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決着と…

俺はカンバルと対峙する。俺は間を入れずに突きを入れる。その速さに驚いたのか、カンバルは万物の目を使い、俺の動きを読んだかのように行動して防ごうとするが、俺の突きはカンバルの予想を超えた速さで放たれた。カンバルは何とかそれを避けた。受けることはしないようだ。


「どうした?さっきは避けずに受けていただろう?」

「関係ない。避けれるほどに遅いからだ。羽虫」


「もしかして、師匠らの攻撃のダメージが引いてないのか?」

「そんなことはない」


「それとも痛さにビビってるのか?」

「な、そんなことはない」


「おい。たった一度ダメージを食らっただけでビビってんのか?生きてりゃ、痛さもダメージも当たり前だぞ。それを一発でビビってんのか?お前は生きることから逃げたからそうなるんだ。積み重ねることからも、努力することからも逃げた弱虫だ」


「な、違う。羽虫がブンブンとうるさいぞ」


そして半身になる。重心を両足の中心に置く。


そこから後ろの足に力を入れず、グッと前の足をグッと強く踏み込む。踏み込み始めるのと同時に左手で槍を操作して槍先を相手の膝下に入れ、前足の踏み込みが最も力の入った瞬間に後ろ足も踏み込み体を引く。


今度は切り上げをして胸を切り裂く。しかし、カンバルは一歩引いてこれも避ける。


「ぬ。武器は卑怯だな。儂も作ろう」

そう言うと、カンバルは剣を作り出した。


「フハハ。儂のような神は剣を作り出すのも楽なのだ。これはお前が持つようなチンケな槍とは違う。神器と言える武器だ。どうだ?これでお前との差はない」


「おい、自分で俺より弱いと認めてるぞ。いいから来い」

「な、糞虫が」


剣で突きにくるので、相手の刃先が突きに動く瞬間に、半身から前足に力を入れて槍先を前に出す。


こちらの槍先をカンバルの刃先に合わせる。相手の刃先を抜け相手の武器の中腹あたりに槍先が来る瞬間に前足の力を最大限に強く踏み込む。


そしてその力を使い、槍先で円を描くように相手の武器をねじ伏せるように槍を回し、剣を奪い取る。


「な」

「今のはかなり手加減をしてやったぞ」

「な」


「お前の武術など、何度来ても同じだ。積み重ねのない武術など児戯にもならない」

「な」


「教えてやる。どれだけ強い力でも使いこなせなくては意味がない。強さとは力をどれだけ使いこなせるかだ。じゃなきゃ、師匠らがお前を追い詰めることなどない」


「な、羽虫が、糞虫が、下等生物が、この世界を壊す害虫が、偉そうに」

カンバルはまた武器を出す。槍だ。


「お前の得意な武器で勝ってやるわ」

「どうでもいい。次は入れるぞ」

「生意気だ。雑魚が」


今度は、槍を作り出した。俺に対抗したいのだろう。


カンバルは槍で突きにくる、胸を狙って来た。俺は半身の体勢から、重心は中心に置いたまま、相手の槍に合わせる。


そこから、半円を描くように槍先を時計回しに回す。軌道を上に変え、懐に入り、体を回転させて、重心を前足に移すと同時に槍を回して上に持ち上げて、相手の武器の持ち手に振り下ろし、槍を捨てさせる。


そして体を回転させながら、槍を回して、槍先を持ち上げ、重心を前に移す。そして、相手の肩口から胸にかけてを切りおろす。今度は全てが入る。カンバルは血しぶきをあげる。


「ぐあああ」

「痛いか?」

「あ?」


「その痛さが、お前が捨てた、お前が無意味と言った命の重みだ。それが生きるということだ。その痛みに耐えて、皆が生きている。お前だけがそれから逃げた。命の重さ、命の凄さがわかった?」


「こんな物はなんてことない。武器を持たねば儂が勝つ。卑怯者」


「お前が持ったのだろう。お前らみたいな連中はそうやって不利になると叫び、自己保身に走る。

 本気で生きてないからだ。自身の人生を否定しているから、不利なことが起きると、こんなことはありえないと叫ぶ。

 自分の人生が、自分のすることが、こんな結果を生むはずはないと理に合わない言い訳をする。

 結局、自分は一番じゃないといけないと、うまくいかないといけないという妄想に囚われ、自分すら己を認めてないからだ。

 もう認めろ。人生はそう上手くいかない。それでも生きるのが人間だ。そしてお前も結局は人間の枠を出ていない」


「お前が言うな。お前も人間だろうが。それを上から言いやがって」

「ああ、俺は人間だ。人間の枠を出たいなど思ったこともない。俺は人間として生き、人間として死にたい。師匠やガッソさんのようにな」


「な、お前に何がわかる?」

「お前のことなどわからない。当たり前だ。お前と俺は違う。わかってほしい?わかってもらう努力はしたのか?それもせずにわかってほしい?バカバカしい」


「なんだと?誰も俺をわかろうとしなかった」

「それはお前が何もしないで、自分の殻に閉じこもったからだろう?」

「違う」


「分かり合えるなどとは思ってない。お前のことを知りたいとも思ってない」

「やはり、そうではないか」


「違うな。お前が誰も知ろうとしない、自分を見せようともしないから、知りたいと思わないんだ」

「そんなのは綺麗事だ」


「さあな。どうでもいい。お前が人間だということは正しい。そしてそれを認めるのが嫌で師匠らの本気にビビったことを隠したいんだ。それだけだ。もう決着をつけよう」


「わかった。お前は今まで会った奴らと同じだ。綺麗事を言って結局は人を否定するだけの奴だ」

「もういい。来い」


カンバルが武器を捨て、本気になった。さっきより力が増したようだ。これが本気で、最後になるようだ。もう奴も何だかんだと言う余裕もないんだろう。ふううと、息を吐いている。



「ミカ」

「はい」


(マルクさんに力を。これで全てを終わらす力を。もう彼が傷つくのは見たくない。あの人は誰よりも傷ついて、誰よりもそれを乗り越えて、ここにいます。私の願いは一つ。彼に負けない力を、未来をつなぐ力を、そして勝たせて)


俺にすごい力がくる。まるでリミッターを外したようだ。


そうか、ミカの祈願が鍵だったのはこういうことか。俺が人間でいる限りはリミッターなんて外せない。だからミカの祈願による奇跡で、外部介入によって俺のリミッターを外したんだろう。神の力が身体中を巡って行く。


これは凄い力だ。俺の中にある神の力を全て引き出してくれたのか。さっきから凄い強くなったと思ったけど、あんなものじゃないな。


この力は、確かに俺の体を壊す。一回でも保てばいい。遊びは終わりか。死ぬかもしれない。でも絶対にカンバルは殺す。



そして俺は黄金闘気を、いや神気を100%にして行く。そして身体中に神気が充満した。もう今までの力とは違う。これが俺の本当の本気だ。



俺とカンバルは対峙する。カンバルはふしゅーと息を吐いている。怒ってるな。まぁ関係ない。俺はもう一つしか狙ってない。最高の突きを入れる。


「火竜、行くぞ」

「おらああ」


カンバルが突っ込んでくる。形振り構わず、もう神という感じはない。俺を殺すことしか考えてない。そういう顔だ。俺も気合を入れよう。もう終わりだ。長い因縁も終わりにしよう。さあ、終わりだ。


カンバルが突っ込んできたのを避け、俺は最大に右足に力をためる。カンバルは全力の突進を避けられたせいで完全に体勢を崩している。そして俺の方を向き直し、突っ込んで来ようとする。


俺は一気に右足を踏み込み重心を前に移していく。それに合わせて、槍を持つ右腕を動かして、左手をついていかせる。そして左足を踏み込み、突く瞬間に両手の力を入れ、カンバルの胸に、師匠らが傷つけた跡に突きを入れる。


俺の意思に反応するかのように火槍ドラグーンが赤く、強く光る。答えてくれた。こいつの感情がわかる。そうか、さっきの言葉に怒ったか。チンケとか言いやがって。俺の相棒を馬鹿にしやがって。



そして、俺は突きを深く入れて、火槍ドラグーンの槍先をカンバルの胸に刺し、カンバルは血を流す。だが奴は俺を捕まえたとニヤリとした。そうか。勝ったと思ったか?馬鹿が。これで終わりなら突きはしない。


俺は槍先に俺の神気を這わせ覆う。火槍ドラグーンよ持ってくれ。相棒よ、最後まで頼む。


俺は槍先から

『トルネード』


カンバルの体の中に、俺の中にある全てのマナと神気を込めた、トルネードを小さい範囲で引き起こす。途轍もないマナと神気の量を物凄い小さな範囲に留めたトルネードを槍先から体の中で留めて出す技だ。ずっと構想していた俺の最大の攻撃だ。


「ぐああああああああああ」

「これで最後だ〜」

「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああ」



カンバルの叫び声が鳴り響く。そして身体中を壊されたカンバルは倒れる。それでもトルネードは止まらない。カンバルの体の中も表面も切り裂きながら、カンバルの体の中を暴れ狂う。


カンバルの身体のあちこちから血が吹き出す。そして徐々に体が壊れて行く。


「なぜだ?なぜ俺の目指すものはできない」


「未来はそんなに変えられないんだよ。1人で変えられるものなんて、小さいことだ。お前は1人で全てを変えようとした。それは誰も望まないから変わらない」


「英雄しか変えられないというのか?」


「違う。結局は1人が英雄になっても意味がない。世界の人全員が英雄なれて初めて世界は変わる、未来は変えられるんだよ。お前はそれを理解できないからダメなんだ」


「う」


ついにカンバルの体は崩れ始めた。もう保たない。

「これで、お前の力の源で、化現を可能にしている、御神体も怪物の細胞も全てが壊れた。もうお前は終わりだ」


「これくらい、また復活してやる」


「ああ、そうだろうな。それもわかってたさ。それも含めて終わらせてやる」


「もう、力がないだろう?」


「ああ。だからな。これで終わりだ。神の間で飲み込んだ。神を封印してた封印術を覚えてきた。これでお前も次元の狭間で封印されろ」


「な、お前は〜」


「ああ、これで終わりだ」


「ああああああああああああああああ」


カンバルは封印されて行く。奴は次元狭間に封印された。俺はもうダメだ。力を使いすぎた。最後の封印が無理だったか。


その前に神の力を使いきったところで封印だったからな。まぁ、大事な人は救えた。俺の人生に悔いはない。これでマルク・ドンナルナとしての人生は終わった。物語も終わりだ。


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