アルフの謝罪
夜、兄上が帰って来た。
「父上、母上、マルク、この度は時間をいただき、ありがとうございます」
「うむ。わざわざこの家の門をくぐったのだ、言いたいことがあるのだろう。早く言え」
「はい、私は間違っておりました。自分の弱さを認めたくなかった。だから、マルクを悪く言い、そのせいだと思いたかった。自分の才能が、自分の努力が足りないと認めたくなったのです。マルクの事、家族の事を悪く言うなど馬鹿げていました。最近のマルクがどんなに努力しているのかなど、知ることもしようとしなかったのに」
「うむ」
「そして、自分の弱さを認めないために、他人の甘言にはまり、その甘い言葉に酔いしれる事で、自分を騙し、剰え、マルクにあんなことを言いました。マルク、申し訳なかった。私は兄失格だ。許してくれなど、言えない。でも、お前が辛い時、苦しい時は、兄としてこの命をかけて救う。それが俺の今の気持ちだ。こんな大事な気持ちを忘れていた。こんな兄ですまぬ」
「兄上、頭を上げてください。私は兄上を嫌いなどなっておりません。ただ心配しておりました。まるで人が変わってしまったような、何かに操られているような感じがしました」
「ふむ、確かにあの時のアルフは何かに」
「そう言われれば、そうね」
「いえ、父上、母上、マルク。違うのです。自分の弱さに付け込まれただけです」
「そうか」
「はい。父上に『殿下の近くにいれば、きっと私も落ちていく』と言われて、そう思い始めたところにガルド様に助けていただきました。こうして父上と母上とマルクに謝る機会を得られたこと、ガルド様に感謝しかありません。父上や母上にも、あのようなことをしておきながら、このような機会を頂けたこと感謝申し上げます。ありがとうございます」
「子を許すのも、導いてゆくのも、間違えば叱るのも、全て父親の仕事だ」
「ええ。それを見守り、時に優しくするのが母親の仕事よ。アルフ、わかってくれたならいいの」
「はい、父上、母上。ですが、きちんとけじめは取りたいと思います」
「ふむ」
「まずは謝罪して、近衛をやめ、家族のために頑張る次第です。マルクを導くのも自分の仕事です」
「そうか」
「まず、2人に謝罪を。大変申し訳ありませんでした」
兄上は、深く深く、そして長い時間、頭を下げた。
「もう良い。しばらくはうちにいるのだろう」
「はい。謹慎したのちに、騎士としてやり直す次第です。ガルド様にもその旨お伝えしております。そう手配をしていただけるようです」
「うむ。うちにいる間は俺が鍛えてやろう。心を特にな」
「はい、お願いします」
「アルフ、心配をかけた周りの人たちにも謝罪と感謝を言いに行きなさい」
「はい、母上」
「兄上、一緒に訓練をしましょう。私の槍術を見ていただきたい」
「ああ。マルク、一緒に高みに向け、頑張ろう」
この後、メル姉もエルカ姉様も帰ってきて、夕食を一緒に食べた。明日は休みのようだ。エルカ姉様は何度も、兄上に文句を言っていた。
毎回書いており、大変心苦しいですが、
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