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世界、マルクの真相 神は語る。

一方、マルクとミカ

「マルク」

「ああ、ミカ、何かが来る」


祭壇の周りは明らかに空気を変えた。何かがあるのがわかる。

「来る」

「やっと会えましたね。織田流星くん」


「その名で呼ぶな。俺はマルク・ドンナルナだ、それ以外でない。お前は誰だ」

「私は、貴方達が神と呼ぶ者です」


「そうか、俺はお前の」

「わかっています。口を開けなさい」

「なにを?」


「早く、力を欲するのでしょう」

「ああ」


俺は口を開けた。そうすると神は手を口にかざした。そうか。飲み込むのか。


「わかりますね。貴方に私の力を飲み込んでもらいます。これができるのは『飲み込む』という神のスキルを持つものだけです。少し辛いですが、我慢してください」

「ああ」


そして、黄金の丸い塊が神の手から出てきた。それが俺の口から入る。


俺は飲み込んだ。そこからとてつもない苦しみが俺を襲う。今まで飲み込んできた全てのものより、遥かに強く、苦しい痛みが俺を襲う。その痛みに耐えるために、のたうち回る。



「マルク君が慣れるまでに、話しておかないといけないことがあります。話せる時間は少ないのです。まずはこの力の使い方です。この力を完全に使うにはミカ、貴方がキーとなります」

「私ですか?」


「ええ、貴方の『奇跡』と『祈願』です。これを使うのです。貴方が願い、その願いが強ければ、奇跡を起こし、その奇跡がマルクの力を最大限にさせます。ただ、あの力は人には大きいものです。

 マルクには私の力を全て渡しました。それでも人という種族の個体としての体がそれに耐え得るのは一回っきりです。それを忘れないでください。使える力はあっても体が持ちません」

「はい」


「これで、力については終わりです。そして、ここからは私の懺悔でもあります。そしてこれからの世界について、そして未来についてです」

「はい」


「私はほぼ全ての力をなくしました。これでもう神と名乗ることさえできないでしょう。もう見守るしかできません。ただ、それだけをすればよかったのだと今は思っています。私はこの世界を良くしようと思い、この世界で最も知能の高い『人』という種族と話をしました。そう。それは神託です」


俺はまだ、力を受け入れきれない。話を聞いているが、体の痛みに支配されている。


「それは人を導こうという傲慢さが全てでした。それが故、私は長く生きることを求めました。

長く生きることで多くの経験をして、高みに登る。それこそが全てと思ったのです。

生命の輝きというものを忘れた神となった者の傲慢さです。そして世界は進化という差別を生み出した。その差別はカンバルという歪みを生み出し、そして世界は変わりました」

「な」


「それでも世界を戻そうとするものもいたのです。古代文明のマレス、獣人族の英雄マット、異世界の勇者カズキとシズルとユウタ、彼らはこの世界の歪みを直そうとしてくれた。

しかし、それがまた歪みを生み出したり、カンバルによって邪魔されたりと変わりませんでした」

「・・・」

俺は痛みに慣れ始めた。


「彼らは皆、この世界とは別の世界から来た魂が召喚されたものです。マレスとマットは私が呼びました。マットを呼ぶ時は苦労したものです。


彼らはもともとこの世界の輪廻にはいなかった者達です。そういったものはすべからく異世界を渡る時に神と等しい力を得ます。


マレスの真理の追求、マットの生命の輝き、カズキの神気、シズルの源理の力、ユウタの完全掌握、貴方の奇跡と祈願、全ては望んだ未来によって得るというものです。


そして、それはマルク君にもあります。彼は魂のまま、異世界をあまたの世界を長い年月をかけて1人で神の力もなくさまよい続け、この世界に来ました。


数ある世界の時間軸が異なるため、姉であり、彼よりも後に元の世界を出て、こっちの世界に来たシズルさんよりも後世に、この世界に来ました」


「え?」


「はい。彼は異世界人です。ただし、貴方方と異なり、体を持たずに魂だけできました。貴方方は体を持って召喚されています。ただし、それは物質という意味ではなく。それを形成する遺伝子という単位ですが」


「どういうことですか?」


「貴方達は死ぬ直前にこちらに来ています。世界を出る前に魂と遺伝子が結び付き、体は消滅します。それがこの世界で、遺伝子を元に、体は再合成されました。マレスやマットは私がその遺伝子をいじり、新たな生命として誕生させたのです。本当の意味で、魂だけで異世界を渡ったのはマルク君だけです」


「そうなんですか」


「はい。それは理論上はあり得ぬ確率で、あり得ぬ法則でなされた奇跡です。


そして、私はカンバルに封印され、この次元の狭間でマルク君を見つけました。


誰かに呼ばれたわけでもなく、生命として存在することすら考えられない状況で彼はここに迷い込んで来ました。


私はマットを呼び、この世界を変えさせようとした時にカンバルに見つかり、それ以降は何もできない状況でしたが、彼がたまたま異世界渡りでここに来た時は僥倖に感じました。


しかし、また私がこの世界に干渉すれば次はどんなことが起きるかと悩みました」


俺は痛みを克服した。そして力を確かめるように動く。


「マルク君、もう大丈夫ですか。そろそろ、カンバルも復活しそうです」

「そうか」


「もう少しだけ、お付き合いください」

「ああ」


「それでもマルク君に力を託しました。彼は魂だけで異世界を渡って来た者、自ら渡って来た者、あまたの世界を渡って来た者です。


その含まれる魂の力は今までの異世界渡りをしたものとは別格でした。そしてまたスキルを持たない状態でした。


ですから、マルク君の力を信じ、彼の魂の強さを信じ、最も優れ、最も脆いスキル『飲み込む』を渡し、加賀和樹、織田静流、そしてレキシナの血の入るマルク・ドンナルナに転生させたのです」


「そうか、シズル様はやっぱり姉貴だったか。道理で性格や趣味が姉貴っぽいと思ったんだ。それにドンナルナ家で暮石を見た時にそうかと思っていたよ」


「そうですか。最後にカズキや貴方が使う黄金闘気、マットが使った生命の輝きも全て神気です。


使い方や使う条件は異なりますが。神ならぬ者が使えるものではないです。


マットは死に、カズキも寿命を短くしました。貴方も50%が限度でしょう。


今は渡した私の力で100%を使えます。ただし、一回きりです。


そして使えば、もう体が言うことをきかなくなり、回復までにかなりの時間を要し、今後も力をそれほど使えません。忘れないでください」


「そうか」

「そんな、マルクに死ぬかもしれない技を使えと言っているのと同じじゃないですか?」


「ええ、そうですね。私は何もできないので、もう託すしかできません。神としては失格です」

「いい。ミカ、もういいんだ。負ければ同じだ。勝ったらのんびり生きればいい」

「そうですが」


「それでいい。俺がそれを望んでいるんだ。行くぞ。ミカ」

「待ってください」


「神よ。お前の一番の間違いは介入じゃない。結局は人を、生命を信じなかったことだ。


人は間違えると勝手に決めつけ、お前の勝手な生命の定義を押し付けたことだ。


生命は生命で自分の定義を決め、真っ直ぐに生きる。それを勝手にお前が押し付けたが故に歪んだのだ。それを忘れるな。ずっと見守っていろ。あとは俺を信じて待て」


「はい」

俺らは大きく息を吸って、この場の空気を飲み込む。そして神殿を出て、ミカが持っていた転移の魔道具で移動する。


残された神はポツリと呟いた。

「そうですね。私は結局、信じきれなかったのですね。神とは信じ、信じられる者を言うのかもしれません。マレス、マット、レキシナ、あなた方にも同じことを言われましたね。『信じて待て』と」


同盟軍の陣


ラルクとリネアとゼルが急に現れた。

「ラルク様」

「おい、マルクはまだか?」


「早く来て、マルク」

「ラルク様、リネア様、何があったのです?」


「ああ、コーネリアス。ガイス殿とガッソ殿が命を燃やして、カンバルを止めている」

「そんな、命を燃やすと」

「ああ、知っているのか?」


「ええ、ガリシアン家初代様の日記に書いていありました。マット様という獣人族の英雄が命を燃やしてドラゴンに一撃をいれ、カズキ様がドラゴンに致命傷を与えたと」

「そうなのか。リネア、どうなんだ?」


「ええ、そうよ。あの技はまさにそう。生命の輝きとマットはよんだわ。全ての生命力をかけて力を増やす。長寿種族ならではの生命力よ。それ故に絶命するわ」

「くそ。もうマルク以外には無理だ」


「マルク殿は?」

「マルクは全てをかけて、神に会っている」

「神に?」


「ええ、そうよ。マルクとミカちゃんを神が呼んだのよ」

大きな光が戦場を包んだ。


「何だ?」

「ガッソとガイスだわ。マットの一撃が入った時もこんな光が当たりを包んだの」


「そうか。ガイス様、ガッソ様」

「どうなったのでしょうかね」


「わからん、これでマルクが戻ってくるまでの間、少しでも止まってくれ」

それから数十秒の間、何事も起きない。


誰かが言う。

「倒したのか?」

「それはないだろう。あれは」


「ええ、いくらなんでも倒すのは神だけです。神ならぬ身の人では無理です」

「そんな、それじゃあ」


「マルクならやる。あいつは神も超える。人にある可能性という塊だ。神を超えられる人はマルクだけだ」


それから、空はまた赤く煌き出した。そしてカンバルのマナが戦場を包み、カンバルが叫んだ。


「この羽虫が、神である儂を傷つけおって、回復に時間がかかった。もう許さない。最後に地獄を見せてやる。お前らなど、救いはせぬ」

「本性を見せたか」


「ええ、偉そうなことを言っていましたが、結局は自分は偉い。自分が神だと誇りたいだけでしょう」

「ああ」


「お前らに地獄を」

カンバルは全ての者に聞こえる声で鉄槌を食らわすと宣言する。


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