アレスとレオナ
友人のとのほのぼの回です。
昼食を食べた後は、アレスとレオナと合格祝いだ。友人と遊ぶのはしたことがないから、かなり嬉しい。家族かゼルかアイナぐらいしか話し相手もいなかったから。まあ、たまにアレスやレア先生は手紙をくれたが、それぐらい。年が近く仲が良く、一緒に出かけるというとリリアぐらい。でも従者になるから、俺には敬語だし、出かける時は一歩引いてくれるんだよな。そうじゃないと初めて。友達と遊ぶというのは初めてだ。
「行ってきます。父上」
「ああ、気をつけてな」
「ふふ。友達が嬉しいのね」
「ええ、初めての友達と遊ぶのです。昨日から興奮していました」
「まあ、それは良かったわね」
「はい、母上」
急ぎ、ドアを出て、街へと向かう。ここから待ち合わせ場所は歩いて数分だ。早く、遊びたい。そう言えば、前世の記憶でもこんなことはなかった。だから、どうやって遊ぶのか知らないな。何をするんだ。確か、姉貴が持ってた雑誌には、カフェ?に行くんだよな。お菓子が置いてあって、コーヒーとか紅茶とか頼むところだよな。行ったことないからな。こっちの世界にそんなのあったかな?
あっ、噴水だ。まだいないかな?なんか楽しみだから、早く来すぎたみたいだ。なんか俺だけ楽しみみたいで恥ずかしい。
まだかな。
「マルク、早いね。私も結構急いで来たんだけね」
「レオナ。いや、同世代の友達と出かけるって初めてで、早く来すぎたみたいだ」
「そう」
んん?俺、何か変なこと言った?レオナがおかしい。まぁいっか。
「アレスも、もう来るかな?」
「そうだね」
「やあ、マルク、レオナ。早いね」
「うん」
「友達と遊べると思って、楽しみで早く来ちゃったんだ」
「そういうのは、恥ずかし気もなく言うとこっちが恥ずかしいから」
「え?そうなの」
「マルクは友達少なそうだから、知らないんだね」
「う、どうせ少ないよ。スキルのせいで、ほとんどの人がなかなか仲良くしてくんないんだよ」
「ごめんよ。拗ねるなよ。マルク」
「うん。いいよ」
「マルク、どこ行くの?」
「レオナ、こういう時って、どこ行ったらいいの」
「え?決めてないの?」
「うん、遊びに行くことばかりに気を取られて、ごめん」
「えー」
「まぁまぁ。友達が少ないマルクなんだ。許してあげてよ。そのかわり俺が予約しといたから」
「アレス。マルク、ちゃんと人を誘う時は店を決めておくの」
「はい」
「ははは。まぁマルクも勉強になったね」
「うー」
「まぁ、行きましょう。ほらマルクも機嫌なおして」
「うん」
こうして、アレスが予約してくれた喫茶店に来た。やっぱりカフェだ、カフェに行くんだ。こういう時は。勉強になった。
「この店、うちの領地で取れる、塩と砂糖を仕入れてくれる関係で、王都に来ると寄るんだ」
「そうなの。ここ、人気店よ」
「ああ、そうみたいだね。よく知っているし、スピキアーズ家には融通を利かせてくれるんだ」
「いらっしゃいませ」
「やあ」
「アレス様、お久しぶりです。当主様はお元気ですか?」
「ああ。塩と砂糖はどう?」
「はい。ちゃんと今月も良いものを入れていただき、有難いです。スピキアーズ領産は、本当に良い塩と砂糖です」
「それは良かった。予約しているんだけど」
「承っております。どうぞこちらに」
「初めて来たよ」
「えっ、マルク、王都暮らしだよね?」
「うん、父上は法衣貴族の子爵家で、元近衛副隊長、今は近衛隊の騎士だからね」
「ここ、王都では1、2を争う人気店だよ?」
「レオナ、そんなに言わなくても人気店なのはわかるよ。でも、街には武器屋か本屋か魔道具屋しか行かないんだ。そもそも、外でどうこうするような用もないし、それより訓練や勉強してるよ」
「はあ、訓練バカの生真面目なんだね」
「マルクらしいよ」
「レオナも、アレスも。そんなにおかしい?」
「「おかしい」」
「えー」
「ははは。本当に面白いよ、マルクは」
「そうね。変な噂しか聞かないから、マルクのこと会ったらはどうしようかなと思ってたけど、こんなに面白いなんて。改めて、友達としてよろしくね」
「ああ、そうだな。マルク、レオナ、よろしく」
「友達じゃなかったの?友達と出かけられるって、昨日は寝付けなかったのに」
「ふふふ。ううん。友達だったよ」
「ああ、友達だったよ。これからも友達だよ。ていうか、そういうのは恥ずかしいから、言わないようがいいよ。マルク」
「えー」
「ふふ、マルクらしいからいいんじゃない?」
「まぁそうか」
「もうなんなの2人とも」
「ふふ、まぁまぁマルク、ドードー」
「馬か」
「ははは。本当にマルクは面白いや。すごいんだか、ポンコツなのか」
「ポンコツ言うな」
2人ともよく笑うな。よかった。友達ができて。俺も楽しい。
「そうそう、マルク、試験成績は聞いた?」
「うん、受付で成績は筆記も実技もトップだけど、スキルで首席じゃないって」
「実技も、すごいな」
「ええ、筆記も実技も負けたかぁ、勝てると思ったんだけどね」
「あのルクレシアス家のご令嬢に家庭教師をしてもらっていたんだって、しょうがないよ。レオナ」
「え、ルクレシアス家の」
「うん、レアリア先生ね。今年から学院の教員になるらしいよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
「手紙で教えてくれなかったじゃないか」
「手紙を出した後に、本人から聞いたんだ。しょうがないだろ」
「そうか、それなら」
「他にも学院に知り合いとかいるの?」
「いるよ。一つ上に、ドンナルナ辺境伯家嫡男のライル様が」
「そうか、ドンナルナ家の嫡男か、親戚だもんね」
「うん。レオナは?」
「まぁ本家の方がいるわ」
「あまり、本家と仲良くないの?」
「ええ、下に見られるのよ。叔父様はそんなことないんだけどね」
「ああ、そうなんだ。うちはルイン様と父上が兄弟みたいに仲がいいから。そんなことないけど」
「まぁ、レオナ、そんなものだよね。うちも元は、レオサードの外縁に当たるんだけど、領地が遠いし、元公爵が当主になってからはいい噂もないから距離を取って来たんだ。今はむしろそれでよかったし、ドンナルナ辺境伯家の方が近しいよ。領地もお隣だし。分家の方を当家に向かい入れているしね。ライル様は知っているよ。小さい頃から良くしてもらってる。弟のルドルフ様はね、マルク」
「ああ、あのおバカさん」
「マルク、口に出しちゃダメだよ」
「はは、ごめん。でもライル様を知っているとは知らなかった」
「ああ、マルクを驚かそうと思って黙ってたんだ」
「そうなんだね、でもライル・ドンナルナ様と会う前に言ったらダメなんじゃない?」
「あっ」
「ははは、アレスが失敗した」
「ライル様に何て説明したらいいんだ」
「しょうがないな、驚いてあげるよ」
「マルク、頼むね。ちゃんと演技してね」
「ああ、このマルク様の演技を信じなさい。マルク・ドンナルナだぞ」
「ああ、心配になった」
「試してみたら、マルク、驚いた演技してみて」
アレスにそう言われて、驚いた演技をしてみた。
「・・・ダメだ」
「えー」
「うん、酷い。大根ね。演技が大根よ。それも酷い大根だわ」
「うるさい、大根大根言うな」
「やはり、ポンコツだ」
「わかったよ。兄上やゼルと訓練してくる」
「ふふふ。訓練って。そうね。それがいいわ」
「頼むよ。マルク。ライル様のご機嫌を損ねたら色々とマズイんだ」
「大丈夫だよ。ライル様はそんな人じゃないよ」
「ああ、わかっているけど、スピキアーズ家はドンナルナ家との付き合いが重要なんだよ」
「わかったから」
「ああ、すまない、マルク」
こうして他にも色々と話をした。すごい楽しかった。そんな時間は早い。
「あっ、もうこんな時間ね」
「ああ、あんまり遅くまでいると迷惑だし、帰ろうか」
「うん、そうだね。レオナ、アレス、今日はありがとう」
「ああ、マルク、レオナありがとう」
「そうね。マルク、アレスありがとう」
「出よう」
「そうね」
「そうだね。これ以上は心配されちゃうな」
そして出ようとすると問題が起きる。
「おい、あんなガキが奥の部屋を使っているのに、俺たちにはダメなのか」
「予約されていらっしゃる方です」
「予約だ。この店はガキに予約させるのか?王都一の人気店がそんなんじゃなぁ」
「「ああ」」
「私どもはお客様を選びません。ちゃんとルールを守られる方は、皆、お客様です」
「それじゃあ、俺らは客じゃねえってか。ルールも守れねえってか?」
はあ、なんて礼儀のない。最低だな。
「いえ、あくまで、あのお客様方はルールをお守りになって、当店で良い時間を過ごしていただいたということです」
「ああ?さっきからいちいち?俺が誰か知ってんのか?」
ああ、そのパターンはダメなやつだ。
「いえ、浅学で申し訳ありません」
「俺はな、レオサード公爵家の縁戚に当たる帝国貴族の者の親類だぞ」
はぁレオサード公爵家の帝国貴族ときた。
公爵家はもうないし、帝国貴族の親類とか設定過多で、お腹いっぱいな人だな。多分、公爵関係の庶子とかだろう。氏があるかないかくらいの人だろうけど、王国内の事件に詳しくないんだな。ほら周りのお客様が笑っているよ。王都の民は、噂なんか早いからね。ていうかこの人が遅すぎだよ。
「あっ、お前、見たことあるな。確かレオサード公爵の外縁のスピキアーズ家のものだろう」
「知りませんが」
「あぁあ、俺はレオサード公爵家の縁戚だぞ」
「知りません」
「あの、誰か知りませんが、お店の邪魔でしょう。そろそろ、お暇されたら如何でしょうか?」
「あっ?お前は何だ?」
「マルク・ドンナルナと申します」
「マルク・ドンナルナ?あぁ、無能と噂の?あのガキか?」
俺の事は知っているのか。
「はあ、そうですが、何か?」
「ははは、あの無能が何をでしゃばってんだ。死にてえのか」
「「ははは」」
「そうですか。お暇していただけないと」
「あ?」
「なんでしょうか?」
「てめえ、ガキ、舐めてんのか?」
「いえ、舐めて・・」
あまりにも因縁をつけるので、俺がならず者の腕を捻ろうとした時、
「その辺でやめた方がいいでしょう。それとも、怪我をしたいですか?」
「あ?」
「ゼル」
「マルク様、遅いので迎えにきました」
「てめえ、舐め・・」
「はい?」
ゼルが肩を強く握る。ギリギリと音がしそうだ。
「いや」
「そうですか。まだやりますか。死にたいですか?それとも人生を終わらせ、これからはベットの上で過ごされたいのですか?」
「いや」
「じゃあもう行きなさい」
「「「はい」」」
「マルク様、アレス様、あとガリシアン家の」
「レオナ・ガリシアンです」
「レオナ様、申し訳ありません。浅学で。では帰りましょう」
「「「はい」」」
「ではアレス様、レオナ様、こちらで」
「じゃあね、レオナ、アレス」
「ええ、じゃあね、マルク。また入学式でね。ゼル様、馬車ありがとうございます」
「じゃあ、マルク、ゼル様、馬車ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ、マルク様と仲良くしていただき、感謝申し上げます。では」
「ゼル、どうして、場所がわかったの?」
「ええ。リネア様に『ついて行って、見ておくように』と頼まれまして」
「そうか。まぁよかったよ。ゼルのおかげでトラブルも解決できたよ。あそこで力を使わなくてよかった」
「そうですか。よかったです。楽しめましたか?」
「うん」
「そうですか」
「ゼルもありがとうね」
「ええ。そう言ってもらえると嬉しい限りです。マルク様が楽しめたならそれが一番です」
家に着いた。
「父上、母上、帰ってまいりました」
「そうか。楽しめたか?」
「はい」
「楽しかったのね。友達ができてよかったわね」
「はい。母上。友とは素晴らしいものです。本当にアレスとレオナには感謝しています」
「ふふ。よかったわ」




