入学試験 家族と試験官の正体
家族会です。試験官の素性を
試験会場を出て、学院の入り口付近にてゼルを待つ。
「マルク様、試験はどうでごございましたか?」
「ああ、できたと思う。ただ、実技の試験官が強かったな」
「ほう、マルク様が強いとは。どんな方でしたか?」
「うん、ブレードソードで、重戦士という感じ。でもどこか、あの武器が主武器じゃないかもしれないとは思ったよ。でも、とにかく、基礎剣技がすごいね。打ち落としも柄返しも突きも全て避けられた。一つ一つを読んで動いていたようだったし、王国の武術っぽくなかったな。まぁ、俺も手は抜いてたけどね」
「ぬ、もしかして銀髪の髭面で、目の上に傷がありませんでしたか?」
「うん、そうだけどなんで容姿がわかるの」
「其奴とは縁が深くて、よく、戦場で一緒に戦いました」
「ああ、そうかそう言っていたよ。ゼルも父上も知っているって」
「そうですか、あやつがそんなことを。まぁ帰りましょう。ラルク様らが待っておられます」
馬車に乗り、屋敷に向かう。俺は合格か、それが気になって、なんかふわふわする。
「ただいま。試験も終わり戻ってまいりました」
「ああ、マルク。試験はうまく言ったか?」
「はい。しっかりと。見直しもしました。出来ることはできたかと」
「そうか」
「マルク、試験は難しかったか?」
「兄上、兄上とした対策の方が難しかったです」
「そうか、やはりな」
「わかってて、していたのですか。もしや間違えて難しくしたのかと思いました」
「そんなわけないだろう。事前に難しい問題をやることで本番は簡単に思うだろう」
「そうですね。兄上ありがとうございました」
「ああ」
「マル君、大丈夫よね。来週は休みもらうって決めたんだから、合格祝いするよ」
「はい。メル姉。大丈夫だと思います。絶対はないですけど」
「ん、絶対はない。でもマルクは大丈夫」
「ありがとう。エルカ姉様」
「ん」
「マルク、実技はうまくやったの?」
「はい、母上。試験官にスキルなしの模擬戦を実技としてもらいまして」
「そう」
「マルク、手は抜いたか。武闘オーラは使わなかったか?」
「はい。父上。試験官はかなり強く、私の技量を理解したのか。基本技の数手を交わしただけで、終わりました」
「何?マルクの技量を。出来るな。強いか?」
「はい。こちらの行動を読まれ、全て防がれ、避けられました」
「ふむ。マルクは手を抜いていたのか?」
「はい。手は抜きました。ただ、試験官も相当手を抜いていたようです」
「そうか」
「ラルク様、試験官は銀髪の髭面で目の上にに傷があったそうです」
「何?やつか?」
「ええ。シグルソンでしょう」
「そうか」
「シグルソン教官か」
「ええ。兄上の教官だとか」
「実技の授業の教官だったよ。ただ、騎士学院のね。でも確か、卒業前にやめたと思ったけど」
「そうなんですか」
「まぁ、そうだな。やつが学院の教員になっていたか?」
「やはり、父上も知っているのですね」
「うむ。やつとは何度も戦場で一緒になった」
「そうですか。試験官の方も父上とゼルとは大戦で知ったというような話をしていました。戦友なのですか?」
「うむ。戦友と言えばそうだ。ただ、始めは敵だった。あいつは第二次レオアル大戦で始めて会った。やつは帝国の副将軍だ。あの時はまだ第二次大戦が始まったばかりでな。まだ、俺は一兵卒だったさ。ゼルと最前線で戦っていた。その時にやつこそ、帝国第二軍副将軍シグルソン・フォン・ラースバルクと対峙した。やつは指揮がうまく、前に出れば一騎当千だ。こちらの士気は最悪だった。俺とゼルは何とか戦線を保つため、必死に帝国軍を止めた。だが、シグルソンが前に出てきて、一気に戦線は崩れた。その時は何とか、帝国の追撃をしのいで、逃げ切ったんだ。」
「そんなことが」
「ああ。そして2回目にあったのは、俺が英雄と呼ばれることになった、あの戦場だ。殿として最後を覚悟した時にやつが現れた。ゼルと共に、やつと何度も斬り合い、突き合いで一進一退だったぞ。こちらも士気は最悪になった。それでも俺は何度もやつの攻撃を防いだ。いや耐えた。そしたら、王国の救援が間に合ってな、ギリギリ生き延びた」
「そうですか」
「それで、その後すぐだ。戦争は陛下が、王太子時代だったが、魔族の暗躍を見抜いて暴露し、帝国との戦争は終わった。次にシグルソンに会ったのは天月大戦だ。非常に苦しい戦いだった。それでも俺はやつの指揮のもと、勝ちを何度も得てきた。やつは凄まじかったよ。だが、天月戦争中に王国が有角族国家ラムオレと停戦をして、帝国に戦争を止めることを提案した時に、やつは帝国軍人には珍しく、その案を押した。しかし、帝国は拒否し、やつを副将軍から外した。その後、処刑の話も出たために、シグルソンは王国に亡命した。それで、王国の騎士になったが、騎士の中で、帝国出身のシグルソンに、嫌がらせをする奴が多くてな。あんだけの大戦だったからな。家族や友を亡くしたやつも多く、あいつに八つ当たりをしたんだ」
「そうですか」
「その後、騎士学院に行っても変わらずな。それで辞めた後は、行方を知らなかった」
「ラルクは亡命の助けをしたのよね」
「ああ、あいつは、つまらん死にはもったいないやつだったからな。それにどこか戦争中は辛そうだったのを見ていた」
「そうなんですね」
「ああ。まぁつまらん話はこれくらいにして。よし、夕食にしよう。マルク、今日はよく食べ、早く寝ろ。疲れているだろう」
「そうね。それがいいわ」
こうして、今日は夕食をして、早く寝た。




