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己が道を行く。

兄上の婚姻の挨拶から3週間が経った。王宮で大きな出来事があった。ガルバイン家が取り潰しになった。学院の理事長はそれに伴い、宰相の叔父で、ガイル・フィン・ルクレシアス様になったとのことだ。よくは知らない方なのだが、ガルド様の叔父ならば大丈夫だろう。御三家の出身だしね。


俺は朝の訓練を終えて、朝食を食べて、学院に向かう。校門でルーナと会った。

「おはようございます。マルク」

「おはよう、ルーナ」

「今回はありがとうございます。リネア様とラルク様に感謝をお伝えください」


「ああ。でも俺は何もしてないよ」

「いえ、マルクのおかげです。マルクがリネア様やラルク様に動いてもらえるようにしてくれたからです。私が辛い時も、裏切ったと知った時も変わらずに手を差し出してくれたからです」


「そう?でも、ルーナが正直に話してくれたからだよ」

「ありがとうございます」

「ああ」


「おはよう、マルク」

「おはよう、レオナ」

「おはようございます。レオナ」


「おはよう、ルーナ、もういいのね」

「ええ。ご心配をしていただき、ありがとうございます」

「ええ。よかったわ」


「これで、食堂で食べれるね」

「マルク、気になるのはご飯のことですか?」


「ぷっ。ははは。マルク、他にも聞くことがあるわよね。それがお昼ご飯を食堂で食べれるって」

「そうです。本当にそういうところは変です」

「おはよう、マルク、レオナ、ルーナ」

「「「おはよう、アレス」」」


「ルーナ、どうやら大丈夫みたいだね。ご家族は大丈夫?」

「ほら、マルク、こういうことを聞くのよ」


「ふ、アレス、大丈夫です。母はガルド様の領地で文官をすることになり、私はガルド様の支援のもとで、このまま学院に通えることになりました」

「だって、俺は先に父上に聞いたんだよ。その話を」


「もう、それでも直接聞くのが大事なの?」

「ルーナ、そうなんだね。よかったね。レオナ、何があったのかな?」


「マルクがね。ルーナが大丈夫って言ったら、『これで、食堂で食べられるね』って言うのよ」

「ああ、マルク、それはダメだよ。知っていても、ちゃんと聞かないと」

「えっ?」


「はあ。これはわかってないね。レオナ、言っても無駄だよ」

「そうみたいね」

と怒られているのか、呆れられているという感じでお説教が始まりそうだ。


「はい、席についてください。ホームルームを始めます」

とレア先生が入ってきてくれてアレスとレオナのお説教は終わった。


「・・・というわけで、今日のホームルームは終わります」

何故、お説教を受けているのか考えているとレア先生が何を言っていたか聞いてなかった。


「ねえ、アレス、レアリア先生は何を話してたの?」

「マルク、聞いてなかったの?」

俺とアレスはシグルソン教官の授業に向かいながら、話している。


「ああ、さっきアレスたちのお説教を何故されたのか?考えていたら、聞いてなかった」

「はあ〜。しょうがないなあ。理事長が変わったことと、試験についてだよ」

「試験?ああ、学期末の試験についてね」


「そう、再来週から始まるから勉強しておくようにって」

「ああ。そうか」

「試験の方法とか、採点とかについてわかってる?」

「大丈夫だよ」


「そう。ならいいけど」

試験は、講義によって形式は様々で、〇〇ができたら合格など色々だ。ただ、多くの授業は筆記と普段の授業での達成度又は成長度で決まるとのことだ。俺は〇〇できたらはスキル絡みだと辛いな。シグルソン教官の講義の教室に着いた。講義に向け体をほぐす。


「授業を始める。試験の件は聞いているな。この授業では、試験はない。一年間授業についてくれば良い。それで合格だ。いいな」

「「「「はい」」」」

去年もこの形式だったらしい。レオル先輩から聞いた。


「では、いつも通り走れ」

今日も動けなくなるまで走る。この授業の常だ。他の講義の生徒から地獄の授業と言われているが受けている俺たちはてんで気にしてない。何せ当たり前だから。戦場では動き続けられないものから死ぬ。だから、動き続けられる時間を伸ばす。


そして、ここにいる生徒は皆、強くなりたいから受けている。そこに楽になんて言葉はない。だったらシグルソン教官の授業は受けない。


「はぁはぁ」

だんだんと息が上がってきた。足の裏や脹脛がピクピクし始めた。まだまだ終われない。俺の肺、俺の足よ、もっと踏ん張れ。


「えごん」

誰かが咳き込み始めた。そろそろ皆んな限界が近づいてきた。でも誰がなど見る余裕などない。最近は皆、スタミナがついてきて、とにかく走れる。だから、最初のように俺だけは少し余裕があるなんて状況じゃない。


「まだ、終わらんぞ。もっと動け、走れ」

喝が飛んできた。ここで弱音は吐けない。この走るというのは精神的にきつい部分もあるが、同様に自身との会話ができる。他のことなんか気にしている余裕なんかない。


最近わかったことだが、疲れるとどうも前世の記憶を思い出す。今まで、曖昧な知識が明確になる。それが研究に役立ったりする。この時間が意外に好きなんだ。


「おい、マルク、レオル。余裕がありそうだな。お前らはもっと速度を上げろ」

「「はい。教官」」

くそ、考え事に集中しすぎた。スピードを上げる。


「く、マルクはまだ余裕があるか」

「レオル先輩お先に」

レオル先輩を置いていく。かなり限界に近いスピードだ。あとどれくらいで終わるだろうか。先生もちらほら、時計を見てる。なんだか、視界がクリアになっていく。時間がゆっくりと流れるようだ。だけど、俺のスピードは他よりだいぶ速い。


これはたまに来る集中力が高まった状態、前世で言うところのゾーンだ。最近は、これが入るとゼルにもかなりいい一撃をくらわせられるようになった。勝てないけど。


「よし、終われ」

「「「「はぁはぁ」」」」

皆んな、喋る余裕がない。毎回こんな感じになる。


「よし、すぐに次の用意しろ。組手だ」

「「「「「「「「「は、い」」」」」」」」」

「マルク、お前は儂とだ。すぐに用意しろ」

「はい」


「もういいか」

「はい」

「始めるぞ」

シグルソン教官が今回はずっと攻めて来る。俺の場合には、基本的に実践経験と槍以外の武器への対処経験が足りない。つまり、相手からどう攻めて来るかを知らないから、観察をしないといけない。


それが問題となる。そこで、最近の授業ではシグルソン先生は様々な武器で攻めてくれる。それになれ、槍以外の武器にも対処できるようにするのが今は重要と言われ、毎回痣を作りながら受けている。側から観ると、一方的な扱きに見える。でもシグルソン教官は俺のためにしてくれる。だから信じている。


「よく耐えた。大分、斧には慣れてきたな。槌にも慣れたしな。そろそろ剣で本気で打ち合うか」

「本当ですか?」

「それで、喜ぶのはこの講義を受けるやつでもお前ぐらいだ。周りを見てみろ」

皆んながうわあって顔でこっちを見ている。


「よし、皆終わったな、それでは勝ち抜きを行う。いつも通り、アレス、お前から始める」

「はい」

最近は授業がスムーズなため、今回のように勝ち抜き戦をやる。順番はアレス、クリス先輩、ラックス先輩、ルクス先輩、ジンダ先輩、ジュライ先輩、カリウス先輩、レオル先輩、俺、教官の順番だ。まあ、いつもシグルソン教官が一回りして終わる。


今回もそうだった。俺もボロボロにされた。レオル先輩もかなりできるので、そこで体力を使ったところで、シグルソン教官は無理だ。どう考えても無理だ。でも、そこに少しでも力を残さないと戦場では死ぬかもしれない。どうするかを考えていかないと。


授業も終わり、汗を拭いて着替え、昼食を食べに食堂に行く。食堂で嫌がらせを・・受けない。理事長がヨーゼフ・ガルバインからガイル・フィン・ルクレシアス理事長に代わり、貴族派やスキル重視派の連中はかなり静かになった。というか見ない。そのおかげで、楽しい学院生活を送れるようになった。


「マルク、アレス、お疲れ様」

「マルク、アレス、お疲れ様です」

「ああ、レオナ、ルーナ、お疲れ様」


「レオナ、ルーナ、お疲れ様。授業はどうだった?」

「アレス、変わらないわ。でも貴族派が静かになって、少しいいかもね」

「ええ。貴族派が静かになったというか、いなくなりましたので、かなりいいです」

「そう。よかったね。ルーナが問題ないならいいね」


「マルク、ルーナの心配だけかな?」

「うん?レオナも授業に集中できてよかったね」

「ええ」


「マルク、この後はどうするの?」

「部室で研究をするよ。アレスは授業でしょ?」

「そうだよ」


「そうだよね。1人静かに研究だね」

「私は午後授業がありませんので、研究を手伝います」

「ありがとう」


「私も手伝おうかしら?」

「レオナは授業だよね?」

「そうね。なんだか、ルーナばかりだから」

「ふふ。レオナ、まぁまぁ」


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