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綻び

そう思ったところで、俺と邪神カンバルとの間に誰かが来た。

「もう、私の自慢の息子に何してんのよ!」

「ああ、俺の子は、俺の自慢で、世界の希望だ。お前にはやらせない」


「ええ、マルク様のためなら、この老骨、最後の奉公といきましょう」

「おい、てめえは俺が殺すって決めてんだよ。くそ、あの時のマットも気持ちがやっとわかったぜ。これであの世であいつと笑いあえるな」


「ああ、そうだな。ガイス。おい邪神、お前の妄想もここで終わりだ」

「父上、母上、ゼル、師匠、ガッソさん」


母上がミカさんを見つめる。

「ミカちゃん、マルクを頼める?」

「はい」

ミカさんは強く頷いた。


カンバルが怪訝な目で母上らを見る。

「おい、お前らは何をしに来た?さっき、やられただろうに。それにお前らの最強のガキがそこで死にそうになっているのにお前らがしゃしゃり出て来て何をする」

「うるさいわね。少し待ちなさい。このバカ。ミカちゃん、この子を貴方が聞いたところに連れて行きなさい」

「聞いただと?」


「いい、ミカちゃん、私も聞いたわ。私には全てはわからないけど、貴方ならわかるはずよ。さあ、これを持って。これはシズルが最後に発見した転移の魔道具よ。世界に二つしかないんだけど。一つを預けるわ。貴方の行くべきところにマルクを連れてって。願えばその魔道具が連れてってくれるから」


「お前」

「おい、てめえの出番はまだ来てねえからな」

師匠がカンバルを動かさせないように攻撃をする。それでもカンバルは無理に行く。


「さあ」

「はい」

俺とミカさんは光に包まれた。


「はあ、なんとかなったわね」

「ああ」

「おい、今のはなんだ?」


「さぁあ、教えるとでも?」

「ふざけるな。お前らごとき羽虫が儂に口答えをせずに聞かれた質問に答えよ」


「うるさいわね。羽虫とか弱小生物とか、あんたは世界最高のボッチじゃない」

「ボッチとはなんだ?」


「それも教えなきゃいけないの?家で考えてなさい」

「この腐れアマが」


「はいはい。危ないわよ」

ガッソとラルクとゼルが一撃を入れる。カンバルは全く効いてないが衝撃で攻撃の軌道がずれる。結果として、攻撃はリネアには当たらなかった。


「もう堪え性のない男ね。くだらない人間ね」

「儂は神だ」


「え?まだ神にはなりきれてないんでしょう?そう聞いたわよ」

「な、それを?神か?さっき、感じたのはやはり神か?」


「やっと気付いたのね。そうよ。貴方が余裕を出してマルクの全力の攻撃を受けたせいね。その時のダメージで結界に綻びが出たんじゃない?結界魔法はまだまだね。シズルの方が上よ」

「な、ふざけるな。儂が呼んでやった勇者など」


「ふふ。そして、さっきの子には神託があるわ。それで綻びが出た結界から聞いたのね。神の言葉を」

「な、神託だと?レキシナの血の繋がりは消えた。神とつながるものなど」


「さあね。私もほんの少しだけ、レキシナさんと血の繋がりがあるわ。ミカちゃんに渡したもののおかげね。聞こえたわよ。一部だけ」

「な、あの娘は?」


「ははは。貴方が呼んだ勇者よ。佐藤良太や赤井直樹と一緒にね」

「な、それが神託?神託だと。まさかレキシナの力をスキルにして、あの娘に渡したのか?」


「あの神はね。知らないわ」

「もう良い。儂はあの神を殺しに行く」

「おいおい、行かせるはずがねえだろ」


「ああ、ガイスの言う通り、お前をここで行かせる道理がない」

「そうですね。師匠らの言う通り、ここは死んでも貴方を行かせません」


「まぁ、もう希望は、英雄の名は子に託したんでな。あいつが戻るまではここにいてもらうぞ」

「そうね。まぁ、長い人生の最後をラルクと一緒なら幸せね」

「おめえら、ここでいちゃつくなよ」


「そうだな。一生独身のガイスをいたわれ」

「てめえ」


カンバルはイライラした顔で睨む。そして転移魔法を発動しようとするが、ガッソが牽制してそれを防ぐ。するとさらにガイスらを睨む。


「何を余裕を見せておる。先程、お前らが全員でかかって来て負けたであろう。それにマルク・ドンナルナも負けたのだ。今、ここでお前らはすぐに死ぬだけだ」

「はぁあ。おめえはわかんねえ奴だな。あれが本気のはずねえだろう?だったら来ねえよ」


「まぁ、俺はあれが本気でもきたがな」

「てめえ、ガッソ」


「もううるさいわね。バカトリオ」

「てめえ」


「くだらんな」

カンバルは一気に攻撃する。しかし、5人は素晴らしい連携で防ぐ。ガッソがカンバルの攻撃の軌道を変え、ガッソが叩き落とし、ゼルが牽制して、ラルクがリネアを守り、リネアは付与で4人を速く動けるようにした


「おいおい。最強の1人が叶わなくても最高のパーティーが敵わねえとは決まってねえんだよ」

「何が最強のパーティーだ。くだらん。お前ら羽虫はそうやってすぐに群れをなす。それしか能がないくせに」

「うるさいのよ。ボッチ」


「く、ボッチとはなんだ?」

そう言いながら、カンバルは攻撃を繰り返す。しかし、それをなんとか、ガイスが槍で軌道を変え、ガイスが撃ち落とし、ゼルとラルクがリネアを抱え避ける。


「しょうがないわね。攻撃をやめるなら教えてあげてもいいわよ」

「む、よかろう。冥土の餞にお前の話を聞いてやる。あの世で神に言葉を聞いてもらったと誇るといい」


「くだらない口上ね。まぁいいわ。・・・・・。友達も恋人もいない1人でいるしかできない人ってことよ」

「ははは。邪神らしいじゃねえか」

「お主にぴったりだな」


「羽虫が〜」

そこから攻防が続く。パーティーで何とかカンバルも攻撃を避け続ける。ギリギリの攻防が続く。


一方でマルクとミカ


「ここは?」

「はい。神殿だと思います。私が聞いた声は『獣人族国家の古代文明の遺跡の下に神殿があるマルク君を連れてそこを目指せ』と言いました」


「じゃあ、ここが?」

「はい。リネア様が願えば魔道具が連れてってくれると言ってましたし、私に聞こえる声もここの下を目指せと言ってます」


「わかった。行こう」

俺らはどんどんと進む。地下に入った。しかし、地下は広く、入り組んでいた。それでもミカさんは迷うことなく、まっすぐと進んで行く。


「この先のはずです」

「ここが神がいる場所?」


「ええ、私に声をかけてくれた者がいる場所です」

「そうか。神だといいが」

「ええ」


「カンバルを倒す方法を教えてくれ、頼む」

「行きましょう」

「ああ」

そして、青くデカイ扉を俺とミカさんは開ける。扉は観音開きで、2人で力いっぱい押す。


そこには、神秘的な光景が広がっていた。地下なのに光が部屋全体に広がる。前世の記憶にある、青の洞窟のように。祈りを捧げる祭壇とそこに続く道以外には水が囲み、窓も灯もないのに輝きを放つ部屋だ。


「美しい」

「ああ。神秘的な部屋だね」


「ええ。でも」

「ああ、神は?」


「わかりません」

「くそ、ここまでか?」


一方でリネアらは激しい攻防を続けていた。しかし、その攻防は明らかにカンバルが押しており、だんだんとカンバル有利となっていた。しかし、それにもかかわらずカンバルの様子は明らかに怒りを表していた。


「く、強えな」

「ああ、マルクの本気で傷しかつけられないのも頷ける」


「くそ、リネア、大丈夫か?」

「ラルク様、気をつけて」


「ラルク、大丈夫よ。ガイス、ガッソ、もう少し時間を稼がないと」

「ああ、でもきついぜ。くそ、カズキたちがいればな」

「ああ、あいつらがいれば違っただろうな」


「言ってもしょうがないでしょ?」

「そうだな」


「羽虫、羽虫、羽虫、羽虫」

「壊れやがったか?」


「ええ、ブチ切れたのね」

「そうか。これがシズルがよく言ってたやつか?」

「そうよ。ガッソ」


「これがドンナルナの伝承のブチ切れるですね」

「そうか。これか」


「羽虫が〜。お前らごときが儂をバカにするな。エルフに、ドワーフに、出来損ないの勇者の末裔、そしてダークエルフの出来損ないが」


「はいはい。うるさいわよ。バカ邪神、いい加減にしなさい」

「お前は〜」


また、カンバルが攻撃をする。しかし、完全に頭に血が上ったカンバルの攻撃は単調だった。それが故に5人は何とかなっていた。しかし、その攻撃は凄まじいスピードで、凄まじい威力で5人を襲う。


一歩間違えば、1人でもかければ、全滅する戦い。勝つなど到底不可能なほどの能力差がそこにはあった。


一方マルクとミカ


「く、どうすれば神が化現するんだ?」

「神よ。教えてください」


「な、ここまで呼んだだろう。父上や母上たちが、くそ」

俺は祭壇を叩く。しかし何も反応はない。


「焦ってはダメです」

「でも、少しでも早く戻らないと、母上らが」


「わかっています。今は何かないか探すしかないんです。マルク、貴方は諦めるのですか?貴方は諦めないから英雄になったのでしょう?」

「く」


「なら、立ち上がりなさい。それこそ、マルク・フィン・ドンナルナです。私が憧れた、大好きなマルク・フィン・ドンナルナです。頑張って、歯を食いしばって、立ち上がれ」

「ありがとう。ミカ」


そして俺らは調べて行く。すると、謎の棚を見つける。そこには明らかに何かを入れた形跡がある。


「これは」

「この簪では?」


「そうか、そうだ」

「いれてみます」

ミカが簪を棚に入れる。そして願う。何も変わらない。


「なんで?」

「くそ。何でだ?」


一方で、リネアら

「もうきついな。マルクはまだか?」

「もうすぐのはず」


「そうね、これ以上はキツイわ。ガッソ、ガイスあれを行くしかないわ」

「ああ、そうかもな。もうこれ以上は同じだ。せめて一撃を入れ、あとは後ろも連中に任せるしかなかろう。少しでも奴にダメージを与えられれば、何かが起きるかもしれない」


「そうだな。クソが」

「何をする気ですか?師匠、ガッソさん、リネア様」


「そうだ、何をする気だ?リネア」

「羽虫が〜、はむしが〜」


「ねえ、聞いて、ラルク。私も、ガッソも、ガイスももう長く生きたわ。いえ、長く生きすぎたのかもしれない。出会いも別れもたくさんあったの。もう誰かを見送るのは嫌よ。だから、誰かを見送るくらいなら、私が見送られたいの。だからね。私たちは最後の生命を燃やすわ」


「な、何を?何をする気だ。リネア。お前はまだ生きていないとダメだ。お前がいないと俺はダメなんだ。リネアがいるから幸せなんだ」


「ねえ、ラルク。貴方から本当に幸せをいっぱい貰ったわ。それは数えられないほど。もう生きることをやめようと思ってた時に貴方に会った。貴方はカズキとシズルに似てたわ。

 まるで、自分よりみんなの命が大事、英雄なんてクソ食らえ。俺は守りたいから守るって感じがね。貴方を初めて見た時から、この人を支えたいって思ったわ。だから最後まで貴方のそばにいたい。

 でも、もう私は貴方を見送るんじゃなくて、貴方に見送たれたいの。最後の我儘を許してちょうだい」


「待て、リネア」

「ゼル、これを。これを使えばあっちには戻れるわ」

「リネア様」


「マルクにはまだラルクが必要なの。そしてゼル、貴方もだから、行って」



「おい、おめえも必要だ。おめえもいけ。最後までマルクを見守れ。それが親だ。バカヤロー」

「何を?ガイス」

リネアがゼルに魔道具を渡して、ゼルが魔道具を発動させる。それに合わせて、リネアはゼルとラルクを押した。それと同時に、ガイスがリネアを押した。


「死ぬのは俺とガッソだ。リネア、お前はもう少し生きろ。俺がマットと上で馬鹿話ができねえ。てめえが来るとマットが泣く。『俺じゃなく、カズキの子孫とか〜』てな。だから慰めるのが面倒だからもう少し生きろ。シズルとカズキには言っておく」


「ガイス」

「まぁ、よお。これで俺らの腐れ縁も終わりだな。やっとだぜ。お前は一番バカだからな。バカは一番長く生きろ。俺ら頭がいい奴らは上で待っている。だからよ。もうちょい頑張れや」


「バカのくせに」

リネアとゼルとラルクが光に包まれる。


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