願いは奇跡を越え、掴み取った未来
移ろう意識の中、ミカが俺に駆け寄ってくるがわかる。
「神様、どうか大事なマルクを助けてください。私の命でもなんでもあげます」
ミカ?俺はもう声を出す力もない。彼女を見る力もない。顔をあげる力もない。もう動く力もない。彼女は死んでほしくない。やめてくれ。彼女に生きて欲しい。俺が好きなのは・・・。
マルクの体が光った。まるで奇跡だった。それは伊藤美佳しか見ていない奇跡、誰も知らない奇跡、1人のものの命が終わろうとした瞬間に起きた奇跡だ。マルク・ドンナルナは息を吹き返した。
「マルク」
「・・・」
「マルク、死なないで。マルクがいない世界なんて」
「ミカ?」
「ああ、ああああああああ」
「ミカが生きてたか?」
「バカバカバカ。何が生きてたよ。マルクこそ死んだと思ったんだから」
「ああ、ごめん。それが素なのかな?」
「え?違います。いいえ。これも素です」
「そうか。そっちの方がいいよ。ミカ、一ついいかな?」
「何ですか?」
「ああ、ミカが好きだ。結婚してほしい」
「え?」
「ごめん、こんなタイミングで。俺は今言いたかったんだ」
「もう、バカ」
「答えは教えてくれないかな?」
「はい」
「ははは。ありがとう。もう動けないや」
「私もです」
「そうか。誰かくるまで、こうしてようか?」
俺とミカは横で寝転がり、手を繋いでいた。はああ、生きててよかった。喧嘩も好きな人もできた。俺の人生でしたかったことはできたな。
「おい、マルク、世界の命運を決めたら、自分の命運も決めるのか?」
「あ、ヤイ」
「お前な、そこで告白して婚約って」
「リオル先輩」
「ははは。もうマルクらしい」
「そうね。本当、ぷっ」
「アレス、レオナ」
「おめでとうございます。マルク、ミカ」
「ルーナ」
「おい、俺が師匠相手に死にそうになったら、お前らは愛か?」
「サンゼル、ごめんよ」
「俺もマリアに会いたくなりました。ずるいです。マルク先輩」
「ケビン」
「「「「マルク」」」
「ああ、ジンダ先輩、ジュライ先輩、ラックス先輩、リックス先輩」
「おめでとう。マルク」
「クリス先輩」
「ていうか、どこから聞いてたの?」
「「「「「一ついいかな?」」」」
「ああああああああああ」
「「「「「「「「「ぷっははははははは」」」」」」」」」」」
「もう、みんな、笑いすぎ。それより外は?」
「ああ、ゾンビは消えたぞ」
「カンバルを封印したら、終わりか?」
「ああ。そうみたいだ」
「誰か負ぶってくんない?もう動けないんだ。俺もミカも」
「しょうがないな。締まらない英雄様だよ」
ヤイが俺を、ルーナがミカを背負い帰ってくれた。
カンバルとの戦場を出ると父上と兄上らがいた。母上やメル姉やエルカ姉様、母上もいる。
「ただ今戻りました。こんな姿ですみません」
「いい。マルク、よくやった」
「そうだよ。マルクがやったことは凄いことだよ。それを成したんだ。十分だよ」
「そう。マル君は凄いの。自慢の弟なんだから」
「ん。最高の弟」
「ふふ。自慢の子よ。もう帰ったら自慢しようかしら」
「母上、からかうのはそれくらいにしてもらいたいです」
「ふふふ。まぁいいわ」
「ヤイ君、変わろう。息子の世話は父親の私がしよう」
「そうですか。では頼みます。あと、お宅の息子さんの未来のお嫁さんもいいですか?」
「「「「「え?」」」」」
「あ、ヤイそういうのはちゃんとした時に」
「どういうこと、マルク?」
「ああ、母上。いやあ。あの先ほど結婚してくれないかとミカに言いまして」
「どのタイミングで言ったのかしら?」
「いやあ、あのぉ。そのぉ」
「はっきりしなさい。マルク」
「はい。死にそうになって、ミカがスキル『奇跡』の力で生き返られせくれようとした時に、心からミカといたいと思い、目を覚まして、その時に」
「はぁあ。何でそんなタイミングなのよ」
「ええと。その感極まって」
「ミカちゃんが可愛いそうじゃない」
「それは・・・」
「マルク、謝ろうな。男はこういう時は謝るんだよ」
「アルフ、何を言っているの。ミカちゃんに今、謝ったら結婚が間違いみたいじゃない。もう、なんでドンナルナ家の男はそういうところだけ、カズキに似てるのよ」
「まぁまぁ。な、マルク。受けてもらえたんだろう?」
「はい」
「まぁ、2人が納得したならいいじゃないか。また、綺麗なところでもう一度言って来い」
「そうね。それしかないわ。アイナ、ミカちゃんを連れてきて」
アイナがミカをおぶってくる。
「ヤイ、言っていいことと悪いことがあるよ」
「すまん。あんなに怒られるとは思わなかったんだ。世界を救ったんだぜ?それをあんなに怒るか?」
「それはそれなんだよ」
「そうかあ。女性は恐いな」
「ああ。母上は特にな」
「何かな、マルク?」
「ひいいいい」
俺は力を使い果たした状態なのに頭をグリグリされた。周りがかなり引いてたのはご愛嬌だ。
「ミカちゃん。ありがとうね」
「いえ」
「うちのバカ息子の教育はちゃんとするから。マルクはもう恋愛には本当に疎いのよ」
「いいえ。大丈夫です。嬉しかったですから。死んでほしくないと思ったら、奇跡が起きて。それでマルクにプロポーズされたのは夢みたいでした。まるで物語のお姫様みたいで」
「そう。そうね。最愛の人が死んだと思ったら、生きてて、結婚を申し出るというのもアリかもしれないわね。物語のお姫様みたいよね」
「はい」
「プロポーズっていうのは何?」
「メル様、結婚を申し込む事を言います」
「そう。いい言葉だわ。でもメル姉ね。次からはちゃんとそう呼んでね」
「はい」
「エルカ義姉様」
「はい、エルカ義姉様」
「ん」
「ふふ。妹がもう一人できて嬉しいのね。メルも、エルカも」
そして俺らは同盟軍の本陣へ戻る。同盟軍の皆のところへ戻ると万雷の拍手と
「マルク様〜万歳〜」
「英雄マルク〜万歳〜」
「新英雄〜」
という声が上がる。俺は手をあげる力を振り絞りなんとか応える。
「帰ってきましたね」
「帰ってきたか?」
「コーネリアス様、ガルド様、ハンニバル様、リット騎士団副将軍、シグルソン顧問、ロドメル先生、こんな姿の帰還ですみません」
「いい。何を言っている。お前は国の誇りだ。そんな事を気にするな」
「そうですよ。いいのです。ああ、英雄が本物になる瞬間に立ち会えるとは幸せですねー」
「はい、兄上。これは素晴らしい」
「ああ、自慢の教え子だ」
「マルク君が教え子だと、孫に自慢できますよ」
シグルソン顧問やロドメル先生もいる。
「私だけが英雄ではないです。皆が英雄です。そして何より、ガイス師匠とガッソさんこそ英雄です。あの2人がいなければ、こんな幸せはない」
「ああ、あの2人は世界中で弔う。そして、この戦争で死んだもの、全てだ」
「はい。お願いします。彼ら無くして、この勝利はないです。皆が英雄になったから未来は変えられました。未来はそれくらい変えるのが大変でした」
「ふふ。そうですね。そんな簡単に未来は変えられない。世界の未来を変えるには世界の皆が英雄にならないといけない。そうじゃなければ英雄はいらないという事ですねー」
「ええ」
「世界を変えた人が言うとすごいなー」
「コーネリアス様、からかうのはそれくらいでお願いします」
「いいえ。マルク様、私は本気で貴方を尊敬しております。貴方ほど困難に出会い、負けずに真っ直ぐに己の道を歩んだ人はいません。私の尊敬する人は貴方です。それは譲れません」
「そうですか」
「ですから、先程のは半分本心です」
「半分なんですね。半分はからかってますよね?」
「それは内緒です」
「えー」
そして戦場に出ていた兵士はそのままレオサード領へ。俺も馬車に揺られ、レオサード領の要塞へ行く。陛下らに会うためだ。陛下らはレオサードの要塞にいる。そこが一番安全だからだ。さらに多くの国のものがレオサードの要塞や近辺にいる。そこが守りやすいから。
レオサードの要塞に着いた。すると、大きな歓声とラッパの音がなる。
「英雄〜マルク〜ドンナルナ〜御成〜」
こういうのは殿下だな。エドワード殿下が好きな演出だな。俺は馬車から顔を出して手を振る。母上の回復薬を本陣で飲んだので、少しだけ体力を回復できた。
「マルク、聞いたぞ。よくやった」
「ありがとうございます。陛下。このような姿ですみません」
膝をついて傅くことはできなかった。父上に肩を借りて立つのがやっとだった。
「いいんだ。それほどの戦いだったのだろう。儂はこれほどに心を熱く、誇らしく思ったのは初めてだ。マルク、よくぞ、未来を掴み取った」
「はっ。ありがとうございます。ただ、私の力ではありません。あの戦いに命をかけた全ての同盟の兵、将軍、傭兵として戦った冒険者のおかげです。その中で命を失った者も多くいます。どうか彼らを労ってあげてください」
「うむ。全ての兵士よ。騎士よ。皆、よくやった。君らのおかげで我ら人類はこうして未来を得た。これからは平和が世界に訪れよう。一為政者としてそれを約束する。皆が幸せを感じられる今を喜びあおう」
さらに陛下は続ける。
「そして、この戦争で亡くなった勇敢な兵よ。そして、その家族よ。彼らは英雄だ。我ら同盟に参加した全ての国家、民族において英雄としてその名を刻もう。彼ら無くして、我らの勝利はない」
「「「「「「「おおおおおおおお」」」」」」」
「彼らの家族は必ず、我ら為政者がその行為に報いる。君たちを不幸にはしない。この度、戦ってくれた者らも、その家族も皆が幸せになるようにする。どうか安心してくれ。亡くなった者らに冥福を祈ろう」
「「「「「「「「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」」」」」」」」」
「我らの英霊に敬意を、今を生きる皆に幸福を」
こうして、帰還の祝いは終わった。その後は各国の使者や国王陛下などの首脳陣らと俺ら将軍や戦場で活躍した者らでの祝賀会が行われた。
レオサードの街や要塞も多くの民や兵士らで溢れていて、皆が平和を祝っている。皆、明日には各国や家に帰る。今日だけはただ幸せを、平和を祝いたいのだ。そして、亡くした友や家族を悲しむ。
俺は陛下らと歓談する。座っての歓談など普通は許されないが、陛下らは気にもしない。周りの文官らもそんな事は今日はどうでもいいという顔だ。
「マルク、ラルク、アルフよ。お前らは本当によくやってくれた。この国を、いや世界を救ったのだ」
「陛下、我らは任務をしたのみです。すごいのは我が弟マルクです」
「ああ、陛下。アルフの言う通り、今回は全てマルクの手柄だ。それにアルフも十分に成長した。これで俺も職務を降りよう」
「そうか。そうだな。儂もそろそろ、エドに譲る準備を始めよう。マルク、お前の偉業は世界が感謝している。王都に帰れば、必ずに報いる」
「陛下、お願いがあります。よろしいでしょうか?」
「なんだ?言え」
「はっ。実は戦場で力を失いました。それは・・・・」
神の力をもらった経緯、その過程で起きた事と結果を報告した。
「な、そうか。大変だな」
「はい。それで騎士として働く事は難しいと思います。完全に動けるようになるまで数ヶ月から数年又は数十年かかるかもしれません。ですので、現職及び騎士団を退役させていただきたい」
「な、そんな。お主の功績は凄まじい。皆が英雄の功績に報いたいのだ。少なくとも、騎士団長などに・・」
「陛下、それは難しいことでございます。それに戦争も終わり、平和な世には英雄はいらないです。これからは皆が世界を平和にする番でございます。それぞれの歩み寄り、それぞれの努力が世界を平和に、そして発展させていくのです。英雄は出番がない方がいいのです」
「・・・」
陛下が黙る。会場中が俺らを見て、その会話に集中している。そこに陛下の耳元で小声で話す父上、その後は
「(すまんな、ラインバッハ。)陛下、陛下のお気持ちは嬉しいのですが、マルクの体を考えますと長い休養が必要となります。復帰できる時まで騎士号をお返しして、万全の体にさせます。そして万全な状況になり得ました時、世界に、国に何かありましたら、馳せ参じさせますこと、父である私が確約します。どうかお許しをお願いします」
「そうか。わかった。マルク・フィン・ドンナルナよ。まずは体を休めよ。此度の戦いで、まさに鬼神の如き活躍を見せ、その体の自由を失ったことは誠に残念だが、それが故の勝利であったのだろう。我らレオナルク王国は王族、貴族から民までお主の功績を認め、感謝しておる。どうか、体を労わり、存分に休め。お主がいない間は我ら為政者がこの平和をより確かなものとする」
「はっ」
その後、会場から万雷の拍手が聞こえる。さすがは陛下、そして父上だ。2人はやはり英雄だな。
その拍手の中、陛下が小声で
「これでいいか。マルク、いつでも、何でも言って来い。王国の全てがお前の功績に報いたい。いくらでもお前の我儘は儂が通すぞ」
「ありがとうございます。まぁ、我儘ではないですが、婚姻を申し込みましたので、そちらを陛下にも報告させていただければ」
「な、誰とだ?」
「ミカ・イトウです」
「元勇者で、お主の部下のか?」
「はい。側で支えてくれた彼女と婚姻をしたいと思います」
「そうか。それは国を挙げて祝うぞ」
「え?それは」
「悪いが、ガルドらも知れば、そう言ってくるだろう。これは決定事項だ」
「う。せめてミカにも報告をしたいです」
「わかった。まぁこの辺で儂はいこう。儂ばかりが英雄を独占してもな」
そして、続々と人がくる。レオミラン王国国王のミラン国王陛下、商業都市国家群代表閣下、多民族国家の代表種族長様、小国家国家群も各国家の国王陛下とそれぞれが俺を、俺の活躍を褒めてくださる。そして国に来た際は歓迎をするとおっしゃっていただいた。
そして獣人族国家、国王陛下ガウル・ガウラン陛下、ガンソ王太子殿下、マリア王女がいらっしゃった。
「マルク殿、此度のこと、誠に素晴らしく、そして感謝をいたします」
「ガウル陛下、頭をお上げください。私などに頭をおさげいただくわけには」
「いや、これはすべきことです。我が国は何度も貴方に救われた。そして此度は世界までも救われたのだ。せめてもこの程度の頭ですが、下げることしたいのです。貴方に比べれば私など小さき者、どうかこれは獣人族の全ての思いです。お受け取りください」
「・・・・わかりました。ただ、獣人族国家の兵らも活躍、そして貢献しました。彼らにもどうか労いを」
「わかりました。しかし、貴方はいつも変わりませんな。謙虚で、努力家で、誠実な方だ。まさに英雄という方だ。我が国は貴方に名誉国民、名誉貴族の称号を与える所存です。レオナルク王国が認めればすぐにでも式典をいたします。ぜひ我が国にまたお越しください。貴方がいらっしゃる時はいつでも歓迎をします」
「な」
「マルク先輩も驚いていますよ。父上」
「そうか。急すぎたか」
「ええ、マルク殿を驚かせるのには成功したでしょうが、やり過ぎたかと」
「そうか。ガンソ。マルク殿、まずはお体をご自愛ください。先程の話はまたいずれ」
「はっ」
驚いた。獣人族でないのに、名誉国民、名誉貴族とは、かなり吹っ切った行動だ。ガウル陛下はすごいことを言う。
その後になぜか先程いらっしゃった国の代表の方々がこっちに来ようとしていた。そんな中で
「やあ、マルク」
「カレスさん、此度は」
「いや、いいんだ。兄のことは。それに今日の私は英雄ガイスの弟にして、ドワーフの代表でもあるからね。これでも、兄貴が亡くなってもう最長老になったよ」
「そうですか。ガイス師匠が長老だったのですか?」
「ああ、そういう柄じゃないからね。それに今回もあの世で俺は英雄なんかなりたくねえとか言ってるだろう」
「ええ、多分、俺に怒ってますよ。くだらねえもんを俺に寄越すな。馬鹿弟子がって」
「ああ、言いそうだよ。まぁ、兄貴はよく言っていたよ。
『俺は長く生きすぎた。でも最後に生きる道を見つけたぜ。マルクの道を助ける。あいつの道にはきっとどうしようもないことが一度くる。その時に俺の命をかけてでも、それを取り除いてやる。きっとそれがあの時に果たせなかった俺の道だ。きっとマルクを助けるためにマットに生かされたんだ。だからよお。俺は最後にやるぜ』って」
「そうですか。お墓は?」
「ドンナルナ辺境伯に頼んでマットさんらの横に作ってもらうよ。あそこが好きだったから」
「そうですか」
「そう言えば、火槍ドラグーンがかなり疲弊したんじゃない?」
「はい。今回は大活躍でしたから」
「まぁ、直しに来なよ。いつでも直すから」
「はい」
「まぁ、その時は大歓迎されると思うから期待しててね」
「はぁ」
そして、次はエルフの長ローザさんだ。
「やあ、英雄マルク・ドンナルナ殿」
「やめてください。ローザさん」
「エルフにとっては恩人だ。里の復興のこと、メリーのこと、そして開かれた里になったことも全てマルク殿のおかげだ。感謝する」
「そうですか。里に戻るのですか?」
「ああ、故郷だからな。ただ、里に篭って外部と遮断することはない。多くの国と交易をして、多くの人がくるエルフの里にする。まぁ馬鹿な奴は処刑も、警戒もするがな」
「ええ、いくら平和だ、融和だと言っても犯罪者はいますから警戒はしないと」
「ああ」
次は有角族の方々が
「マルク殿」
「ああ、有角族の」
「あの時は、素晴らしい御言葉ありがとうございます。あれで一族の誇りを持てました。そして世界をお救いくださりありがとうございます」
「いいえ。有角族の皆様は皆が勇敢に戦い、この世界を紡ぐために努力されました。そのおかげです」
「ありがとうございます。我らは必ず、有角族国家ラムオレを復興します。その際は是非、我が国にお越しください」
「はい」
そしてアイルさん。
「マルクさん」
「アイルさん、ガッソさんの件は・・」
「マルクさん、いいんです。ガッソは言ってました。多分、今回で俺は死ぬかもしれない。それが俺の命の為すべきことだ。マルクを助けるのが俺の最後だ。きっと俺の命をかける時が来る。すまんなアイルって」
「そうですか」
「はい。あとはサンゼルのことをいつも心配してましたね。私もガッソも子がいないから。子供みたいだったんですよね」
「そうですか。これからどうするのです?」
「アイナもいるし、王都で暮らそうかなと」
「なら、うちにいらっしゃれば?」
「え?」
「ああ、いいんじゃないか。リネアもアイナもいる。その方がいいだろう」
「では、お願いします」
祝賀会は終わった。俺らは4日後に王都に帰るために要塞を出る。俺とミカの体調を考慮して、王都民が王都に着いた後にゆっくり帰ることになった。
そして俺は馬車に揺られ、ドナドナされていく。動けないからしょうがない。まだ自分で歩くのも辛いぐらいだ。本当に力を使いすぎた。神の力は大きすぎるな。人には背負いきれない。




