アルフは驚く
アルフが戻ってきて、翌日の話です。2話構成です。
翌日
朝が来た。今日から兄上と、訓練だ。今日まで磨いてきた槍術を兄上に見せよう。一つ一つ、いつも通りに丁寧に。
兄上とゼルと父上と訓練だ。父上は、今日は午後に王宮に向かう。だから槍術と武術を一緒に訓練する。兄上も基礎から訓練する。兄上に見てもらうため、一連の突き、切り上げ、切りおろし、巻き槍、叩き落とし、柄返しを行う。
「アルフ、どうだ。マルクの槍術は?」
「はい。これほど、丁寧で基本にのとった、強く速い基本六技は見たのは王宮ではないです。もしかしたら、騎士よりも強いかもしれませぬ」
「ふむ。そうであろう」
「ええ、これだけでも自分が何も見えていなかったことがわかります。マルク、よくここまで努力したな」
「ありがとうございます、兄上もこれから、訓練しましょう。基礎は大事です。私はこれから全て500回ずつ行います」
「500回ずつ?」
「ええ。これくらいしないとダメなのです。私にはスキルという才能がありませんから」
「そうか。騎士でもこれほど訓練するものなどいないな。これがあの技の理由か」
「ええ。アルフ様。このことを忘れぬよう心に刻んでください」
「ああ、ゼル」
「さぁ、兄上、始めましょう」
それから、槍術の訓練を行った。ひたすら丁寧に。技を最も良い型で行えるように。
そして、槍術が終わると、
「次は武闘オーラです。兄上」
「待て、武闘オーラを使えるのか?」
「ええ、まだ『飛』はまだ5割くらいの成功しかできないですが」
「!?『飛』以外は完璧にできるのか?」
「ええ」
「私ですら、マルクぐらいの時はやっと『覆』ができた程度だったはず」
「ええ。アルフ様は学院に入る前に、やっと『飛』をできるようになったのでしたね」
「そうだな。ゼル」
「アルフ、大事なことを忘れておる」
「!?マルク、武闘オーラのスキルはあるのか?」
「いいえ、ありません。あるのは『飲み込む』だけです」
「!?スキルなしにできているのか?父上、ゼル、そんなことがあり得るのですか?」
「マルク以外は聞いたこともないし、ありえん」
「ええ、マルク様以外、聞いたこともないです。ありえないと思います」
「そんなことが」
「言っただろうが、マルクはすごいと」
「ええ。そうですね。本当に何も見えていなかったのですね。噂を信じるなど」
「ふむ、いつも自分の目を信じろと教えてきただろう」
「ええ。父上、私はマルクと共に基礎から自分を鍛えて直し、マルクに負けぬ兄であり続いたい。父上、ゼル師匠、またよろしくお願いします」
「うむ」
「ええ」
「そんなことより、訓練しましょう。時間は有限です」
「ああ」
それから武闘オーラの訓練を兄上とゼルと父上と共にした。
そして昼食だ。父上は昼食前に王宮に向かった。
「どうだったの、アルフ?マルクの槍術と武術は?」
「驚きでした。あんなにできるとは」
「ええでも、スキルはないのよ。それであそこまで行ったのよ。それは生半可な努力ではないわよ。アルフ、貴方は諦めずにできる?」
「!?そうですね。スキルがないのにできることに驚くばかりで、そこに至るまでどれほど努力したかに目を向けていませんでしたが、それはすごいのでしょう」
「ええ。もうそれはね。親バカって言われるかもしれないけど、私もラルクも尊敬しているわ」
「ええ。そうだと思います。私も今日でそれがわかりました。マルクは心も体も一流の武術家です」
「アルフ兄上、マル君は武術家だけでないわ。魔法もすごいのよ」
「ん。アルフ兄様は間違ってる。マルクは魔法の天才」
「!?魔法も使えるのか?」
「そうよ。マルクは魔法も使えるのよ。でもこれは秘密よ。アルフ」
「はぁ。母上、わかりました」
「午後は驚く」
「うん、エルカの言う通り、アルフ兄上は腰を抜かすと思う」
「そんなにか?」
「うん」
「ん」
「そうか。マルクはすごいな」
「母上やメル姉、エルカ姉様のおかげです」
「そうか」
「そうよね」
「マル君の力になれて嬉しいわ」
「ん。エルカのおかげ」
そんなで昼食を食べ終え、午後は魔法訓練だ。
「では、兄上、魔法の訓練に入ります」
「ああ。で何から始めるんだ?」
「はい。マナを練るところから」
「そうか、魔法の基礎だな」
「ええ。では」
魔法を練る。兄上とメル姉、エルカ姉様も。
「マル君、早くなったね。それにすごい量のマナを練ってたわ。負けそうだもん」
「ん。でもエルカの方が上」
「ああ、魔法の才能が高い、エルカやメルはまだ上だが、私よりは上だな」
「そうだね、アルフ兄は負けてたね」
「ん。アルフ兄様がビリ。スキルがあるのに」
「!?マルク、これもスキルがないんだな?」
「はい、兄上」
「!?」
「ははは、やっぱり驚いた」
「ん、当たり前、エルカも最初は驚いた」
「そうか」
「それより、次です。次は初級から中級と全ての属性魔法を撃っていきます。兄上らはスキルのある魔法を撃ってください」
「全ての属性?」
「ん。すべての属性」
そして、火、水、風、土、光、雷、回復、付与、結界の順で初級、中級と撃って行く。
「メル姉、雷魔法を撃てるようになったのですか?エルカ姉様は風と土魔法を?」
「マル君には負けてられないからね」
「ん。エルカは天才。マルクにできることはエルカにもできる」
「すごい」
「そうでしょ。マル君」
「ん」
「待て、スキルなしに魔法を使えるのはマルクだけなのではないのか?」
「マル君の理論を取り入れて、メルは進化したのです」
「エルカは天才」
「そうか。マルク、私にも教えてくれぬか?」
「ええ。兄上」
「そうか。まだ強くなれるな。ここなら」
「ん、そう。いい環境。アルフ兄様はずるい」
「ああ、そうだな。エルカ」
「次は上級です。メル姉エルカ姉様、威力は少し調整してください。屋敷が壊れます」
「ん」
「大丈夫よ。マル君。ちゃんと調整するわ」
「上級魔法までできるのか・・・」
こうして魔法の訓練は終わった。
次はスキルの訓練だ。母上も呼んでもらうと来てくれた。
「マルク、次はスキルね」
「はい母上、今日も頑張ります。よろしくお願いします」
「お母様、今日はメルも魔法を飲んでもらいましょう」
「そうね」
「ん。エルカも」
「そうね。じゃあ、マルク、始めていいわ。メルからかしら」
「はい、メル姉、お願いします」
「うん、マル君行くね」
「!?」
「驚いているわね。マルクは他人のマナを飲むことで強くなれるの。さらに他人のスキルや魔法を飲み込むことで、その魔法を覚え、スキルを得ることができるのよ」
「そんな。スキルの力ですか?」
「ええ。でも飲み込むだけではダメよ。それを訓練して初めて使えるの。後、最初に魔法をできるようになったのは、自分で理論を見つけて、できるようになったのよ」
「マルクが見つけたのですか?どこぞの本で書いていたのではなく?そんな方法など聞いたこともないですが」
「ええ。全く誰も知らない理論よ。一からマルクが見つけたの。私も聞いてビックリしたわ」
「そんなこと」
「ね。アルフ、貴方が見てたものが、どれ程くだらないことか解ったでしょ?」
「ええ。嫌という程に。マルクはまさに英雄になれるかもしれません」
「そうね。そう思うわ。アルフも頑張りなさい。貴方もラルクの子よ」
「はい」
「そう。いい返事ね。貴方は間違えたかもしれないけど、貴方も才能はすごいわ。マルクと違って、スキルもある。それも強力なね。頑張りなさい」
「はい」
「!?マルク、大丈夫か?」
「だ、い、じょう、ぶ」
「マルク」
「アルフ、大丈夫よ。少し、メルの上級魔法がきついのね。始めてメルの上級魔法を飲んだから、力にするのに苦労しているんだわ。でも大丈夫って声を出せるから大丈夫よ」
「はあ」
「はああ。兄上、心配かけてすみません」
「いや。それよりマルク、大丈夫か?」
「はい。メル姉の魔法が思いのほか強く、体が慣れるまで筋肉や臓器が少し悲鳴をあげましたが、少しの時間だったので、まだ大丈夫です」
「そうか」
「はい」
「エルカ姉様、水の上級魔法をお願いします」
「エルカ、少し抑えてね。マル君に強いのだしすぎちゃったから」
「ん。メルと違って調整はうまい」
次にエルカ姉様の魔法を飲んで、今度は本気でのたうち回った。さっきの言葉なんだったのかと思う。もうエルカ姉様―。苦しい。苦しい。痛い。辛い・・・・・・
「はあ、もう今日は終わりにします。これ以上はもうダメだと思います」
「そうね。それがいいわ」
「ん。マルク、ごめんね」
「エルカ、やりすぎ。マル君辛そう」
「マルク、大丈夫か?」
「はい、これ以上というのは分かっています。今日はこれ以上はダメですが、問題はありません」
「そうか」
こうして、訓練をやめて俺は夕食まで部屋でのんびりしていた。
「マルク様、夕食のお時間です」
「ああ、リリア」
アルフがツッコミ役をしていくれている状況です。
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