辺境伯領 墓参り
そして出発から5日が立ち、辺境伯領領都オルガに着いた。俺らはルイン様に挨拶して、初代様らの墓に行く。
「ルイン様、お久しぶりです」
「ああ、マルク。久しぶり。リネア姉様もお久しぶりです。ゼルも久しぶり」
「ええ、久しぶり、ルイン」
「久しぶりです。ルイン様」
「今日はどうしたのかな?エルフ領に行くから通ると伝令が来たけど」
「ええ、その前に初代様らのお墓参りに来ました」
「そうか。リネア姉様の希望ですか?」
「ええ、シズルやカズキらの墓にね。報告と今日がね」
「ええ。彼の方の命日ですね」
「ええ。そう。だからね」
「わかりました」
「ええ、じゃあ、行ってくるわ。今日は宿に泊まるから、また会いに来るわ」
「わかりました」
そして、俺らはお墓に行く。ヤイらは墓の前で待ってもらう。
「あそこよ。マルク」
「よ、リネア」
「あら、いたのね。久しぶりね。2人もお墓参りに来たのかしら?」
「ああ、毎年来てるな」
「そう。私は久しぶりよ。もう何年になるかしらね」
「さあな。俺ら長寿種族には年数なんて意味はねえ。あるのは日にちと、思い出だけだな」
「ああ、そうだ。リネアもとうに忘れただろ?」
「そうね。ガイス、ガッソ」
「まぁ、俺らは終わったから、行ってやれ。マルク、お前は先先代のところへ先に行きな」
「はい」
「ミカ、お前はここで待て」
「はい」
俺とゼルは先先代のところへ行った。ゼルの兄でもあり、俺の祖父だ。そしてそのご先祖立ちの墓に手を合わせる。俺が生まれた頃には亡くなっていた祖父、見たことないがいい人だったと聞いた。
そして、手を合わせた後に墓を綺麗にして、それから初代らの墓に行く。まだ母上は手を合わせていた。話すことはいっぱいあるのだろう。母上の人生は長い。その多くを初代様らとの思い出を思い出しながら生き、そしてその後父上と出会い結婚した。
俺や兄上らと過ごした時間の何倍もの時間を初代らとの思い出の中で過ごして来たのだろうな。長寿とは辛いものだ。俺も大分短いがそうなるのだろう。前世ではもっと生きたいと願ったが、今は長寿ということの辛さを理解できるようになった。まだそれを身をもって感じてはないが。
「マルク、もう墓参りは終わったのか?」
「ええ、祖父はどんな人でしたか?」
「いい奴だったな。面倒見のいい、変な奴だ。確か、ラルクの坊主が問題を起こした時に何度か愚痴を聞いたな」
「ありそうな話ですね。先先代は一番ラルク様を可愛がっていましたからね」
「ああ、まぁ、問題児が可愛いって奴か。俺はラルクの坊主とは少ししか関わってねえからあれだがな」
「ええ、師匠はマルク様が一番可愛いというところですかね?」
ゼルの問いに素っ気ない反応の師匠。
「あ、そんなんじゃねえ。ただ、一番カズキ似ているな」
「そうですか」
「そうだな。カズキのバカさは一番マルクが継いだな」
「ガッソ、久しぶりに意見があったな」
「ああ、残念だがな」
「あ?」
「あ?」
「うるさいのよ。バカトリオ」
「おい、トリオはやめろ。マットのバカはいねえ」
「そうだ。それにバカはマットが一番だ。ガイスもバカだが、あいつと比べるとみんな頭が良くなる」
「はっはは。まぁガッソはいい勝負だが、マットが最もバカなのは同意する」
「あ?」
「あん?」
「マットが一番は同意するけど、あんたちもバカよ。あと、カズキとうちのマルクは似てないから。そこは間違えないでね」
「親バカだな」
「ああ、親バカじゃねえか。リネア」
「うるさいわよ。実験されたいの?」
急に声が小さくなる師匠たち、本当に母上が怖いんだな。
「いやあ、それはやめようぜ。シズルもいねえし、もういいだろう」
「ああ、そうだな」
「まぁ、いいわ。ミカちゃん、マルク来て」
「「はい」」
俺らは初代様とその奥様シズル様の眠るお墓に行く。
「シズル、カズキ、見て。私の子供よ。マルクって言うの。カズキとシズルの子孫と結婚してこんないい子を持てたんだがら」
「初代様、シズル様、マルク・ドンナルナです。母上がお世話になりました」
「ふふ。そうよ。お世話になったわ。カズキに関してはいっぱい世話したけどね」
「そうですか」
「ええ。あと、こっちが今の勇者のミカちゃんよ。私のせいでこっちにカズキらみたいに来ちゃったの。きっと、『だから、ちゃんとしなさいって言ったでしょ』って怒ってるわね。ごめんなさい」
「シズル様、カズキ様、私はこっちに来て後悔してません。お二人のご子孫であるマルク様と、お2人のご友人のリネア様のおかげで幸せです」
「ふふ。いいこと言ってくれるわ。これであの世で怒られないわ」
「母上、2人に手を合わせても?」
「ええ」
そして、手を合わせた。俺らはゆっくりと目を閉じ、そしてゆっくりとただ2人の冥福を願った。墓に書いてあったのは、『和樹、静流、ここに眠る』と日本語だった。静流か。
「こっちがさっき言ったマットの墓よ。マットは獣人族の英雄よ。獣人族国家の初代国王の兄なの。あの兄弟は2人で独立を先頭きって戦ったの。私とシズルたちの友人よ。本当はマットが獣人族の初代になるはずだったんだけど、柄じゃないって言って弟に譲ったのよ。
バカだから無理だったと思うけど。まぁとにかく人を惹きつける奴だったわ。ガイスとガッソの親友で、レオナルクの親友だったわ。聖国から逃げて来た私たちを疑うこともせずに受け入れてくれたのがマットよ。
レオナルクは疑ってたけど。それから私たちはマットらを助けるために戦ったの。戦争が終わって、ドラゴンが出た時にね。カズキが倒す隙を作るために死んだの。それが200年ちょっと前の今日なのよ」
「そうなんですか。今があるのはマットさんのおかげですね」
「そうね。マット、聞いた?私の息子は優しいでしょ?」
「なんだか、いつものリネア様ではないです」
「ああ、そうだね」
「何かな?」
「いいえ」
「何でもありません」
「母上、マットさんにも手を合わせても?」
「ええ、お願い」
俺らは手を合わせた。そしてお墓の前を立った。
「もういいのか?」
「ええ」
「そうか、マットは寂しがるぞ。リネアが好きだったからな。よく言ってたな。リネア結婚してくれ〜ってよ。面白え、面白え。すぐ泣くんだ。あのバカ」
「そうだな。リネアにプロポーズする時にだけ泣いたな。あれは効くと思っていたのか?」
「ははは。あいつならありそうだな。演技か?」
「俺はそう思っている」
「はははは」
「ガッソとガイスはとりあえず洗脳剤を使ってあげるわ。新たに改造したのよ」
「ちょっと、リネア。それは冗談にならないもんだろ」
「それは笑えないやつだ」
「待ちなさい」
そしてお墓を出た。その後は宿に行き、少しゆっくりしてからルイン様の邸宅で歓迎を受けた。
「ルイン様、メリダ様、急な訪問をお許しくださり、ありがとうございます」
「マルク、そんなに気を使わなくていいよ。ドンナルナ子爵家は親戚だし、祖父母の墓もあるんだ。問題ないよ」
「ええ、それに我が家はリネア様には恩ある家です。リネア様の訪問はいつでも構わないのよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「ふふ。しかし、マルクは変わらない。英雄然としていいんじゃない?」
「そういうのは合いません」
「そうか。どうだった?初代様らの墓参りは?」
「ええ、初めて知ることも多くて」
「そうか。まぁ、本家の当主とその妻以外はあの3人しか知らないからね。ラルク兄様もリネア姉様に聞いたんだろうから、ちゃんとは知らないんじゃないかな」
「そうですか。母上もその当時のことは話しづらいのでしょう」
「だろうね。まぁ、長寿というのは、それだけで大変なんだろうね」
「ええ、思い出ばかりというのも辛いのでしょう」
「ああ」
と、ライル様とルドルフに呼ばれた。
「マルク、こっち」
「お久しぶりです。ライル様」
「本当に久しぶりだよ。辺境伯領に来てもここには顔を出してくれないから」
「まぁ、そう言うなよ。ライル」
「リオルはいいな。俺もね、嫡男じゃなければ、マルクの部下もいいな」
「いや、ライル様を部下は・・・」
「あれー、私は嫌われているかな?」
「そういうところが少し怖いな」
「変だな。領民からは優しい次期当主と言われているんだけどな」
「兄上は、裏がある感じが近しい者には感じます」
「そうか。なんだかな?」
「ルドルフ、最近はどう?師匠らに扱かれている?」
「ああ、変わらずだ。それにシグルソン教官まで加わった」
「ははは。鬼だらけだ」
「夢でも追われている。学生時代のつけを今支払っている気分だ」
「ぷっ。うまい事いうじゃない。ルドルフ」
「兄上、うまい事ではなく、事実です」
「「「ははは」」」
少し、夜風に当たりたいと思い、デッキに出ると
「師匠、ガッソさん」
「ああ、マルク。マットの事を思い出してな」
「ああ、久しぶりに2人などで飲んでいる」
「そうですか。マットさんはどんな人なんですか?」
「ガウラン族らしいバカだ。獣人族は大抵は120くらい生きるがガウランは短命が多い。まぁ血の気が多いのやつばかりだからな」
「そうなんですか」
「その中でも一番のバカがマットだった。あいつは面白い奴だった。とにかくバカでうるさくて、そして底抜けにいい奴だった」
「ああ、カズキやリネアらと会った時も。あいつらが『勇者だ。聖国から逃げて来た。俺らはレオナルク皇太子と獣人族を応援したい』とか言うんで、俺らやレオは訝しんだよ。
それがあいつだけは泣いてよ。『感動した。来い』とか疑いもせずに抱きつきやがって、それを受け入れたカズキを見たらな。何だか疑った俺らが悪いみたいでよ。レオと顔を見合わせたぜ」
「ああ、あん時は友人だが、呆れた。本当に友人をやめようと思った」
「あははは。それはわかる。まぁ、そのあとがもっとな」
「ああ、カズキと抱擁したかと思ったらな。リネアを見て、『好きです。結婚してくれ』と跪いて泣きながら言った時は笑った。レオなんか涙して笑うから、そのあとはリネアには散々いじめられたな」
「ははは。あれは本当に笑った。人生で一番笑ったな。もう面白えの、面白えのって。最高だったぜ」
「まぁ、普通は他種族を好きになることはないんだがな。人族以外で他種族と婚姻するものなどいない」
「ああ、普通はいねえ。まぁたまにハーフはあるらしいがな。人族には恋する変な奴は長寿種族にもいるがな」
「ああ、だからハーフは全て人族とだ」
「ああ、そういえば」
「まぁ、そのあとも酷かったな。あいつがリネアにプロポーズする度に俺らも巻き添えを食らって、リネアとシズルが作る変な物の実験代台にされ続けた。マットの件に関係なくても俺らやカレスとかを実験台にするんで、カレスやユウタなんてドンナルナ領には近づきたくないって王都の北やドワーフの国に閉じこもっちまった」
「ああ、そうだな。ユウタに関しては昔からシズルの実験台にされて来たらしい。カズキとユウタとシズルは元の世界で幼馴染だったと聞いた」
「ああ、言ってたな。よく覚えてんな」
「忘れるお前がすごい」
「そうですか。楽しい人だったんですね」
「ああ、俺やガッソがここを離れねえのは故郷に居づらいって言うのもあるけど、マットの墓があるからだな。レオもいいやつだったし、カズキもバカで面白えやつで好きだったけど、なぁ?マットが一番バカだったよな」
「ああ、マットがいたから救われた部分は大きいな。あいつはなんていうか太陽みたいなやつだ。まぁ、マルクはカズキにも似ているが、マットの方が似ているかもな。まぁバカじゃないが」
「ああ。それはわかるな。なんて言うか、底抜けに真っ直ぐで、周りを巻き込むところがな。カズキもそう言う奴だが、マットはもっとそうだな。あのバカな真っ直ぐさにどれだけ救われたか、わかんねえな」
二人の顔に哀愁が感じられる。長寿という時の流れを感じる表情だ。普段、年など一切を感じさせない二人だが、今日ばかりは感じる。長寿とはいいものではないのか。
「そういえば、アイナは元気らしいな」
「アイナを知っているのですか?」
「うん?知らないのか?」
「何がです?」
「あいつは俺の妻アイルの妹だ」
「え?」
「そうか。アイナはエルフであることを隠すからな。あいつも純粋なエルフだ」
「そうなのですか?」
「ああ、もともとは、アイナとアイルの母親がリネアの祖母のお付きだったという話だ」
「そうなのですか」
「ああ、その子だったアイナがリネアのお付きになった。それで、リネアが聖国を出たのを知った後に、リネアを追って、俺の妻も連れ王国に来た」
「そうなのですか。知らなかった」
「そうか。マズかったか」
「そうね。アイナが知ったら怒るわよ」
「な、言うなよ。リネア」
「口が滑らなかったらね」
「ていうか、どこから聞いてた?」
「マルクがカズキやマットに似てるってところからよ。アイルと久しぶりに話してたら、バカコンビが話しているところにマルクがいるんだもん」
「ええ、リネア様。私の夫がバカですみません」
「そうか。通りでアイルさんを見るたびにアイナを思い出したんですよね」
「ふふ。そうですか。アイナに似ているかな」
「おい、さっきの件は?」
「何の話かしら?アイル覚えてる?」
「さあ、アイナに手紙を書きますかね?」
「アイル、頼む。許してくれ」
と、立ち去るアイルさんを追いかけてガッソさんが消えていった。
「ああ、行ったわね」
「ああ、ガッソは救えないバカだな」
「ええ、何度、あれで怒られているかしら?」
「ああ、ゼルの時だっけな、最初は?」
「ええ、あの時も口を滑らせて怒られていたわ」
「リネア様、師匠、その話の続きはやめてください」
「なんだ、ゼル、来てたのか?おい、酒を飲め、このバカ弟子」
「師匠、酒の飲みすぎです。さっきの話は私も怒られます。リネア様もお気をつけてください」
「ふふふ。そうね」
「ああ、そうだな。一番恐えのはアイナだな」
「ええ、マルク様、今日のことはお忘れください」
「うん」
そして、宴会を楽しんんだ。俺らは宿に戻り、翌日の朝に出発した。師匠は飲みすぎて見送りに来なかったが、ガッソさんやルイン様らに見送られた。
そして辺境伯領の要塞についた。俺らは要塞に一泊して、レオミラン王国、多民族国家を抜けてエルフ領に行く。要塞で久しぶりにシグルソン顧問にあった。
「お久しぶりです。シグルソン顧問」
「ああ、久しぶりだな。活躍は聞いている。また、エルフ領か?」
「はい」
「そうか。今回の聖国の件は聞いているな?」
「はい。その関係でエルフ領に行きます」
「そうか。気をつけろ。かなり情勢は良くない。聖国やダークエルフ領の近くは行くな」
「はい。こちらには情報は?」
「ああ、聖国から逃げて来た者らが少し来た。かなり勇者が暴れているようだ。聖国の人間が多く死んだ。聖都だけでなく、各町や村でも虐殺を続けているようだ。。土地も大分荒れたらしい」
「そうですか。逃げて来たのはそういった村や町からですか」
「ああ、多民族国家に近い村や町の者が何とか逃げて来たらしい。聖国と仲が悪くて、一番強いレオナルク王国を目指して来たようだ」
「そうですか。気をつけていきます」
「うむ。そうしろ」
と話をしていたら、母上がこっちに来た。
「やっと難しい話は終わりかしら?」
「リネアか、元気になったらしいな?」
「ええ、全盛期の8割くらいかしら、マルクが治療法を見つけてくれてね。シグルソン、ごめんなさい。もっと早く見つけていれば」
「いい。息子の件はしょうがないことだ」
「息子さん?」
「ああ、あまり話をしたくないことでな。言ってないが、俺の息子もリネアと同じような病でな。長寿種族のリネアだからギリギリ問題ないが、人族が同じ病になるとな、すぐに死んでしまう。特に俺の息子はもともとマナが少なくてな」
「そうなのですか」
「お前が気を病むことではない。死んだのはお前が生まれた年ぐらいだ」
「そうですか。それで母上に治療を願ったとかですか?」
「ああ、同じ病と聞いたリネアが問題ないと聞いてな。あの時はリネアやラルクに当たってしまった。ちょうど帝国から王国に来てな。騎士として働いたが、色々とあった時だった。それで悪い事をしてしまった。ただ、それから生きる意味をなくしてしまった。それからは職を転々として、お前と出会い生きる意味を見つけた」
「そうですか」
「まぁ、昔話だ。俺も亡き妻も乗り越えた話だ。俺は精一杯生きるしかない。妻や息子があの世で誇れるようにな」
「はい」
「ふ。マルクとこんな話をする時が来るとはな」
「シグルソン、かっこいいわね。前の貴方より今の貴方の方がいいわよ」
「リネア、お前に褒められても嬉しくはない。むしろ、何か裏を感じる」
「あら、酷いわね」
俺が見つけた母上のようなマナ線の治療は、マナ欠乏症という病気の治療として大きな進歩をもたらした。マナ欠乏症は二つの原因はある。
一つはマナ線の欠損だ。俺や母上がなった状況だった。これも長い事不明とされ、シズル様も研究していたらしいが、当時の魔法理論はスキルによるという考えだったため、スキルの使用する器官、マナを貯める器官があり、それが壊れているのではというアプローチだった。それ故に、母上がシズル様亡き後も研究したが、見つからなかった。
もう一つがマナ線の詰まりによるものだ。マナ線がつまり、マナを上手く体に巡らせられないというものだ。これはまるで体が鉛のように重くなる奇病だ。生まれた時からもあれば、高齢の方がなる事もある病気だ。こっちもマナ線の発見により、回復できるようになった。
そんな話をシグルソン顧問とした後、アカードさんとゼルも加わり、話していた。
「アカード、どうだ?」
「ええ、今のところは特に大きな問題は起きてません」
「そうか。では、ルドルフ様を後継者としてきっちりと育て上げろ」
「はっ。師匠。まぁ、ガイス師匠やシグルソン顧問も協力してくれていますので、大丈夫です」
「そうか。それなら大丈夫だろう。ただ、師匠の訓練は気をつけろ」
「はい」
「ほんとだ。ゼル、お前からガイスさんに言え、やりすぎるなと」
「シグルソン、聞くと思うか?」
「う。無理か」
「ああ、だからこそ、皆で気をつける必要がある」
「そうだな」
「やっぱり、師匠はやりすぎでしたか。昨日もルドルフが夢でも追いかけられると嘆いていました」
「そうか、もう少し、優しくするか?アカード」
「ええ、そうしましょう。あれは、私でも耐えれるかわからないと思ってしまいます」
「そんなに?」
「ええ」
「まぁ、師匠ならそうでしょうね」
「ああ、ガイスさんは加減を知らん。ガッソさんが来た時は死なないように見張る必要もある」
ああ、俺やサンゼル並みの修行をさせられているんだ。ルドルフ、死ぬなよ。
そんな話をして、歓迎を受け、一泊して要塞を出た。それから4日かけて、多民族国家とエルフ領の境目の街に来た。俺らはここで、一泊して、明日エルフの里へ向かう。




