戦争開始まで②
王国側
俺は同盟の最後の準備のため、魔道具の最終確認をルーナとしていた。
「ルーナ、これでいいんじゃない?」
「ええ。何とか間に合いました」
「ああ、これを使わない展開がいいんだけどね」
「はい。そうなればいいですが」
「ああ、あいつらならやりかねない手だからね」
「ええ。そう思います」
「そうだね」
と、ルーナと魔道具の最終調整を終わらせた。使ってみての確認も完了させ、お互いが納得の物が作れた。そんな折に父上が俺とルーナを呼んだ。
「「失礼します」」
「ああ、マルク、ルーナリア、呼んで悪いな」
「いいえ、大丈夫だ」
「ああ、呼んだのは2つだ、まずは今日の実験はどうだ?」
「ええ、問題ありません。うまくいきました。もう使えます」
「そうか、では利用できるな?」
「カリムさんも頑張ってくれたので、数千個が用意できます。これでかなりに対策できましたね」
「ああ、間に合ったな。ダークエルフらを相手にする必要があるから助かるな」
「ええ、奴らはあの手を利用しかねないですからね」
「ああ。もう1つ、2人を呼んだ理由がある。ルーナ、お前に言わなくてはいけない事がある」
「はい」
「実は、前回の戦線で魔族側に軍師らしい者がいるようだ。その者がな、マルク・トルネストがそうでないかと思っている」
「え?」
「ああ、ルーナリアには辛いだろうな」
「ごめん、ルーナ。知っていたんだけど、言えなくて。そうだと確証もないのにマルク・トルネストさんだと決めたくてなくて」
「ああ、俺もマルクと同じだ。ルーナリアの父であるトルネストとは友人だったからな。あいつかもと言われてもどうしても信じたくなかった。それに確定できない事は言うべきではないというのがマルクと俺の意見だ。だから、ルーナリアには隠させた。しかし、もし、そうだった時にお前には辛い事だろう。だから、今日伝えた。すまんな。友人の子を傷たくないという考えだ。ただ、あくまでそうかもしれないだけで、そうと決まったわけではない」
「・・・そうですか。もし父たっだらどうなるのでしょう?」
「うむ。その時は否定することにしている。偽物とな」
「そうでうすか」
「それに、もし本当にそうだとしても、洗脳の場合もある。またトルネストの記憶や知識のみを盗んだものかもしれない」
「確かに。あの、父だった場合は私は」
「それ以上はいい。その時はルーナリア、お前はお前として考えろ。たとえ、トルネストが敵でもルーナリアを敵の子など言わせぬ。あいつは偽物かその記憶や知識のみを複製したものだと発表し、トルネストとは別物とする」
「そうですか」
「うむ。忙しい時にすまんな」
「いいえ」
と、父上との話し合いを終えた。
「ルーナ、ごめん」
「いいえ、父がすみません」
「違う。ルーナが謝る事はないよ。ルーナに悪いことなんてない」
「はい。マルクはいつ知ったのですか?」
「ああ、この前の戦争の後にね。ハンニバル様が言い出した時に聞いたよ。でもそうでないと信じたくてね。俺もあの人のおかげで救われたからね」
「そうですか。知ってていたのに言ってくれなかったのですね?」
「ああ、ごめん。言えなかった。伝え方も分からなかったし、何よりそうじゃないことを願っていたし、今も願っているかな」
「そうですか。少し、1人にしてもらってもいいですか?」
「わかったよ」
ルーナは苦しそうだった。俺は何て言えばいいかわからない。俺にできることはないか。俺はルーナの元を離れて、隊の元へ行こうとした。その時、コーネリアス様から声をかけられた。
「やぁ、マルク殿、ちょっといいかな?」
「はい」
「彼女のことでね」
コーネリアス様はルーナリアの方を見た。俺もそれを確認して、
「どこか場所を変えますか?」
「ああ」
そして、2人以外いない場所で
「ルーナリアさんはどうかな?」
「はい。1人になりたいと」
「そうか。マルク殿とラルク様に辛い役目をさせてしまったね。私とハンニバルが言い出したことなのに」
「いいえ、友人ですから、私がしなくてはいけないことです」
「そうか、私もトルネストの友人として、奴が魔族やダークエルフの力になるならどうにかしないとね」
「はい」
「ああ、奴に引導を渡すのは私の役目でしょう。頑張りましょう」
「はい」
そして、隊に戻る。ミカさんと話す。
「ミカさん、勇者と戦うけど、大丈夫かな?」
「はい。あまり仲も良くないですから。それに私はレオナルク王国の人間で、第00小隊の隊員です。もう、日本人じゃないです。同郷だろうと間違った者に引導を渡すために、これ以上誰かを傷つけさせないために戦います」
「そうか。わかったよ」
「はい。頑張りましょう」
皆の覚悟が決まって行く。それはまるでこの一戦を皆が最後にしようと、自分の戦争だと決めているかのように。自分の未来を掴み取るために戦うかのように。
俺はこの世界の未来を一人で守ろうとどこか気負っていた。でも違った。未来はみんなが背負っていた。そしてその責任をみんなが背負っていた。皆が英雄になる時だ。
ミカさんやコーネリアス様、それにルーナらも、ここにいる皆が生きること、勝つことに本気だった。俺はどこか自分だけのような感覚を、世界の皆と共有しているような気がして俺を強くしているようだ。これまで以上の強さを感じる。俺の強さを今までより一段階あげてくれたような気がした。
そして、戦争へ。俺はもっと強くなってみんなを守りたい。俺の力で勝てるわけではないけど、俺も世界の未来を掴み取るために少しでも強くなりたい。




