、シューガルトというお店に行ってみることになったのですが、母上の伝手があれば予約できるとお聞きしたので」
「そう。できるわ。あそこの娘さんを助けたお礼にいつでも空けてもらえる個室を用意してくれたの?半分は宣伝も込みね。私が御用達という。だから一声かければ、できるわ。予約する?」
「はい。お願いします」
「わかったわ。そういえば成績はどうなの?」
「あぁ!全て最高評価で首席でした」
「そう、じゃあ、今度のラルクのお休みはお祝いね」
「ありがとうございます」
「アイナ、じゃあ、予約の件と今度のお休みの件、よろしくお願いできるかしら?」
「はい。リネア様」
「ありがとう」
予約できた。よかった。あ、もう一つ聞かないといけない。
「母上、そういえば、私は夏休みに入りますが、どこかに行く予定はありますか?」
「どこか行きたいの?」
「いいえ。特にないなら辺境伯領とアレスの領を見学に行ければいいなと」
「そう。いいんじゃないかしら。何処かに特別に行く予定はないわ」
「そうですか。では今日、父上の許可を頂けるか聞いてみます」
「ええ」
こうして、母上にお店への予約を取ってもらい、噴水の前に時間通りに向かう。噴水には
「アレス、もう来てたんだね」
「ああ、マルクも早いね」
「うん。母上に予約をしてもらったから、遅れるのもダメかなと思って」
「そうだね」
「マルク、アレス、こんにちは」
「ああ、レオナ」
「マルク、アレス、こんにちは」
「こんにちは、ルーナ」
「マルク、予約はどうだった?」
「問題ないって。もう頼んであるよ」
「そう。ありがとう。じゃあ行きましょう」
お店に着いた。お店はすごく混んでいるが、俺たちは、他のお客さん達が訝しげに見る中、奥の個室に入る。その個室は母上のトレードマークと言われる杖の絵柄が部屋の前に描かれている。他のお客さんは、俺がその部屋に入ることがどういう事かを理解したのか、ざわついた。
「マルク・ドンナルナ様、こちらでゆっくりとお楽しみください」
「ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ、当店を利用いただき、ありがとうございます。リネア様のお子様にご利用いただくこと、心より嬉しい限りです」
「やっぱり、すごいね。本当に予約の取れないお店だからね」
「ああ。リネア様の関係者以外は貴族でも数ヶ月待ちとも言われるから」
「そうなんだ。なんだか申し訳ないなぁ」
「いいのよ。お店も恩返しになるわ」
「そうです。このお店のオーナーは、娘さんを助けられてから恩返しができないと嘆いていたらしいですから」
「そうか。じゃあ楽しもうか」
「「ええ」」
「ああ」
それから学院の話や部活、流行り物の話など、学生らしい話を楽しんだ。レオナはの教員の話は長いとか、アレスは学食の新たなメニューはどうたらこうたらと、俺とルーナは聞き役だった。
「そうそう。今日、父上に許可を取って、夏休みに辺境伯領とアレスのスキピアーズ領を観光に行こうかと思っているんだ」
「え?そうなの。面白そうね」
「ええ、面白そうです」
「そうでしょう?」
「マルク、急に言われても困るよ。こっちの準備もあるんだ」
「アレス、あくまで、領に見学や観光に行くだけだから、おもてなしは要らないよ」
「うーん。そうはいかないんじゃないかな。ドンナルナ領に行ったら、きっと歓迎されるよ。それなのに、当家が歓迎しないとまずいんじゃないかな」
「うーん。そういうもの?」
「そうですね。スピキアーズ家はドンナルナ辺境伯家と懇意になされているとお聞きしました。そのドンナルナ家の分家の子供がスピキアーズ領を訪れて、それで何もしない、もしくは盗賊にも襲われたら、かなりマズイかもしれません」
「そうだよね。マルクが来るなら、うちの準備が整うのを待ってよ」
「わかった。まぁ父上の許可をもらってからだけど、明日にも許可をもらえたら、アレスの家に言伝を頼むよ」
「そうしてくれると助かる」
「わかった」
「それ、私も行ってもいいでしょうか?」
「ルーナも来る?」
「はい」
「いいよ。俺はその方が嬉しいね。アレス大丈夫?」
「多分、大丈夫かな。準備さえできれば数人は増えてもと思うよ」
「じゃあ、私も参加するわ」
「レオナも?大丈夫なんだね?自領で色々とやる事があるんじゃない?」
「大丈夫。お父様に許可をもらうわ」
「わかったよ。じゃあ、とりあえず父上の許可をもらったらもう一度予定を合わせないとね」
「「ええ」」
それから、スピキアーズ領について話した。スピキアーズ領は、塩と砂糖を作る数少ない領で、海に面している領だ。辺境伯領の南西にある。海岸線沿いの領地で、海の先の小さな島々も領地にしている。
もともとはレオサード家(前公爵は婿入りで、直接の血が繋がってない)の系譜に入る親類筋だが、南の海岸線に出ていた海賊達を成敗し、従わせたご先祖が今の領土をもらい、独立した家がスピキアーズ家、そのスピキアーズ家が従わせた海賊衆の子孫と共に海運や塩の生産などで成立している領地だ。砂糖は島々で取れる植物からできるものだそうだ。
「じゃあ、今日はこのくらいかな。今日帰ったら父上に許可をもらえると思うから、明日には言伝をお願いして、伝えるよ」
「わかった。来る場合はすぐに伝えてね」
「ああ、辺境伯領にも行く旨伝えなきゃだよね」
「そうだよ。あちらの事情があるから、スピキアーズ領はそれに合わせるようになるとは思うけど」
「そうか。わかった」
こうして、夏休みの計画を決め、話は終わった。俺は家路に着いた。
家で、父上に許可をもらい、夏休みは辺境伯領とスピキアーズ領に行くことになった。




